FISPA便り「フットワーク、ネットワーク、ヘッドワーク」

   新型コロナウイルスの感染が世界に広がり、国内でも終息が見えない、なんとも暗鬱な状況が続いています。中国からの製品、原材料、部品の入荷が遅れているとの報道もあります。筆者の友人も経営している内装会社に中国から部品が入らず、工事に支障が出ている、と頭を抱えています。社会を構成するすべての個人、あらゆる組織が何らかの影響を受けているでしょう。

 実際、人出が減っているようです。日々の通勤では誰もが人の動きが少なくなっていることを実感していると思います。夜の飲み会も激減しているでしょう。データはそうした人の行動が変化していることを示しています。去る8日付の日経新聞によりますと、各種データを分析したところ、東京・銀座地区と大阪・北新地地区の午前0時の人口は、いずれも水曜日の今年2月26日と昨年2月27日を比べると銀座は47%減、北新地は46%減だったそうです。半減です。オフィス街の昼間人口も2割減少しているとのことです。

 飲食店は悲鳴をあげているでしょう。加えて9日からの中国、韓国からの入国制限で免税店の売り上げ減少は想像できないほど落ち込むとの悲観的な見方が支配的な状況です。

 そうした人の移動を追跡すると、いわゆる働き方改革につながる動きが見られるといいます。在宅勤務や時差出勤が広がっていることがデータから読み取れるそうです。今回の新型コロナウイルスの感染拡大を契機に業務遂行の効率化が進展すれば、まさに災いを転じて福となす、ことになると言えるでしょう。

 一方では、こんな報道もあります。8日配信の繊研新聞電子版によりますと、新宿ルミネは、こんな時だからこそ、とES(従業員満足)に力をいれているそうです。従業員食堂で特別価格のメニューを提供して気持ちの落ち込みを防ぎながら、同時に接客向上や商品の見せ方を工夫しているそうです。

 報道でそんな動向を知ったのですが、以前、ある業界人の送別会で聞いたある人のあいさつを思い出しました。その方は故人ですが、総合問屋系列のアパレル会社でマーケティング畑を歩む一方、各種調査、業界団体の手伝い、異業種交流会の主催など、幅の広い活動を精力的に行っていました。

 本人の送別会は「卒業の会」と銘打って行ったのですが、そこで、その人はこうあいさつしました。「私は、フットワーク、ネットワーク、ヘッドワークの3つのワークを心がけてきました。第二の人生でもそうありたいと思っています」。

 今、フットワークの実践は躊躇する状況ですが、ビジネスパーソンのみならず、新年度から新しい仕事に移る方、第二の人生を歩む方にとっても参考になるのではないでしょうか。

                  (聖生清重)