FISPA便り「外国人技能実習の法令順守とJQ」

   外国人技能実習の適正な実施に向けて経済産業省は先ほど、「繊維産業における外国人技能実習の適正な実施等のための取組」を公表し、法令順守の徹底、取引適正化の推進、アパレルなど発注企業の社会的責任の遂行などに取り組むことになりました。

 この問題は、繊維業界で外国人技能実習生の法令違反が目立つことから、経産省が去る3月に繊維・アパレルなどの団体で構成した「繊維産業技能実習事業協議会」を法務省、厚生労働省の協力を得て設置し、4回にわたって議論したうえで「取組」をまとめたものです。

 「取組」では、業界団体が主導して法令順守に努めることが明記されたほか、サプライチェーン全体の問題として社会的責任を果たすことが盛り込まれている点に注目したいと思います。文字通り、業界ぐるみで法令順守、取引の適正化に取り組む方向が明確になったからです。

 ところで、この「取組」を見て気になったことがあります。国内縫製では「日本ファッション産業協議会の純国産の認証制度「J∞Quietly」(JQ)で安心・安全・コンプライアンス認証を取得した縫製工場が300社強ある事実です。「取組」を実行するために「JQ」をもっと活用すれば、一石二鳥ではないか、と思った次第です。

 何故なら、「JQ」が本格化したにもかかわらず、2017年のアパレル製品の国内生産量は1億枚を割り込んでしまったからです。「JQ」は、消費者に国産の良さと安心・安全を提供し、地域経済にとって重要な産業基盤を維持・発展させる役割が期待されています。しかし、昨年で見る限り、国内生産の減少に歯止めをかけることができなかったことになります。

 国民生活に必須な衣食住の「衣」を提供するとともに、先進国として大事な文化でもあるファッションを維持・向上する上で縫製業は必要な産業です。にもかかわらず、一部とは言え、賃金未払いや長時間労働などの法令違反が行われている現実があり、その一方では安心・安全な国産を保証する「JQ」が国内生産回帰につながっていない現実があります。

 そこで、この際、外国人技能実習の適正化に合わせて「JQ」の普及とそれによる需要振興をリンクできないか、と愚考しています。繊維産業ぐるみで「取組」に取り組む中で、もう一度「JQ」に光りをあて、本来の役割を果たすようにできないものでしょうか。                   

(聖生清重)