FISPA便り「『STYLE MEISEN』への期待

 日本のテキスタイルは、その繊細さ、高い匠の技、微妙な色使い、柔らかな手触りなどで世界に冠する水準にあると言われています。事実、世界のラグジュアリーブランドの多くが日本のテキスタイルを使用しています。

 そんな日本のテキスタイルを使用した日本発の著名なアパレルブランドとなると、皆川明さんの「ミナペルホネン」などなくはないのですが、少ないのが実情です。日本のテキスタイルを前面に打ち出し、かつ、日本の美を形や色に現わしたブランドの登場を待ち望んでいましたが、ついに、と言うべきか、ようやく、と言うべきか、私たちの目に触れることになりました。

 昭和初期から大正時代に人気を集めた、主に北関東で生産された平織りの絹織物の「銘仙」。大胆で華やかな柄と輪郭線をぼかしたような、やわらかな色彩が特徴です。足利市の2社、秩父市の3社の生産者と「まとふ」ブランドのデザイナー、堀畑裕之、関口真希子さんが組んで、銘仙を現代ファッションによみがえらせたのです。

 伝統技術の「銘仙」を日本の美を表現するに巧みな「まとふ」が生み出した「STYLE MEISEN」。経糸に絹、横糸に綿を使ったジャカードのロングジャケット、横糸にポリエステルを使用した生地のプリーツスカート、やさしい風合いのスカーフなど。柔らかな薄緑や黄色、淡い水色などの色彩は、早春の気配を感じさせてくれます。柄は、さながら現代アートの抽象画のようです。

 筆者はかねて、世界に通用するジャパンオリジナルの「日本ファッション」の出現を待ち望んでいます。「日本テキスタイル」を前面に打ち出した、日本らしいデザインのファッションは、縮小傾向が止まらない全国の織物産地の復活のきっかけになると考えるからです。

 産地の伝統技術は、日本の文化でもあると思います。地域の歴史を刻んできた伝統的な織物が、現代のデザイナーと出会い、世界市場に通用するファッションが生み出される契機になることが「STYLE MEISEN」に込められていると思っています。銘仙と「まとふ」のコラボは、経済産業省が支援していますが、そうした狙いがあるからでしょう。

同企画展は、2月21日まで東京・松屋銀座7階の「デザインギャラリー1953」で開催されています。

                  (聖生清重)