FISPA便り「元気が出ない」現代消費者像

 繊維ファッションSCM推進協議会は、会員サービスの一環として7月21日に「事例研究セミナー」を開きました。野村総合研究所(NRI)の日戸浩之氏が「2015年NRI生活者1万人アンケート調査結果」から分析した「最近の日本における消費スタイル変化」を説明しました。この調査は1997年から3年に一度実施しているものですが、今回の調査ではどんなことがわかったのでしょう。

 まず、2015年消費成熟化社会の消費者像では、「現状満足・現状維持型の傾向が強まる。成長を望まない、変わりたくない」、「消費分野、趣味は日常性志向へ。日常生活やささやかな外出を充実させたい」、「モノをもつことへのこだわり低下。借りものでいい。中古でもいい」などの結果になりました。

この中で気になったのは「今後、消費を拡大したい分野」です。積極的にお金を使いたい費目では「食料品」、「外食」、「こどもの教育」、「人とのつきあい・交際費」といった日常的な楽しみにまつわる項目が挙がっています。最近は、「食」への関心が高まっています。ファッション系企業でも飲食を併設したショップを開発したり、飲食業へ進出する動きが強まる傾向にありますが、同調査でも「食」への関心の高さが確認された格好です。

 保有率が20歳代では9割以上に達しているスマートフォンなど情報端末関係では、「情報が多すぎて困る。情報疲労傾向は継続」との結果が出ています。情報洪水でアップアップしている消費者像が浮かび上がりました。

 次に、「情報収集・チャネル利用など消費行動の変化」の調査では「インターネットのみで商品を購入する人の比率が2012年から2015年の間に10ポイント増加して、店舗の役割は薄れてゆく、との見方もできるようですが、実際は「店頭でのリアル体験+スマホでの即時性の高い情報収集」という使い分けが進展している、との結果となっています。

 さらに「現代消費者の意識・消費スタイルの変化」の調査では「メーカー・ブランドよりユーザー評価」、つまり「ユーザーがブランドを作る時代」になっている、と分析しています。この項目で気になる点は「国産」への認識です。調査結果は「商品・サービスを選ぶ際に『国産』、『有名メーカー』にこだわる傾向は頭打ち」となっています。

 調査は膨大で、上記はほんのさわりですが「2015年消費成熟化社会の消費者像」の調査結果について、日戸氏が述べた「元気が出ない結果になった」との感想が印象に残りました。               

(聖生清重)