Ⅰ.平成29年度事業報告

 平成29年度は、繊維ファッション産業の適正化を目指した構造改革の推進を掲げ、時代に対応した取引のルールを定めてきた「取引ガイドライン」(以下 「ガイドライン」とする)を基本に、地道な取り組みである「取引の適正化」事業を推進してきた。加えて、日本繊維産業連盟と協同で「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を策定、周知・啓蒙を図るための具体的な活動に取り組んだ。「情報の共有化」事業では、経済産業省とも連携し、ビジネスプロトコルの標準化に向けた取り組みを行った。

現在、「TAプロジェクト」の活動を基軸に、繊維ファッション産業界の全体最適を目指したSCM構築を図るために注力しているところである。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

「取引の適正化」事業では、適正取引に関する「聴き取り調査」の実施と普及啓発活動を実施した。今回の調査では例年通り、「ガイドライン」の実践・進捗状況、具体的には「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況、「歩引き」取引の実情、「手形取引」の状況等について「定点観測」として調査を実施した。

また、平成26年から実施している産地企業の「聴き取り調査」は対象先を拡大し23社で実施した。関連する団体は「日本毛織物等工業組合連合会」「日本絹人繊織物工業組合連合会」「日本綿スフ織物工業組合連合会」「日本ニット工業組合連合会」「日本靴下工業組合連合会」であった。以下は調査結果概要である。

(1)「聴き取り調査」の実施

1)調査概要

①調査実施時期:平成29年5月~9月
②調査内容:
・「取引ガイドライン」の実践・進捗状況
・「基本契約書」の締結状況
・「発注書」発行及び記載内容の確認
・計画情報の共有の状況等
・「歩引き」取引の有無と実情
・手形取引の実情
・産地における「基本契約書」の締結状況
③調査対象企業:

「経営トップ合同会議」参加企業62社(以下参加企業とする)
及び関連団体傘下企業23社 計85社

2)調査結果要旨

参加企業では「基本契約書」締結の重要性に対する理解は進んでおり、締結率は増加しているものと判断できる。また、新規取引先との口座開設時には「基本契約書」締結を必須条件としている企業も増加している。産地企業でも、締結率に温度差は見られるものの増加傾向にあり、全体として「基本契約書」の締結率は徐々にではあるが上昇しつつある。

当協議会では「ガイドライン」の普及活動を通じて、「基本契約書」締結の重要性を最優先事項と位置づけている。「基本契約書」は契約関係の存在を証する機能があり、水掛け論的な紛争を防ぐ為には、契約関係があることならびに、その対象等の明記が必要である。

「歩引き」取引については調査を進めて6年が経過した。「歩引き」取引は「代金の減額を誘発する要因になりかねない不透明で不適格な取引形態」であり、今日のビジネスには相応しくない取引形態であることは各企業とも十分認識しており、廃止に向けての行動は加速している。

一方、産地の非参加企業の中には常習的に「歩引き」を実施している企業も多く、根深い問題として残っている。今後も、非会員企業ならびに産地における「歩引き」廃止に向けた活動を粘り強く行っていく。

決済方法については、現金決済(期日指定現金を含む)に変わりつつあるものの「手形決済」は依然として残っている。電子決済(電子債権)の割合は年々増加しており、移行準備中の企業も見られた。繊維業界では下請法での手形支払は90日以内と定められており、支払期日は遵守されている。下請法対象外企業との取引では、サイトは概ね120日以内に収まっているものの、手形支払期日150日以上のサイトも依然として残っていた。

今後は、各企業とも国内外企業との商取引では「手形取引」から「電子決済」への移行が加速すると思われる反面、一時的な資金ショート等の問題が生じることも考えられ、対応策等の検討が必要である。

全体としては、下請法適用内での違法事例は殆ど見られないものの、下請法適用外の取引では「歩引き」や長期手形など問題となる商慣習が多く残っていた。取引適正化を進めるなかでの大きな課題である。

2.情報共有化事業

 当協議会では「情報の共有化」には欠かせない標準プラットホーム構築について、平成22年から検討を重ねてきたが、各社とも総論では賛成するものの、実際に導入、運用する段階では自社の既存システムとの兼ね合いや、導入費用に対してメリットが殆ど生じない等の理由から実現できず、標準プラットホームの情報基盤構築については平成27年に見送った経緯がある。

 しかしながら、平成28年度に経済産業省が発表した「アパレル・サプライチェーン研究会」報告書では、製品コードやビジネスプロトコルが統一されていないことが、システム導入が進まない要因の一つとされていた。

 経済産業省ではこの内容を受け、「ビジネスプロトコル標準化事業」の立ち上げを計画し、当協議会もその事業との連動を前提として「製品コードの標準化」について検討を開始した。しかし、この事業は結果として見送りとなり、当協議会の計画も中止せざるを得なくなった。経済産業省はこれに代わり「ビジネスプロトコル標準化勉強会」を立ち上げたが、標準化に向けた積極的な意見は聞かれず、標準化への取り組みは当面行わないという結論となった。

 これらを踏まえ、当協議会では「取引ガイドライン」に則ったビジネスプロトコルの標準化を普及、定着させることを目的に、「情報の共有化」事業の今後の進め方について、具体的に再検討することとした。

 「SCM統一伝票」に関しては紙製複写伝票の在庫減少、及びその運用に必要なドットプリンターのメンテナンス課題もあり、紙製伝票の運用をフォローする為、統一伝票の電子化(PDF)を行った。

3.TAプロジェクト事業

(1) ユニフォーム分科会

1)「ガイドライン」の普及啓発活動の実施

 ユニフォーム分科会は平成26年3月に再開以降、ユニフォーム企業31社と3団体が、テーマごとに5チームに分かれて活動を行ってきた。ユニフォーム業界は、業界固有の共通課題も多く、解決策について検討を行なった。

 また、「ワーキングユニフォーム」の主要産地である岡山・広島地区での「下請ガイドライン」「取引ガイドライン」の説明会を、日本被服工業組合連合会(日被連)の協力を得て昨年10月に実施した。

2) エンドユーザー(最終取引先)との取引における基本契約書の策定

 ユニフォーム業界ではエンドユーザーと取り交わす基本契約書の不備によるトラブルも多い。特に、(長期取引期間中の)価格改定交渉権、在庫商品等の買取、デザイン・仕様の帰属等については買主に有利な取引実態であり、エンドユーザーの意向に従わざるを得ないケースも多い。

 このようなことを踏まえ、エンドユーザーとの取引(B to C)における基本契約書が必要であり、業界内の企業間(B to B)でも使用できることを前提に、平成28度より引き続き、ユニフォーム業界におけるエンドユーザーとの「基本契約書(例)」を検討し、顧問弁護士の支援を受けながら平成29年3月に策定した。

(2) ガイドライン検討分科会活動

1)検討課題

 平成28年12月に発表された下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準改定を踏まえ、「減額」「買いたたき」「不当な経済上の利益提供要請」など繰り返し見られる行為や、問題ないと認識しやすい行為、また繊維産業の特殊な事例など「ガイドライン第二版」では触れていない内容について検討する必要が出てきた。

 また、繊維産業におけるビジネスモデルにも変化が見受けられており、特に、サービスなのか業務なのかが判断しにくい事例や「ガイドライン」に記載されている業務条件の中にも時代にそぐわないものも散見できた。このようなことを踏まえ、「ガイドライン第二版」の業務(取引)条件項目や情報共有項目の内容を中心に再度精査し、「取引ガイドライン第三版」の策定に向け検討を行なった。

主な検討内容は下記の通り。

【検討項目】

・「歩引き」廃止に関する記述について
・支払条件の改善に関する記述について
・価格関連の価格改定協議について
・サンプル関連の副資材などを作成する際の「型代」について
・発注関連の発注時期を過ぎた後の受注受付についての項目の有無
・その他関連する項目の検討

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会活動

事業運営委員会では協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報調査活動を実施した。

「事業運営委員会」開催:第1回:平成29年6月9日・第2回:平成30年1月18日

(1) 平成29年度事業計画の実施状況の確認及び平成30年度事業計画の立案

平成29年度事業計画についての実施状況を確認した。また、平成30年度の事業計画について検討した。

(2) 広報活動の実施

 「メルマガ」30回、「FISPA便り」36回の配信を実施。協議会の活動内容及び業界関連記事等について会員への広報活動を行った。

(3) 各種セミナーの開催

1)「法律相談セミナー」の実施
開催日時:平成29年5月25日(木)14:00~17:00
開催場所:TFTビル東館9階 909研修室
演  題:「アパレル業界において、日々直面している問題等への対応の指針」
            緒方法律事務所 弁護士 緒方 延泰 氏
  
2)「事例研究セミナー」の実施
開催日時:平成29年12月7日(木)14:00~16:00
開催場所:TFTビル東館9階 909研修室
演  題:「日本の消費変化に対応する小売業の変化」
                  株式会社野村総合研究所 高木 裕之 氏
  
3)経営トップセミナー
開催日時:平成30年3月15日(木) 15:00~16:30
開催場所:TFTビル東館9F 909研修室
演  題:「勝つ理由負ける理由~チームマネジメントと人材育成~」
                  野球評論家  岡田 彰布 氏
 
4)「産地研修会」の実施
開催日時:平成29年9月8日(金)9:00~17:00
開催場所:北陸福井産地
訪問先 :サカイオーベックス株式会社(二日市工場)
     福井経編興業株式会社
     畑岡株式会社(足羽工業所)

 

2.取引改革委員会活動

 繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題の調査と具体的な解決策について検討を行った。また、「取引の適正化」を図るために取り決めた「取引ガイドライン」に関する普及啓発活動の実施と諸官庁及び関連する業界団体と連携強化に努め取引の適正化を進めてきた。

「取引改革委員会」開催:第1回:平成29年6月23日・第2回:平成29年12月14日

(1)「ガイドライン」普及啓発活動の実施

1)経済産業省の委託事業「取引適正化の促進のための下請けガイドラインと普及啓発に関する事業」(①「下請ガイドライン」について②「取引ガイドライン」と「自主行動計画」についての説明会)を関連業界団体の協力を得て、産地・産元企業に対して実施した。

2)業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進を行うべく、産地における聴き取り調査先を拡大した。(前年17社→23社)

(2)業界団体間での情報交換
 取引改革委員会では、各団体が抱える課題・問題点等、現況について各団体間での意見・情報交換を行った。

 平成29年度組織編成

 

【参考】繊維産業における自主行動計画

1.自主行動計画策定に至る経緯

平成28年10月31日に開催された世耕経済産業大臣と繊維産業界団体のトップによる懇談会の席上、世耕経済産業大臣から「未来志向型の取引慣行に向けて、適正取引の推進を一層進めるため、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を充実すべく『繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画』を策定していただきたい」との要請があった。それを受けて、日本繊維産業連盟下村会長(当時)が代表してこの要請を受け、日本繊維産業連盟と当協議会が中心となり、具体策の立案に着手し、平成29年3月1日に策定、発表したものである。

この自主行動計画は、取引を行う企業双方の「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行を普及・定着させる観点から、合理的な価格決定、コスト負担の適正化、支払条件の改善、生産性の向上等に関する今後の取組みを表明したものである。

2.策定した目的

経済の好循環を実現するため、繊維産業の適正取引を推進すると共に、生産性・付加価値向上を図る。

3.自主行動計画の骨子

(1)適正取引の推進に関する取り組み

1)合理的な価格決定の取り組み
①適正な利益配分並びに非合理な取引を排除すべく協議を行い、適正に価格を取り決める
②適正な価格転嫁のルール等を踏まえ、取引企業間で十分に協議を行った上、適正に価格を取り決める 

2)コスト負担の適正化の取り組み
①サプライチェーンを構成する各社が相応に負担すべき、コスト負担の適正化・改善の取り組み

3)支払い条件改善の取り組み
①手形支払いから現金支払いの増加を目指す
②手形決済の支払いサイトの短縮化を図り、60日以内となるよう努めていく。

 (2)付加価値向上等に向けた取り組み

1)生産性向上のための取り組み
①繊維業界のサプライチェーンを構成する各企業は、各工程における課題をサプライチェーン全体の課題として把握し、生産性向上に取組む

2)人材育成・教育の推進
①女性が活躍できるよう、環境整備や意識改革を進めていく
②技術及び経験を持った高齢者の雇用の拡充等を積極的に検討していく
③適正取引の推進のため、下請代金法の運用基準や下請振興法に基づく振興基準の改正等を踏まえ、業務ルール等の見直しを行うとともに、社内への周知徹底を図る

(3)普及啓発活動の推進

1)自主行動計画の取組みを幅広く周知に努める

2)非会員企業を含め自主行動計画の取組み内容について普及を図るよう努める

(4)自主行動計画のフォローアップ

1)自主行動計画の進捗状況について、定期的にフォローアップすることにより把握を行う

2)実施状況の評価を通じ、必要に応じて見直しを行い、各社の取引慣行の改善を進める

4.平成28年度活動報告一覧

(1)自主行動計画に関するアンケート調査

 繊維産業に関する自主行動計画についてのアンケートを2回実施した。第1回アンケート調査は、平成29年9月に実施し、業界団体傘下の会員3,700社に送付した。(受理されたものを送付したものとした)第2回アンケート調査は平成29年12月に実施し、業界団体傘下の会員及び「経営トップ合同会議」参加企業の取引先等7,400社に送付した。

(2)普及啓発活動

1)説明会の実施

平成28年度の経済産業省委託事業(「取引適正化の促進のための下請ガイドライン等普及啓発に関する事業」)に基づき、①「下請取引適正化の促進」②「繊維業界における取引ガイドラインと自主行動計画」について説明会を実施した。

2)活動状況