FISPA便り「グローバリズムの終焉と日本」

 繊維ファッションSCM推進協議会は去る9日、東京・有明のTFTビルで経営トップセミナーを開催しました。人気ブロガーで、単行本、雑誌、各種メディアで活躍している、㈱経世論研究所所長の三橋貴明氏が「グローバリズムの終焉と日本の『国民経済』」のテーマで講演しました。

 豊富なデータを駆使して、独自の視点で世界と日本の今、日本が進むべき道を解説しましたが、結論は「人手不足を生産性向上で克服し、日本を再び豊かにしよう」でした。ご本人も発言していましたが、悲観ではなく、元気が出る講演でした。

 三橋氏は、まず、グローバリズムについて、英国のEU離脱、トランプ政権誕生による米国ファースト政策は、グローバリズム(自由化)の終焉を意味するとともに、現在の世界の政治を動かすキーワードは「グローバル化疲れ」だと指摘しました。

 一例としてあげたデータは、衝撃的なものでした。2015年の主要国の健康寿命は世界一の日本が74.9歳なのに対し、米国は実に69.1歳。先進国では最低でキューバより下位です。グローバル化で白人のドラッグ、自殺が激増したことが健康寿命の低下につながっているそうです。 続いて、三橋氏は「政府の目的は経世済民」にあり、財政黒字にする、規制緩和か強化か、公共投資拡大か削減か、増税か減税か、などはすべて手段であって目的ではない、として経済成長率と名目GDP、実質賃金、所得創出のプロセス、公共投資、新幹線網とその路線計画、主要国の長期金利、日本国債保有者、有効求人倍率などのデータを示しながら解説しました。

 その上で、日本は生産年齢人口が急減することから、人手不足が深刻になると述べ、そうした中で「豊かさを取り戻すためには一人当たりの生産性を高めるしかない。かつて高度成長をもたらした設備・人材・公共・技術への投資を行うこと。未来は不透明だが、アニマルスピリッツを発揮して、アニマル(野獣)のように投資する。例えば、一人の運転手がトラックの荷台を3連結して走るようにすることだ。生産性が向上することで再び豊かになる。これが真実だ」と強調しました。                      

 生産性向上は、自社の競争力強化はもとより、安倍政権が取り組んでいる働き方改革にも関連しています。喫緊の課題であることは間違いありません。

                              (聖生清重)