FISPA便り「アパレル生産、1億枚割れ」

 日本繊維輸入組合が毎年、まとめているアパレル製品の輸出入統計を見ると、2017年のアパレル製品の供給では、国産の減少と輸入の増加に歯止めがかからず、輸入浸透率は前年比0.3ポイント増の97.6%になったことがわかりました。大きな変化は見られませんが、1991年には51.8%だった輸入浸透率はその後上昇を続け、限界とも思える90%に達した以降もジリジリと上昇しています。

 国内市場向けのアパレル製品の総供給量は、37億9200万枚です。前年に比べて1.8%増加しました。アパレル製品の中間ゾーンが昨年夏以降、持ち直しているとはいえ、好調とは言えない環境から見れば、微増とは言え意外感を禁じえません。そして、この統計を見るたびに、いつも感じることがあります。人口1億2000万人の市場への供給量としてこの数字は多すぎるのではないか、ということです。この中には下着も含まれていますが、供給過多の印象は免れないのではないでしょうか。

 国内市場に投入されるアパレル製品の97.6%が輸入品であることは、人々の生活に必須のアパレル製品の安全保障上、問題があるのではないか、とさえ思えます。現実にはあり得ないでしょうが、万一、何らかの理由で輸入がストップしたら、生活必需品の安定供給に支障をきたすのではないか、と。

 国内生産量はどうなのでしょう。前年比8.1%減の9840万枚でした。年々、減り続けついに1億枚を割り込んでしまいました。国内生産では日本ファッション産業協議会が純国産の認証制度「J∞QUALITY」(JQ)を設け、復権に努めていますが、昨年に関しては、まだ、統計に表れる効果はあがっていないことになります。

「JQ」の価値は、単に数量だけの目的ではなく、安心・安全や文化性、環境配などに配慮しているところにありますが、少なくともアパレル製品の供給において、国産品は“希少価値”的な存在になっている、と言えるのではないでしょうか。

 ところで、日本はどこからアパレル製品を輸入しているのでしょう。中国は漸減傾向にありますが、それでも2017年の全世界に占める比率は67.1%で断トツの1位です。次いで、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、カンボジアの順です。
注目されるのは、イタリアが第6位に入っている事実です。アパレル製品の生産国の中心は、歴史的に労務費が安い国に移っていますが、アパレル製品を付加価値が高いファッション製品をとらえると様相は違ってきます。ファッションのトレンドや文化の発信力の高い先進国でも輸出競争力を保持することができる。イタリアの健闘はそうしたことを教えてくれています。 

(聖生清重)