Ⅰ.平成30年度事業活動

 昨年10月、IMF(国際通貨基金)が発表した2017年の世界の実質GDP成長率は、世界金融危機以降、最低となった2016年の前年比3.2%から同3.6%まで回復、2018年も同3.7%と予測し、世界経済は回復ペースを速めている。

 一方、金融市場の大幅な調整が新興国からの資金流出等につながる懸念や、その他にも北朝鮮をめぐる問題や英国のEU離脱交渉に伴う混乱、中国不動産開発投資の大幅な減速等もリスク要因として挙げられている。

 日本経済では、各企業は業績の改善が続くなか、IoT、ビッグデータ、AI、ロボット等の革新技術の活用により、経済成長と社会的課題の解決を両立させる成長戦略の推進を掲げるなど、研究開発投資は拡大すると予想され、さらには、人手不足や競争力を維持するための情報化投資などが行われる等、設備投資は緩やかに増加するといわれている。

 また、各業界で賃上げが行われたこともあり、雇用・所得情勢の改善を背景に、個人消費は緩やかな持ち直しの動きが続くと予想されている。加えて、外国人観光客の増加も続き、インバウンド消費の伸びも一段と期待され、念願のデフレ脱却への期待感も高まってきている。このように、日本経済は外的要因のリスクはあるものの、緩やかではあるが景気拡張局面が続くとの見通しである。

 繊維産業に関わる企業の姿も、ファッション一辺倒の時代は過ぎ、新たな価値創造を求めて、航空機事業、自動車事業等のあらゆる産業の主素材を提案するなど構造変化を積極的に起こすなど、繊維産業の立つ位置も大きく変化してきている。

 ファッション産業についてみれば、グローバル競争の中、海外進出の重要性を理解しながらも、アパレル業を中心に国内市場での競争に注力している企業が大半である。市場も百貨店やGMSの衣料品に関する売上減に中々歯止めが掛かからず、不動産事業者による各地におけるアウトレットマーケットの創出やSPA企業、ファクトリーブランドを掲げて進出している企業群など、市場は限りなく拡がり続け、繊維産業を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いている。一部では、昨年秋以降、各百貨店の売り上げが前年を上回るなど、消費者に本物志向の動きもあり、明るい兆しも見え始めている。越境ECの台頭や、新たなビジネスモデルを軸に新規参入企業の出現など、新しい価値創造に向けた変革期であるともいえる。

 前述のように、AI(人工知能)開発等次世代の産業に大きなインパクトを与える開発が急ピッチに進められている。これは今から30年前にIT活用による産業の構造変化を生み出した状況に似ているものがあるが、現在の状況は、将来の姿を想定することが困難なくらいのスピード感があり、これからの製造業の在り方は、誰にも想像することが出来ない位に大きく変化することは間違いない。

 しかしながら、ビジネスモデルや生産に関わる構造変化があっても、取引の環境は大きく変わることはなく、それぞれの企業が関連ある商材について需要と供給をもたらす中では、買い手・売り手の立場は存在するのである。即ち、時代は変われども、取引慣行は存在し、その時代に必要な適正取引のルールとしての「ガイドライン」の重要性は変わるものではない。

 流通や取引に関する慣行は、歴史的、社会的背景の中で形成されてきたものであり、その在り方については、常に見直され、より良いものへと変化していくことが求められている。そして、我が国の流通・取引慣行についても、経済活動がグローバル化し日本の市場は国際的により開放的に変化してきていることからも、公正かつ自由な競争を促進し、市場メカニズムの機能を十分に発揮し得るようにしていくことが重要である。

 平成30年度はこのようなことを踏まえ、従来通り、時代に対応した取引のルールを定めた「ガイドライン」を基本に、一つには、地道な取り組みである「取引の適正化」事業の推進、二つには、あらゆるモノがネットで繋がIoTやAI等への対応を踏まえた「情報の共有化」事業を進め、「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行を普及・定着させるため、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を推進していく。

Ⅱ.事業活動

1.取引適正化事業

 経済産業省ならびに各業界団体と連携を図り、「ガイドライン」の普及啓発活動を更に推し進めていく。「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行を普及・定着させるための適正取引の推進と、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を実施する。

(1)聴き取り調査の実施

「ガイドライン」の実践・進捗、「(売買)基本契約書」の締結、「発注書」発行及び記載内容等や計画情報共有の状況、「歩引き」取引及び「手形」取引の実情等についての調査を行う。また、平成26年から行っている産地を対象とした聴き取り調査も引き続き実施する。

1)実施時期:平成30年4月~9月
2)内  容:  ・「ガイドライン」に関する実践状況の調査
      (「基本契約書」締結状況、「発注書」発行及び記載内容の確認、情報共有の実態等)
        ・「歩引き」取引の実態調査
       ・手形取引の実態調査
3)対象企業:経営トップ合同会議参加企業及び関連団体傘下会員企業

(2)「歩引き」取引廃止に向けた取り組み

 「歩引き」取引は「代金の減額を誘発する要因になりかねない不透明で不適格な取引形態」であるとして、当協議会では「歩引き」取引廃止宣言を行っている。「歩引き」を繊維産業から無くすためには、繊維産業に関わる団体・企業が社会的責任を果たし、「歩引き」取引の廃止に向けた具体的な取り組みをすることが重要である。

1)「経営トップ合同会議」参加企業及び関連ある業界団体傘下会員企業に対して、それぞれの取引先及び仕入先を通じ「歩引き」取引の廃止についての具体的活動を要請する。
2)「ガイドライン」に「歩引き」「歩積み」「協賛金」等の廃止に関する記載を加える。

(3)「基本契約書」締結促進活動

 「基本契約書」締結の重要性は年々理解されてきているが、基本契約書の締結は産地や一部の中小企業では締結が進んでいない。また、「基本契約書」締結については、買い手側からの提案で進められていることが多く、「基本契約書」締結については「ガイドライン」に沿った公平公正なものであるかの検証も必要である。
 本年度も、「ガイドライン」の普及啓発活動を通じて「基本契約書」締結に向けた説明会等の活動を進めて行く。

(4)「繊維産業の自主行動計画」の普及啓発活動の実施

 昨年3月に当協議会では、日本繊維産業連盟と協同で適正取引の推進を一層進めるため、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を充実すべく「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を策定し、業界団体の協力を得て、浸透活動をすすめてきた。今年度も引き続き、関連する繊維業界に対して「自主行動計画」の浸透を更にはかるための活動を進める。

2.情報共有化事業

 当協議会では、長年にわたり業界標準のインフラを構築する取り組みを進めてきたが、本来の目標を達成するところには至っていない。昨年、経済産業省が行った「ビジネスプロトコル標準化勉強会」においても、標準化については見送ることとなった。一方で各企業は、業績の改善を背景に、IoTやAI等の革新技術や、次世代の情報基盤の在り方については、投資を含め積極的かつ具体的な行動に取り組み始めている。

 生産性の向上を図ることは各企業とも最大の課題であり、そのためにIoTやAI等の活用に取り組むことは、避けて通ることはできない重要課題である。繊維業界団体においても、第4次産業革命を取り込んだ新しいビジネスモデルの可能性を検証するとともに、コネクテッド・インダストリーの推進による新たな付加価値の創造による競争力強化を検証していくことを掲げている。これらの最新情報については、国や業界団体、各企業の動向に対して、今後も細心の注意を払って情報収集に取り組んで行く考えである。

 当協議会の「情報の共有化」事業は、「取引ガイドライン」に則ったビジネスプロトコルを、業界標準として広く繊維業界に普及させ定着させることである。このことは地道に取り組んでいる「取引の適正化」事業とともに繊維業界の標準化として、引き続き取り組む必要がある。

 また、現在でもサプライチェーンの各段階で日々行われている受発注において、テキスタイル、副資材、アパレル等で使用する発注書、加工指図書が統一されていないため、単純なミスやトラブル等が生じ、このことが生産性を阻害する要因の一つとの指摘もある。

 このようなことから、上記の指図書等の統一も業界の標準化事業として取り組む必要がある。

 尚、「SCM統一伝票」に関しては、紙製複写伝票及び昨年作成の電子化(PDF)の運用を含めた普及拡大を行っていく。

3.TAプロジェクト事業

(1)ガイドライン分科会活動

 現行ガイドラインについての課題は概ね整理されたことを踏まえ、「ガイドライン第三版」の作成に向けて下記を踏まえながら改定作業をすすめる。

1)取り決め項目や「業務条件」など内容について追加・改定・削除
2)ガイドライン全体の構成に対して見直し、改定
3)現在のガイドラインに「TA-縫製業ガイドライン」を追加
4)「ガイドライン」の具体的な普及方法や普及対象先についての検討

(2)情報化分科会活動

 「情報の共有化」事業を具体的に進めるために情報化分科会を開催

1)各種発注書の書式統一に向けた具体的な検討
2)次世代の革新的技術に対する情報収集

(3)ユニフォーム分科会活動

1)ユニフォーム業界の各団体との連携を強化し、講習会・セミナー開催などを通じ「ガイドライン」の周知徹底を進める。
2)ユニフォームを利用するエンドユーザーとの取り組みについては、適正な取引をどのように進めて行くかが大きな課題として残っている。今後は、策定したエンドユーザーとの「基本契約書(例)」の活用を含めた啓発活動を推進していく。
3)「ワーキングユニフォーム」については、日本被服工業組合連合会(日被連)を中心に検討し、「ガイドライン」の周知徹底を進めていく。

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会

協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報調査活動を実施する。

(1)平成30年度事業計画の実施状況の確認及び次年度事業計画の立案

当該年度事業活動の実施状況を確認すると共に次年度事業計画についての案を事務局並びに理事会に提案する。

(2)広報活動の実施

「メルマガ」「FISPA便り」等による協議会の活動内容及び、業界関連記事等について会員への広報活動を実施する。 

(3)各種セミナーの開催

「法律相談セミナー」「事例研究セミナー」「経営トップセミナー」等の開催

(4)産地研修会の実施

繊維製品の生産現場の実情を理解し、「モノ作りの大変さ」「加工のプロセス」「情報共有の重要性」等について学ぶことを目的とした研修会を実施する。

(5)EDI標準メッセージの管理について

「TAプロジェクト繊維標準メッセージ」及び「繊維産業EDI標準メッセージ」の維持管理業務

2.取引改革委員会

 繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行う。また、「取引の適正化」を図るために取り決めた「ガイドライン」に関する普及啓発活動の実施と諸官庁及び関連する業界団体と連携強化に努め取引の適正化を進める。

(1)「ガイドライン」普及啓発活動の実施協力

1)関連業界団体及び産地・産元企業への「ガイドライン」説明会
2)団体傘下企業へ「ガイドライン」についての実施状況に関する聴き取り調査
3)実施状況を幅広く把握する為、聴き取り調査訪問先の拡大
(団体傘下企業への訪問件数:平成28年17社→29年23社)

(2)適正取引の推進

 業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進。

1)「歩引き」取引の全廃と手形取引の適正化に向けた活動
関係する業界団体、及び経済産業省との連携強化に努め、「歩引き」取引の全廃、「手形取引」の適正化についての活動を行う。
2)業界団体を通じて「基本契約書」締結を推進する
3)「取引相談室」の有効活用に向けての周知徹底を図る

Ⅳ.平成30年度組織編成

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