FISPA便り「AIが選んだデザインは個性的?」

 AI(人工知能)の言葉が新聞やテレビ、ネット上に登場しない日はない現代社会。ファッション業界にもAIやIoT(モノのインターネット)による変革の波が押し寄せようとしています。ファッションアパレル製品は、見て、触って、試着して、気に入ったら購入するものだと信じていましたが、今やネット販売が当たり前になり、今後も成長すると見られています。

 ファッションとテクノロジーを融合させたファッションテックなる用語もすでに定着しています。その代表が時間や場所を問わずに個人間取引(CtoC)ができるフリマアプリでしょう。スマートフォンなどで手軽に利用できるフリマアプリは急速に普及し「最大手のメルカリのダウンロード数は国内だけで4000万件を突破した」(16年12月28日付日経MJ)そうです。 

 AIはどうでしょう。伊藤忠繊維月報は2017年1月号の繊維カンパニー幹部の座談会でAI時代に予想される変革を話し合っています。AIを利用することで、こんなことが実現するのではないか、との予測は衝撃的とも言えるものです。

 例えば、こんな具合です。▽個人の好みや店舗レイアウトをAIが提案する▽顧客、店頭販売員の動きを分析して商品の見せ方や接客を改善する▽シーズンカラー、テーマをAIが設定して、適切な生産数量をはじき出す、などが実現する方向にあります。現に、TSIホールディングスは、顧客や店頭販売員の動きを分析して商品の見せ方や接客などの改善に取り組んでいます。

 さらには、AIは、次のような企画・生産・販売の仕組みを現実のものにする可能性があるとのことです。▽RFIDの普及でGPS機能を活用すれば、個人のクローゼットの中の洋服がデータとして集積でき、個人に対するマーケティングが可能になる▽物流革命と合わせて、AIが選んだ商品が瞬時に自宅に届く。

 AIが将棋や囲碁で人間を上回るニュースを耳にするたびに「AIは、どこまで進化し、それによって私たちの生活はどう変わるのだろう」と思案しますが、少なくともAIは、ファッションビジネスにも多大な変革をもたらすのでしょう。

個人的には、個人が気づいていない好みまでAIが教えてくれるという、そのAIが引き出した個々人の好みが結果的には「似たようなもの」なのか、それとも「明らかに別々なもの」なのかどうかに興味があります。「決まっているだろう」と言われそうですが。

                (聖生清重)