FISPA便り「下請け適正取引余聞」

 繊維ファッションSCM推進協議会のメルマガは、去る3月に経済産業省が改訂した「繊維産業における下請適正取引等の推進のためのガイドラインの改正について」に関して、改正の背景や改正点のポイントをシリーズでお伝えしています。

 内容は、SCM推進協議会のホームページの「FISPA-NEWS」をご覧いただくとして、いささか腑に落ちないというか、どう理解したらよいのか、整理がつかない現実があることに気づき、こころのモヤモヤが晴れません。

 普通、下請取引と言えば、大会社と中小企業の関係を想起します。親会社の立場である大会社が、立場の弱い中小企業との取引で買い叩きや下請け代金の減額などを強要する図式がイメージされます。実際、そうした事例があり、あるいは懸念されるからこそ、「経済の好循環」のために下請取引の適正化を推進しているわけです。

 しかし、整理がつかない現実の一つは、ファッションビジネスでは、主要な取引形態になっている「商社OEM(相手先ブランド生産)ビジネス」のことです。商品を発注する側のアパレル企業やSPA企業と商社の関係では、発注を受ける商社の方が大会社であることが多い点です。アパレル製品生産において、素材調達、縫製工場確保などでグローバルに対応できる商社の機能が発揮できるからですが、資本金など規模では大会社の商社がOEMビジネスでは下請けの立場にあることになります。

ところで、大商社でOEMビジネスに携わっていた何人かが発注先企業に転職しました。高額な報酬も転職を促した要因だと推察されますが、加えて、OEM事業という名の「下請仕事」でなく「ブランドを軸にした主体的な仕事」に魅力を感じたからのようです。これらの転職は例外なのでしょうか。OEMは、現下のファッションビジネスでは不可欠の機能なのですが…。

 もう一つは、縫製など下請企業が、その企業より規模の大きい服飾付属品の発注者であるケースです。「大」が「小」から“不当な取引”を要請されているケースがあると言われています。SCM推進協議会にも、時たま、こうした情報が寄せられていますが、つまるところ、下請取引は、資本金額で「大」「小」に分けた関係論だけでは対処できないことだけは確かなようです。 

(聖生清重)