FISPA便り「ジャパン・テキスタイル・ウイークの夢想」

東京・青山、渋谷周辺のイベント会場を印したマップを片手に、アパレル、SPA企業、小売り、デザイナーなどのバイヤーが回遊する。目的は、日本が世界に誇る繊細で高度な衣料素材のテキスタイルの最新情報の収集や買い付け。春と秋の年2回、ある時期に全国のテキスタイル産地が東京展の開催時期を集中するようになった。会場こそ別だが、会期を一定の期間に合わせたことで、国内外のバイヤーの利便性が高まり、いつしか「ジャパン・テキスタイル・ウイーク」と呼ばれるようになったのです。

発展するアジアから世界に発信するアパレルブランドやデザイナーブランドメーカーの担当者は、世界に通用するアパレルブランドに使用するテキスタイルは「メード・イン・ジャパンが不可欠」だとして、「ジャパン・テキスタイル・ウイーク」には必ず足を運ぶようになりました。長年、「世界に冠する」と形容された日本テキスタイルですが、一時は、「もはや世界に冠するとは言えなくなってしまった」と地位の低下をなげく声が聞かれました。然しながら、匠の技を持つ職人の努力と高い志を掲げて「ジャパン・テキスタイル・ウイーク」に足並みを揃えた関係者の尽力のおかげで名実ともに「世界に冠する日本テキスタイル」が定着しました。
と、以上は筆者の夢想です。

長繊維、短繊維、天然繊維、合成繊維、それらの複合素材。米沢、新潟、福島、桐生、浜松、尾州、石川、福井、和歌山、大阪、奈良、播州、倉敷、今治など日本には、全国の個性的なテキスタイルを生み出す産地が存在しています。これら有力産地は、日本のファッション産業の中心地、東京でそれぞれ産地展を開いています。そのほか、テキスタイル展では、JFW(東京発日本ファッションウイーク)主催のJC(ジャパン・クリエーション)、PTJ展(プレミアム・テキスタイル・ジャパン)も開かれています。

「ジャパン・テキスタイル・ウイーク」は、そうした産地展を一定期間に集中させようというものです。会場は1カ所でなくてもかまいません。開催時期を合わせるだけです。そうするだけで、バイヤーへの便宜性はもとより、世界への発信力も飛躍的に高まるでしょう。開催の経費は変わりません。問題は会場の確保ですが、「160円区間」(地下鉄の初乗り運賃)の範囲で見つけることができるのではないでしょうか。

(聖生清重)