FISPA便り「お互い様の組織風土こそ」

 繊維ファッションSCM推進協議会はこのほど、事例研究セミナーを開きました。テーマは「働き方改革の実現に向けて~多様性を活かすこれからの職場とは~」で東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部長の宮原淳二さんが2時間にわたって講演してくれました。

 講演の内容は①働き方改革はなぜ必要か?②多様な人材を活かす組織運営マネジメント③先進事例の紹介④明日からできる仕事術。会社への忠誠心が旺盛で部下の長時間労働を評価してきた50代管理職が、突然、わが身に降りかかった親の介護で働き方改革に目覚めるストーリーのDVDを使用して、わかりやすく説明してくれました。

 働き方改革は、安倍政権の目玉政策のひとつで、報道も多く、各社でも取り組んでいると思います。宮原さんが指摘した「少子高齢化、人口減少下では限られた時間でアウトプットを出す『働き方改革』意識が必要」とのまとめは、まったくその通りだと思います。
また、働き方改革が成功する要因にあげた①経営陣の本気度が組織の隅々まで行き渡り、推進役の中間管理職が自部署で実践し②業務改善で得られた果実は、従業員の処遇向上や人材育成に振り向ける、ことはもっともだと思いました。

 働き方改革は、高齢者の就業促進や外国人材の受け入れなど、社会そのものを変える必要があるテーマもありますが、特に重要だと思わされた課題は介護離職です。宮原さんが統計で示した、年間10万人にのぼる介護離職は、超高齢化ニッポンの大きな課題であることは間違いありません。10万人のうち、7、8割は女性だそうですが、逆に言えば2万人から3万人は働き盛りの男性だそうです。加えて、介護に直面している方、いつ要介護になるか心配な親を持つ方はもっともっと多いことでしょう。

 そんなことを考えていたら配布されたレジュメのこんな記述に目がとまりました。「信頼とコミュニケーションは業務効率化の両輪という考えで お互い様の組織風土を醸成する」。いつの時代でも必要な人間関係に関する意識のことでした。そのためには、経営トップ以下、組織の全員が意識改革を行う必要がありますし、会社は諸制度やルールを整える必要があるでしょう。同時に「お互い様」の風土を作ることができたら、働き方改革は社会改革そのものへとつながるのではないでしょうか。

 明日から「お互い様」でつながる職場を目指そうではありませんか。

(聖生清重)