FISPA便り「辛抱の時」

 新型コロナウイルスの感染拡大で、世の中全体に不安な空気が漂っています。政府が26日の感染防止のための大規模イベントの中止や延期を要請したことを受けて、企業や自治体、スポーツ界など各方面で予定されていたイベント、試合の中止や延期の動きが広がっています。学校の休校も相次いでいます。国立の博物館・美術館の休館も決まりました。

 もうすぐ3月。春は確実にめぐってきます。年度末で、卒業や就職、転勤など行事が多い時期です。毎年やってくる「別れと出会い」の季節は、誰にとっても“記憶に残る春”になるのが通例なのだと思います。しかし、今年は、新型コロナウイルスの感染拡大で、一転して重苦しい季節になってしまいました。

 大勢の人が集まる大型イベントから、個人が何人か集う趣味の発表会の中止や延期が相次いでいます。それぞれの関係者は一様に苦渋の決断だと思います。当コラムを掲載してくださっている、繊維ファッションSCM推進協議会も今日27日に苦渋の決断を発表しました。3月9日(月)に予定していた「経営トップセミナー」開催を中止すると決定したのです。参加者の安全、健康に配慮したものです。

 筆者のメールにも、有力ブランドから、3月に予定していた東京でのコレクション発表は無観客で行い、ショー作品はネットで見ることができるようにする、との通知がありました。報道によりますと、東京ガールズコレクションも中止が決まりました。ファッション関係者のみならず、社会の各方面で予定した催しを実施すべきか、中止すべきか、延期にするべきか、真剣に悩み、検討している方が、今、この時点でも大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

 アパレルファッション業界は、新型コロナウイルスの発生がなかったとしても、長引く中間ゾーンの不振と暖冬による冬物商戦の低迷で体力を消耗している企業が少なくないと思われます。それだけに、新型コロナウイルスが与える消費や企業活動の停滞は甚大な悪影響を及ぼしかねないと予想されます。政府も中小企業への支援策を講じるでしょうが、心配の種は尽きません。

 新型コロナウイルスの感染を予防する方策は、多くのマスコミでも取り上げています。当面、個人や企業でできることは、マスク着用、手洗い、アルコール消毒、人混み回避などで、こうした予防策をこまめに講じることなのでしょう。企業活動では、在宅勤務を増やすなど、災いを転じて福となす(働き方改革の実行)ことも大事だと思われます。

 感染が収まり、収束する時への備えも怠らずに、当面は辛抱の時、と腹をくくる必要がありそうです。                  

(聖生清重)