FISPA便り「困難直面時の3つの『あ』」

 新型コロナウイルスとの闘いは長丁場になりそうです。そう覚悟しても連日の新聞、テレビ、ネットなどのニュース報道は、コロナ関連で埋め尽くされています。正しい情報の提供と受け取りが重要なことは理解できますが、氾濫するコロナ情報には、時に気持ちが折れそうになるのではないでしょうか。

 産業・企業活動は、SCM(サプライチェーン)のすべてで支障をきたし、外出自粛、国境を越えての移動制限でモノもコトも需要が激減し、多くの企業が深刻な売り上げ減少に直面しています。個々人の日々の生活も、先行きが見えない閉塞感。感染への不安。いらだち。気持ちが折れそうになる。あるいは「自粛疲れ」。多くの人が落ち着かない状況に苦しんでいると思います。

 そんなことを考えていた時、ちょっと前にどこかの新聞で読んだ記事を思い出しました。ガン告知を受けた時の心構えを報じた記事は、3つの「あ」が大事だ、と教えていました。今日、ガンは種類にもよりますが、必ずしも不治の病ではありません。とは言え、自分がガンに罹っている、と宣告されたらどうでしょう。冷静に受け止める、と自信をもって言える人は少数なのではないでしょうか。

 うろたえるかもしれません。死の不安に押しつぶされそうになるかもしれません。一気に絶望するかもしれません。そんなガン宣告の時に必要な心構えは3つの「あ」だそうです。「あわてない」、「あせらない」、「あきらめない」の頭文字の「あ」。この記事を読んで、「なるほど」と思ったので手帳にメモっておきました。あえてメモするほどのことはなく、すぐに覚えられる心構えですが、 
多くの方が同意されるのではないでしょうか。

 確かに、人は困難に直面した時、その困難が大きければ大きいほど、あわてる、あせることから免れないのかもしれません。しかし、そんな時だからこそ、あわてず、あせらず、かつ、あきらめない。くだんの3つの「あ」が大事だと思います。正確な情報と分析に基づいて冷静に行動することこそが大事だとの指摘は、実は、現下の状況にも当てはまるのではないでしょうか。

 繊維ファッション業界も例外なく困難に直面しています。そんな中、繊研新聞電子版でSC(ショッピングセンター)ディベロッパーがテナントに対して固定賃料を減額するとの報道を目にしました。困難な時こそ3つの「あ」で冷静さを失わないこと。そして、可能な範囲で助け合うことも、また、必要なことでしょう。コロナ禍の一日も早い終息を願いながら、そう思いました。

                              (聖生清重)