FISPA便り「震災後の生活者動向」

 「3・11」(東日本大震災)の前と後で生活者の消費行動や消費スタイルはいかなる変化をきたしたのでしょうか。休日の変更、実質的なサマータイムの導入、在宅勤務の奨励などは多くの企業が導入しています。これらが生活者意識にどんな影響を与えているのか。私生活でも、節電生活を送る一方で、なお苦難が続く被災者へのおもんばかりもあって、どことなくすっきりしない気分に覆われているように思えます。だからこそ、なでしこジャパンの女子サッカーW杯優勝という快挙が熱狂的に受け入れられたのではないでしょうか。 

 「日常の生活をすることが被災者への支援につながる」。この生活者意識は共通のものになっているでしょう。だが、実際はどうなのか。FISPA(繊維ファッションSCM推進協議会)は、去る7月14日に野村総合研究所(NRI)の消費財・サービス産業コンサルティング部の日戸浩之上席コンサルタントを講師に「東日本大震災後の生活者動向の変化」についてのセミナーを開催しました。 

日戸さんによりますと、NRIが4月25、26日に行ったインターネット調査の結果は、要約すると次のようなものだったそうです。「①復興期に入り生活者の消費マインドは回復基調にあるが、シニア層を中心に外出を避ける傾向と消費に罪悪感があるため、それを正当化する理由を求めている②中期的に注視すべきは、リーマンショック以降に強まっている消費価値観の変化の影響③電力不足、原発など『新たな不安』が制約要因に」。 

②に関連して、日戸さんは「コーズ・リレーティド・マーケティング」を提唱しました。「コーズとは、主義・理想・大義の意。製品売り上げで得た利益の一部を社会貢献するNPOなどに寄付する活動を通して売り上げ増加を目指すマーケティング手法だそうですが、これは「罪悪感の解消」にも効果的でしょう。

 以上は、日戸さんの詳細な説明のほんのさわりですが、社会が困難に直面している時、企業行動ではとりわけ社会的貢献が重要だと言うことではないでしょうか。そうした企業の「社格」が成長戦略にも欠かせないと言うべきでしょう。 

(聖生清重)