Ⅰ.平成28年度事業活動方針

 2016年はアベノミクスが正念場を迎えるとも言われている。振り返ると、アベノミクス登場とともに円安によって輸出企業の収益は改善し、株高は人々のマインドを高揚させ日本経済は良くなるという明るいムードが広がったが、今の日本経済は回復基調にあるものの力強さに欠け、企業マインドも消費者心理もすっきりとしない状況である。

 繊維産業を取り巻く環境は依然として厳しく、生産、消費、貿易等の指標はリーマンショック以前の水準には程遠く、世界経済を牽引してきた中国経済の減速や米国の利上げによる新興国の景気の下振れ等から懸念される要因も多い。

 昨年はTPP(環太平洋経済連携協定)が大筋合意され、これを踏まえ広域経済連携が進展する可能性も高く、2020年に向けて様々な市場が国境を越えて交わってくるといわれている。

 まさに、関税障壁が崩れグローバルマーケット競争の軸は変わり始め、新しい市場を創造するイノベーションパワーが必要な時代になったともいえる。今までの、拡大と低コストの実現により成功してきた時代の終焉を予測させるものでもある。

 流通や取引に関する慣行は、歴史的、社会的背景の中で形成されてきたものであり、その在り方については、常に見直され、より良いものへと変化していくことが求められている。そして、我が国の流通・取引慣行についても、経済活動がグローバル化し日本の市場は国際的により開放的に変化してきていることからも、公正かつ自由な競争を促進し、市場メカニズムの機能を十分に発揮し得るようにしていくことが重要である。

 このようなことを踏まえ、時代に対応した取引のルールを定めた「ガイドライン」を基本に、一つには、地道な取り組みである「取引の適正化」事業の推進、二つには、あらゆるモノがネットで繋がる「IoT」への対応を踏まえた「情報の共有化」事業を進めることが求められている。

 今まで取り組んできた生産供給に関わる企業間取引の合理性の追求や、相互のメリットが生じる「標準プラットホーム」の運用と活用を進めると共に、グローバルマーケットに対応した取り組みについても検討を早急に行う必要があると考えている。

 本年も「TAプロジェクト」の活動を基軸に、繊維ファッション産業界の全体最適を目指したSCM構築を図るために注力していく。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

「取引の適正化」事業では、「取引ガイドライン」に基づく「聴き取り調査」を実施し、適正取引の実戦に向けた取り組みを推し進めていく。また、「歩引き」取引を業界全体の課題として捉え、関連する業界団体、諸官庁とも連携し、廃止に向けた活動を進める。

(1)「ガイドライン」の普及啓発活動の推進

1)「ガイドライン」の説明会の実施

「取引の適正化」事業では、第一に「ガイドライン」の普及啓発活動を推進することである。平成27年度も「聴き取り調査」や産地にて「ガイドライン」説明会を実施したが、基本契約書の締結を行っている企業が少なく浸透度は皆無に近いことがわかった。従来からの悪しき取引慣行である「歩引き」取引の廃止、引取拒否等の解決に取り組むには基本契約書の締結が重要である。28年度は、「ガイドライン」の説明会の頻度を高め更に推し進めていく。

・関連業界団体「日本毛織物等工業組合連合会(以下 毛工連という)日本綿スフ織物工業組合連合会(以下 綿工連という)日本絹人繊織物工業組合連合会(以下 絹人繊という)」等での説明会の実施と産地における基本契約書締結の推進。

・独占禁止法(以下 独禁法という)、下請代金等支払遅延防止法(以下 下請法という)、「ガイドライン」の相関関係と「ガイドライン」の有効性について。

・「歩引き」取引及び手形決済に関わる適正化のあり方についての実態調査と検討。

2) 聴き取り調査の実施

①調査実施時期:平成28年5月~8月
②調査目的:・「ガイドライン」についての実践状況の調査。
      ・「歩引き」取引の実態調査。
      ・法令遵守の取り組み状況調査。
      ・手形取引の実情調査。
      ・産地における取引の実態調査。
③調査対象企業:経営トップ合同会議参加企業及び関連業界団体傘下会員企業(毛工連、綿工連、絹人繊等) 

2.「情報の共有化」事業

「情報の共有化」事業では、今まで取り組んできた生産供給に関わる企業間取引の合理性の追求や、相互のメリットが生じる「FISPA標準プラットホーム」の運用と活用を進めると共に、「IoT」等、次世代のグローバルマーケットに対応した取り組みについても早急に検討を行う。

(1)「FISPA標準プラットホーム」の構築に向けた取り組み

1)残された課題解決への取り組み
  ・商品マスターの同期化の仕組み、ルールの取り決め。

2)「FISPA標準プラットホーム」導入への具体的取り組みの開始
  ・副資材受発注についてコンバーター・商社・アパレル間で検討を行う。

(2)次世代の「情報の共有化」事業に向けた取り組み

1)「IoT」「オムニチャネル」「RFID」等それぞれに対する情報収集や事例研究、また具体的な可能性の有無等、次世代の「情報の共有化」事業への検討を進める。

3.TAプロジェクト事業

(1)ユニフォーム分科会

1)ユニフォーム業界団体と連携し「ガイドライン」説明会の実施及び周知徹底を図る。
2)時代に対応したビジネスモデルに関する新たな課題等についての解決策を検討。

(2)「ガイドライン」の検証と改訂

 「ガイドライン第二版 VER.1」以降、各業種間では新たなビジネスモデルに類する取引が生じている。一部には業務かサービス提供か不明なモノあり、問題が生じたときの責任所在が曖昧なものもある。
 このようなことも踏まえ、それぞれの取引当事者間における業務フローを再確認した上で業務条件等を検討し、必要に応じて「ガイドライン」の改訂を行う。

(3)産地研修会の実施

TAプロジェクト参加企業を軸に、繊維製品の生産現場の実情、加工のプロセス、情報共有の重要性等の理解を深めることを目的とした研修会を実施する。

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会活動

協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報調査活動を実施する。また、サプライチェーン全体の最適化を図る上で必要な課題の抽出・整理及び改善・改革に向けて以下の事項を実施する。

(1)平成28年度事業計画の実施状況の確認及び次年度事業計画の立案
 当該年度事業活動の実施状況を確認すると共に次年度事業計画についての骨子案を理事会に提示する。

(2)広報活動の実施
 「HP」「メルマガ」「FISPA便り」等による協議会の活動内容についての広報活動を実施する。

(3)各種セミナーの開催
 「経営トップセミナー」「法律相談セミナー」「事例研究セミナー」等の開催。

(4)SCM構築に向けた情報収集活動の実施
 1)繊維産業の各段階における取引状況及び情報共有に関する課題の抽出、整理
 2)SCM構築に必要な関係団体等の情報化事業の把握及び関連する事業の連携

(5)「情報の共有化」事業の推進に伴う案件事項の審議及び承認
 1)「TAプロジェクト繊維標準メッセージ」及びQR推進協議会からの「繊維産業EDI標準メッセージ」の維持管理業務の実施
 2)新たな標準メッセージに関する審議及び承認

2.取引改革委員会活動

業界全体における不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みを推し進め、併せて、諸官庁及び関連業界団体と連携し「ガイドライン」に関する説明会並びに普及啓発活動を実施し取引の適正化に努める。

(1)「ガイドライン」普及啓発活動の実施

1)産地での「ガイドライン」説明会、「基本契約書締結」に関する普及活動の実施
2)「ガイドライン」に関する実施状況に関する聴き取り調査

(2)適正取引の推進

1)「歩引き」取引の全廃と手形取引の適正化に向けた活動
 関連業界団体と連携し「歩引き」取引の全廃に向けた具体策の立案と手形取引の適正化についての検討を行う
2)「取引相談室」の周知活動
 産地での「基本契約書締結」の推進と「取引相談室」の周知活動を進める

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