FISPA便り「やる気が漂っていたTX展」

 先月末、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれた繊維総合見本市のJFWジャパン・クリエーション(JFW-JC)とテキスタイルの展示商談会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」(PTJ)を見てきました。なかでもPTJ展の出展ブースを見て回りながら、顔見知りの出展社や主催者、来場したセレクトショップの経営者など何人かから話を聞きしました。

 PTJに展示されていたテキスタイルは、ファッションアパレルの企画で素材を重視する傾向が強まっている状況を反映してか、自社の得意の技術にもう一味加えたものや、糸の段階から差別化した魅力的なものが多かったように思えました。元商社マンのテキスタイルの専門家が「力作が揃っている」と話していたように、応対する社員が、自社のテキスタイルに自信を持っていることを感じさせるブースも目につきました。

 婦人服を中心とするファッション市場は、日本が得意とする中間ゾーンの消費が不振で、そのためテキスタイル業界を取り巻く環境には厳しいものがあります。しかし、PTJ展の会場では、そうした逆風を感じさせず、開発素材を武器に意欲的に販路を開拓しようとの意欲が漂っていました。

 常連の出展者同士が、相互にブースに顔を出し、なにやら情報交換している様子からは「新商品開発や販路開拓で共に刺激を受け合っている」ように思えました。

 この種の展示商談会が成功するか否かの要諦は「(展示会をやる側の)やる気」にあることは、かねて指摘されています。「やる側」の「やる気」が来場者に伝わるというわけです。その意味でいえば、PTJ展は、展示商談会にとって良き歯車が回っていると言えそうです。だからこそ、中間ゾーン不振の逆風を感じさせなかったのではないかと思いました。

 PTJ展とは、直接の関係はありませんが、会場で出会った、有力セレクトショップの創業者にこんな質問をしました。「セレクトショップという業態は、登場以来30年が経過して成熟化していますが、今後とも成長するためには、どうすべきだと思いますか」。答えは「オリジナルブランドを確立することです」でした。その際、世界のラグジュアリーブランドから高く評価されている、繊細で高度な日本テキスタイルが重要な役割を果たせるのではないか、との期待を胸に会場を後にしました。                 

(聖生清重)