Ⅰ.平成27年度事業報告

 流通や取引に関する慣行は、歴史的、社会的背景の中で形成されてきたものであり、その在り方については、常に見直され、より良いものへと変化していくことが求められている。現在、我が国の経済活動はグローバル化し、日本の市場は国際的により開放的に変化してきている。そのようなことから、流通・取引慣行についても、公正かつ自由な競争を促進し、市場メカニズムの機能を十分に発揮し得るように整えることが重要である。

 このようなことを踏まえ、平成27年度は、時代に対応した取引のルールを定めた「取引ガイドライン」(以下 「ガイドライン」とする)を基本に、一つには、地道な取り組みである「取引の適正化」事業の推進、二つには、これからのグローバル経済に対応した「情報の共有化」事業、即ち、生産供給に関わる企業間取引の合理性を追求し、相互のメリットが生じる「標準プラットホーム」の運用と活用に向けた取り組みを推し進め、「TAプロジェクト」の活動を基軸に、繊維ファッション産業界の全体最適を目指したSCM構築を図るために注力して来た。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

 「取引の適正化」事業では、「ガイドライン」に基づく「聴き取り調査」を実施し、適正取引の実践に向けた取り組みを推し進めた。また、「歩引き」取引を業界全体の課題として捉え、関連する業界団体、諸官庁とも連携し、廃止に向けた活動を進めて来た。

(1)「ガイドライン」の普及啓発活動の推進

1)聴き取り調査の実施

①調査実施時期:平成27年5月~7月
②調査目的:・「ガイドライン」に関する実践・進捗状況
      ・「歩引き」の取引の有無と実情
      ・法令遵守状況(下請法、家内労働法等)
      ・その他
③調査対象企業:

「経営トップ合同会議」参加企業(64社)及び関連業界団体傘下企業
(9社) 計73社(業種区分については主体事業形態で区分)

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2)調査概要

 平成27年度の聴き取り調査では「基本契約書」の締結には各企業が工夫を凝らし、「基本契約書」締結が行われないと新規口座開設が認可されないなど徹底を図る姿勢が見受けられた。「経営トップ合同会議」参加企業を軸に当たり前のように拡がることは良い傾向である。一方で、幾つかの懸念事例も現れている。一つは、産地企業間での「基本契約書」の締結が進んでいないこと、もう一つは、販売先が策定した「基本契約書」に基づく締結が多くあったことである。

 前者では、産地中小企業の苦境を打開する方法として、産地の課題や要望等も公平な立場で協議を行い、総意として取り決めた「ガイドライン」だけに、未だに、進まないことについては普及啓発活動だけでは限界があることを示している。今後の取り組みは、それぞれの産地組合と連動をする必要性は感じるものの産地組合の主体性を望むものである。

 後者については、問題のある条項が含まれているか等について、その都度助言検討を行った。問題がある場合には「ガイドライン」策定の運用ルールとして、「基本契約書」の条項に「繊維産業流通構造改革推進協議会が取り決めた『TAプロジェクト取引ガイドライン』を遵守する」との一項を加えるよう要望した。

 「歩引き」取引は多くの企業で廃止を進めてきているものの、一部では、昔からの慣習として継続しているが、問題はないとの回答もあった。「歩引き」取引が「代金の減額を誘発する要因になりかねない」等の行為とも受け取られ、不透明で不適正な取引形態であり、今日のビジネスには相応しくない取引形態であるとの認識が欠如しているようである。「歩引き」取引の多くは、販売先の立場では既得権のように行使されており、仕入先では不透明な経理処理を行わなければならないなど弊害も多く、今後も廃止に向けての活動を進めて行く必要がある(※1)

(※1)
平成19年に国が「成長力底上げ戦略」構想の一環として、16業種に「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」を策定し現在に至っているが、繊維産業については、『SCM推進協議会がまとめた「取引ガイドライン」について、不透明で問題の多かった取引慣行を改善している点、生産性の向上を目的としている点など産業の競争力の強化に資することやその実効性を高く評価していること。そして、「取引ガイドライン」による取引モデルの実践は、法令遵守、CSRの推進、企業価値の向上の具体的な実効策である。』として、唯一、民間団体として当協議会が取り決めた「ガイドライン」が承認、運用されている。

3)「ガイドライン」に関する説明会の実施

 業界における世代交代が進んだことによる「ガイドライン」の理解度向上のため、会員企業の関連する担当者や中小企業で構成されている業界団体の会員企業担当者を対象にした説明会を実施した。(実施状況はP9~P13平成27年度活動報告一覧参照)

2.情報の共有化」事業

 生産供給に関わる企業間取引の合理性を追求し、相互のメリットが生じる「FISPA標準プラットホーム」(以下「標準プラットホーム」という)の運用と活用に向けた取り組みを推し進めた。

 この「標準プラットホーム」の具体的な運用を推進させるためには、業界標準化システムの詳細等を検討する必要があるとの判断から、「情報化分科会」のワーキンググループとして、新たに「EDI標準化委員会」を立ち上げ検討を行った。

 委員会では、システムの運用で必要とされる新たな取り決め事項の検討、アンケート調査等による業界標準システムを導入した際の経済効果の試算等も行った。また、現状の計画情報のやり取りに関する業務フローを軸に、システム運用の具体的課題及びその解決策の検討を進めた結果、システム導入に向け標準化させる項目についての取り決めが出来た。しかしながら、その他の課題や実導入に向けての企業との取り組み等での検討では、多くの未解決課題があることや、企業の導入時期等の環境も整備されていないことから、次年度以降に解決することとなった。

 なお、「SCM統一伝票」については、印刷する機器ドットプリンターの部品調達が難しくなったこと等メンテナンスの限界が予測できるため、現在、当協議会のホームページからダウンロード出来る「SCM統一伝票」電子ファイルの作成と運用方法等の取り決めの検討を進めている。

(1)EDI標準化委員会の検討事項及び取り決め事項

1)通信プロトコル:通信プロトコルとセキュリティーの選定の検討
FISPA-EDIでの標準化対象とする通信プロトコルは、AS2(※2)、SFTP、HTTPS(※3)から利用シーンに応じた選択とする。

2)ビジネスプロトコル:使用メッセージ、データ項目(必須・選択)の検討
FISPA-EDIでは、ビジネスプロトコルにおける標準化の範囲及び使用するメッセージは「受発注」「出荷(納品)」「出荷(返品)」「請求」とする。

3)メッセージ交換ルール等の検討
FISPA-EDIでは発注書ナンバー及び発注書ナンバー+出荷明細ナンバーをキーとし、以下の事項について取り決めた。

① 「確定注文(ODRDS)」に対する変更・取消のルール
② 「確定注文(ODRDS)」→「出荷通知(OESADV)」→「受領通知(RECADV)」→「請求書(INVOIC)」をつなぐキー項目と標準フロー
③ 標準フロー以外の選択可能なフローオプション
④ EDI取引を支えるデータキャリアの利用ルール(伝票、バーコード等)

(※2)
AS2: インターネット上でデータ交換を安全に行なう手順として、HTTPプロトコルベースに作成。サーバ用プロトコルで、送信データができる都度相手側に送りつけるプッシュ型。受信は、相手起動によるデータを待ち受け状態で常駐待機する。共通鍵や公開鍵暗号などの暗号化技術やデジタル署名を使用してセキュリティを高めている。
(※3)
SFTP: 暗号化された通信路を使って安全にファイルを送受信するプロトコル。SFTPでは、公開鍵認証などを用いてセキュリティを高めた、ファイル転送ができる。
HTTPS: インターネットを利用し、企業間取引データをWeb形式で作られた画面を使って交換するシステム。

(2)EDI標準化委員会での残された課題

1)商品マスターの同期化の仕組み、ルールの取り決め
 商品・品番マスターの登録桁数等

2)企業固有EDIの標準化への移行
 業界標準EDI導入方法の具体的手順等

3.TAプロジェクト事業

 平成27年度「情報の共有化」事業では、前述の内容等について「情報化分科会」で検討を行った。また、「ユニフォーム分科会」では、(1)時代に対応したビジネスモデルに関する新たな課題等についての解決策を検討、(2)関連するユニフォーム業界団体と連携し「ガイドライン」説明会を実施し周知徹底を図った。

 また、「ガイドライン」の検証についてはユニフォーム商品に関する業務条件項目の一部を改訂したが、その他については、新たなビジネスモデルの検証が必要とのことから継続して進めることとした。

(1)ユニフォーム分科会

1)時代に対応したビジネスモデルに関する新たな課題等についての解決策を検討
 ユニフォーム製品に関わる業務条件確認項目の一部について、現状のビジネスモデルに適応するべく改訂を行った(価格関連、知的財産権関連の一部)。

2)関連するユニフォーム業界団体での「ガイドライン」説明会実施及び周知徹底
 「日本ユニフォームセンター」「日本被服工業組合連合会」「レディースユニフォーム協議会」と連携し「ガイドライン」の周知徹底を図るため講習会を開催した。また、「日本被服工業組合連合会(岡山)」「レディースユニフォーム協議会」傘下企業と取引のある代理店を対象とした「ガイドライン」並びに「下請取引ガイドライン」講習会を実施した。

(2)「ガイドライン」の検証

ユニフォーム商品に関する業務条件項目の一部(①価格改定について ②公開入札時における価格条件について ③知的財産権関連について)について改訂した。

(3)産地研修会の実施

TAプロジェクト参加企業を対象とした「産地研修会」を下記の日程で実施した。
  開催日時:平成28年3月9日(水)12:00~17:30
  開催場所:尾州産地(株式会社ソトー・中伝毛織株式会社) 
繊維製品の生産現場を理解し、「モノ作りの大変さ」や「加工のプロセス」「情報共有の重要」等についての研修  (参加企業6社、18名)

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会活動

 事業運営委員会では協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報活動を実施した。また、サプライチェーン全体の最適化を図る上で必要なビジネスモデルの標準化に関する課題の抽出・整理及び改善・改革に向けて以下の事項について実施した。

(1)平成27年度事業計画の実施状況の確認及び平成28年度事業計画の立案

(2)広報活動の実施

  「メルマガ」42回、「FISPA便り」32回の配信を実施。協議会の活動内容について会員への広報活動を行った。

(3)各種セミナーの開催

1)「経営トップセミナー」の開催

開催日時:平成28年2月12日(金)15:00~16:30
開催場所:TFTビル東館9F 909号研修室
演  題:「米国利上げ後の世界経済と中国、日本経済の影響について」     
          株式会社富士通総研  主席研究員 柯 隆 氏

2)「法律相談セミナー」の開催

開催日時:平成28年3月15日(火)14:00~17:00
開催場所:TFTビル東館9F 909号研修室
演  題:「アパレルに関する知的財産権の基礎知識」     
         緒方法律事務所 辯護士 緒方 延泰 氏

3)「事例研究セミナー」の開催

開催日時:平成27年5月19日(火)14:00~16:30
開催場所:TFTビル東館9階 909号研修室 
演  題:「オムニチャネルリテーリングと繊維ファッション産業のSCM革新
     ~アパレル版インダストリアル4.0~」
     株式会社野村総合研究所
       サービス・産業ソリューション第1事業本部
       主席研究員 藤野 直明 氏

(4)SCM構築に向けた情報収集活動の実施

1)繊維産業の各段階における取引状況及び情報共有に関する課題の抽出、整理
2)SCM構築に必要な関係団体等の情報化事業の把握及び関連する事業の連携

(5)「情報の共有化」事業の推進に伴う案件事項の審議及び承認

1)「TAプロジェクト繊維標準メッセージ」及びQR推進協議会からの「繊維産業EDI標準メッセージ」の維持管理業務の実施
2)新たな標準メッセージに関する審議及び承認

2.取引改革委員会活動

取引改革委員会では繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行った。また、「取引の適正化」を図るため、取り決めた「ガイドライン」に関する普及啓発活動の実施と諸官庁及び関連する業界団体と連携し取引の適正化を進めた。

(1)「ガイドライン」普及啓発活動の実施( PDF平成27年度活動報告一覧参照 )

1)関連業界団体及び産地での「ガイドライン」の説明会
「J∞QUALITY商品認証制度」説明会に併せて「ガイドライン」説明会を下記で実施。
   日本綿スフ織物工業組合連合会傘下の7地域(浜松、西脇、筑後、福山、高島、奈良、泉大津)   

2)「ガイドライン」に関する実施状況に関する聴き取り調査

(2)適正取引の推進

業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進を行った。

1)「歩引き」取引の全廃に向けた活動

2)「取引相談室」の周知活動
「ガイドライン」説明会開催時等に、「取引相談室」の役割及び内容等について紹介したが有効活用が出来ていない。このようなことから、平成28年度では産地での基本契約書締結の推進活動と併せて周知活動を進めて行く。

IV.平成27年度活動報告一覧

PDF 平成27年度 活動報告一覧 【→PDFで閲覧する

PDF 平成27年度 収支決算報告 【→PDFで閲覧する

V. 平成27年度組織編成

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