FISPA便り「閉塞脱却を愚考する」

 首相がコロコロと変わり、国債暴落の危険が迫っているのに決められない日本。財務危機が晴れない欧州。政治・経済でかつてのパワーを失った米国。格差社会の矛盾をかかえた中国。資源高に悩む新興経済国群。地球全体が「閉塞」状況に置かれ、その中で各国・地域がもがいているような時代状況。ならば、と「閉塞」を広辞苑で引いてみました。

 結果は「とじふさぐこと。とざされふさがること」とありました。なんともそっけない説明です。ですが、「ふさぐ」、「ふさがれる」が「閉塞」なら、閉塞からの脱却は「開く」、あるいは「打開」ということになるのだとの思いに至りました。ついでに言うなら、「閉塞」には自分がそうしたのではなく他者がそうしたのだといったニュアンスがありますが、「打開」の主役は自分自身だ、と。

 繊維ファッション業界でも5月から6月は、多くの事業者団体が総会を開きました。筆者が現役の繊維記者だったころは、団体の総会後の新旧会長(理事長)の記者会見は重要な取材現場でした。

 旧会長が会長時代の実績を語り、場合によっては新会長に継続事業を託す。新会長は、当該産業の現状認識と今後の在り方を語り、自身が会長として取り組むべき課題をあげながら方針を述べるのが常でした。

 しかし、1990年代初めのバブル崩壊以降のことでしょうか。多くの事業者団体は、デフレ不況とグローバル競争によって産業規模の縮小、組合員数の減少、財政難に悩み、新事業を打ち出せなくなっています。

 繊維ファッション産業を取り巻く状況は、確かに厳しい。ですが、誰かが、いや今日まで熾烈なグローバル競争に生き残ってきた全員が、いまこそ「閉塞」からの「打開」に踏み出すべきでしょう。

 日本が誇る高度かつ匠の技術、四季を通じて培った繊細な感性を武器にテキスタイルからアパレル、小売りが「垂直チーム」を組み、新商品を開発する必要があると思います。「商工連携」こそが「閉塞打開」の方策だと愚考するのですが、いかがでしょう。

                   (聖生清重)