FISPA便り「多国籍チーム」

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの国籍を問わない通年採用などに象徴されるグローバル時代での企業経営における人材戦略を考える際、しばらく前ですがイタリアを代表するブランドのひとつである「エルメネジルド・ゼニア」社のエルメネジルド・ゼニア社長にインタビューした時のジルド社長の言葉を思い出します。 

 「エルメネジルド・ゼニア」は、もともとはイタリアの毛織物メーカーですが、その後、アパレル製品事業に進出し今日ではイタリアを代表する世界のメンズのトップブランドの地位を確立しています。ジルドさんは、家業を継いだ三代目社長です。端正な身のこなしが印象的なジルドさんの言葉とは、こういうものです。 

 「(私は)アメリカの大学で学びました。一方、当社ではイタリア人はもちろんですが、アジア人も東欧の国の人もアフリカの人も働いています」。インタビューは、英語の通訳を介してのものでしたが、ジルドさんの英語は完璧のように感じられました。アメリカの大学を出ているのですから当然でしょうが、その時「グローバル・ビジネスマンとはこういうタイプなのか」といたく感心させられたことを鮮明に思い出します。 

 何故かと言いますと、ジルドさんがアメリカの大学で学んだのは、英語力を身につけることがグローバル・ビジネスには必須だからですが、同時にアメリカの大学で学ぶことで、アメリカ人の習慣を学び、友人知人のネットワークをつくることを意図したからです。留学の当初から「アメリカでのビジネス拡大」を構想し、だからこそアメリカの大学に留学したのです。 

 加えて、イタリアの自社で働く企画チームは、まさしく「多国籍チーム」です。国も民族も宗教も異なる人々が同じチームで働いているとのことでした。国内市場が小さいイタリア企業にとって、輸出は事業拡大のためには避けて通れない道です。「多国籍チーム」は、言い換えれば「グローバル・チーム」であり、グローバル市場で売れるブランドを生み出すための最良のチーム編成というわけです。   

(聖生清重)