Ⅰ.令和元年度事業活動方針

 2019年の世界経済は、緩やかに成長していくものの、アメリカ経済の減速や中国経済の一段の軟化もあり、減速していくものと見られている。アメリカは減税効果の一巡に加え、米中貿易摩擦や長期金利情報による悪影響も顕在化し、中国は政府によるインフラ投資や減税等が下支えするものの、米中貿易摩擦による輸出や投資の下振れが懸念されている。

 また、ユーロ圏では、イギリスのEUからの離脱問題が混迷し、最悪の場合、英・EU双方が大きな経済的打撃を受け、その余波は東欧や北アフリカにも及ぶと考えられている。

 日本経済は昨年、多くの自然災害に見舞われ一時的にマイナス成長になったが、その影響も一巡し、一時的な落ち込みからも回復した。企業収益は堅調で、設備投資は増加の傾向にあり、景気回復基調は続いている。しかしながら、アメリカ経済や中国経済の減速、また10月の消費増税等、内外の様々な下振れリスクが顕在化することも考えられ、決して予断を許さない状況である。

 日本の繊維産業を取り巻く環境は依然として厳しく、現場では高齢化と人手不足で労働力確保が難しく、変化を迫られている。世界で進むデジタル革新をとらえ、企業によっては、様々な課題をデジタル技術によって乗り越え、新たな付加価値や製品・サービスを創出するところも出てきている。

 また、衣類・服飾雑貨のEC市場は2017年に1.65兆円(前年比7.6%増)となり、EC化率は11%を超えた。今後も拡大が見込まれ、既存のビジネスモデルは変革を迫られている。

 他方、モノづくりの方でもサステイナブル(持続可能性)が欧州を中心にファッション産業の必須条件となっており、日本にもその流れが来ている。

 流通や取引に関する慣行は、その歴史的、社会的背景の中で形成されてきたものであり、その在り方については、常に見直され、より良いものへと変化していくことが求められている。そして、我が国の流通・取引慣行についても、経済活動がグローバル化し日本の市場は国際的により開放的に変化してきていることからも、公正かつ自由な競争を促進し、市場メカニズムの機能を十分に発揮し得るようにしていくことが重要である。

 今年度はこのようなことを踏まえ、昨年改定し、より時代に対応した取引のルールを定めた「取引ガイドライン第三版」を基本に、地道な取り組みである「取引の適正化」事業をさらに推し進めていく。消費者が製品に安心・安全を求めるように、サプライチェーン上の取引においても安心・安全で公正な取引というものを確認できる仕組みを策定すべく、国際的な潮流も踏まえ、一歩進んだ「取引の適正化」事業に取り組んでいく。

Ⅱ.事業活動

1.取引適正化事業

 今年度も経済産業省ならびに各業界団体と連携を取りながら、「ガイドライン」の普及啓発活動を更に推し進め、「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行を普及・定着させるための適正取引の推進と、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を実施する。

(1)聴き取り調査の実施

 例年通り、「経営トップ合同会議」参加企業と産地企業を対象とした「ガイドライン」の実践・進捗状況、「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況及び計画情報共有の実情等の調査、「歩引き」取引の実情、「自主行動計画」の実施状況等についての調査を行う。

1)実施時期:令和元年5月~9月

2)内  容: ・「ガイドライン」に関する実践状況及び法令遵守の調査
       ・「歩引き」取引の実態調査
      ・ 手形取引の実態調査
      ・「自主行動計画」の実施状況

3)対象企業:経営トップ合同会議参加企業及び関連団体傘下会員企業

(2)「歩引き」取引廃止の徹底と普及啓発活動の推進

繊維産業から「歩引き」取引をなくすための取り組みを引き続き推進する。

1)参加企業は企業の社会的責任を果たす意味でも、各社の仕入先、販売先に「歩引き」取引の廃止を要請する。
2)要請後も「歩引き」取引を継続している場合は、企業の社会的責任を鑑み、参加企業は自社の「歩引き」廃止の取り組みや今後の取引等についての説明と協議を進める。
3)事務局は関連する業界団体を通じ、非参加企業に対して、「ガイドライン」の普及活動とあわせて「歩引き」取引の廃止についての啓蒙活動を実施する。

(3)「取引ガイドライン第三版」の普及活動の推進

 当協議会は平成16年の「ガイドライン第一版」作成以来、産地を含む全国各地において機会ある毎に説明会を開催してきた。

 「基本契約書」の締結促進、計画情報の共有など、基本的かつ普遍的な取引上のルール等を各企業の経営層から第一線で活躍している方々に理解して貰うことは、取引の健全化にとって極めて重要である。

 このようなことから、今年度は、改定した「取引ガイドライン第三版」について、参加企業、非参加企業、産地を問わず、各業界団体との連携強化を図り、ガイドラインの内容についての理解と浸透をはかるべく、説明会を実施する。

 また、「縫製業ガイドライン」についても、策定にあたり分科会メンバーとして参加した「日本アパレルソーイング工業組合連合会」と「日本輸出縫製品工業組合」両団体と連携し、傘下の縫製工場を中心に講習会やセミナーを開催するなど周知活動を実施する。併せて、縫製業と関わる業種間で発生している課題と現状把握をするために「聴き取り調査」を行い、「ガイドライン」の理解を深める取り組みを進めていく。

 参加企業はもとより、産地における企業や非参加企業に対して、「ガイドライン」が存在することの理解と浸透を如何に図るかが継続的課題であり、今後も引き続き、経済産業省並びに各業界団体との連携を図りながら普及啓発活動を推進していくことが重要である。

(4)「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」の浸透ならびにフォローアップの実施

 平成29年3月、日本繊維産業連盟と協同で適正取引の推進を一層進めるため、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を充実すべく「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を策定、業界団体の協力を得て、浸透活動をすすめている。

 今年度も引き続き繊維業界全体に対して「自主行動計画」の浸透をはかるための活動を行う。

2.情報共有化事業

 当協議会では、長年にわたり業界標準のインフラを構築する取り組みを進めてきたが、当初の目標は達成できず、標準化については見送った経緯がある。

 しかしながら現在は、IoTの活用やビッグデータの分析能力の向上、人工知能(AI)の実用化によって産業構造や就業構造が大きく変化する過程にある。経済産業省は「Connected Industries」を掲げ、機械、データ、技術、人、組織等、様々なつながりにより新たな付加価値が創出される産業社会を目指している。こうした「Connected Industries」の実現は、業種・業態やこれまでのIT化の取組み度合いなどによって、多種多様である。工場内の「つながり」にとどまるものもあれば、取引先や同業他社との繋がり、顧客や市場と直接つながっていくものもある。既存の関係を超えて、広く繋がることで新たな産業構造の構築にもなっていくと考えられる。

 このような状況の中、当協議会の「情報の共有化」事業に対する今後の取り組み方に関しては、抜本的な見直しが求められている。

 今年度については、「Connected Industries」等の実現により新たなビジネスモデルが生まれる可能性も踏まえて、他の繊維業界団体とも連動して、繊維業界における新たなビジネスモデルに関する情報を収集し、改めて「情報の共有化」に関する可能性について検証を行いたい。

3.TAプロジェクト事業

(1)「取引適正化推進分科会(仮称)」活動

 繊維産業技能実習協議会が昨年6月に発表した「繊維産業における外国人技能実習の適正な実施等のための取組」の中では、「発注企業の社会的な責任」が今後取り組むべき項目として明記されている。

 すでに、繊維ファッション業界でも各業界団体や、大企業を中心として各企業単位でCSRに対する取り組みは進んでいる。CSRは企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をする責任を指している。そして、CSRは企業経営の根幹において企業の自発的活動として、企業自らの永続性を実現し、また、持続可能な未来を社会とともに築いていく活動である。

 国内におけるCSRに対する取り組み方については、法令遵守等、取引適正化は避けて通れない重要部分である。当協議会では、このような国際的な潮流も踏まえつつ、TAプロジェクトに「取引適正化推進分科会(仮称)」を立ち上げ、「安心・安全な取引」を目指し、更なる取引適正化に向け取り組んでいく。

(2)ユニフォーム分科会活動

 ユニフォーム分科会の在り方については、業界での違反事例が生じていることからも見直しする時期にあると判断している。各社におけるコンプライアンスの強化や違反行為の再発防止策等については、すでに各企業がそれぞれ認識し行動に移している。当協議会としても、業界が抱える課題や参加企業の役割と責任について、分科会で改めて具体的に検討したい。業界として法令遵守を徹底し、取引の適正化の実現を目指した活動を推し進めて行かねばならない。

 また、新たに策定した「取引ガイドライン第三版」の周知活動や、ユニフォームを利用するエンドユーザーとの取り組みに向けた「基本契約書(例)」の活用を含めた普及活動も、引き続き取り組んでいく。

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会

事業運営委員会では協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報調査活動を実施する。

(1)令和元年度事業計画の実施状況の確認及び次年度事業計画の立案

 当該年度事業活動の実施状況を確認すると共に次年度事業計画についての案を事務局並びに理事会に提案する。

(2)広報活動の実施

 「FISPAニュース」「FISPA便り」等による協議会の活動内容及び、業界関連記事等について会員への広報活動を実施する。 

(3)各種セミナーの開催

 「法律相談セミナー」「事例研究セミナー」「経営トップセミナー」等の開催

(4)産地研修会の実施

 繊維製品の生産現場の実情を理解し、「モノ作りの大変さ」「加工のプロセス」「情報共有の重要性」等について学ぶことを目的とした研修会を実施する。

(5)EDI標準メッセージの管理について

 「TAプロジェクト繊維標準メッセージ」及びQR推進協議会からの「繊維産業EDI標準メッセージ」の維持管理業務を実施する。

2.取引改革委員会

 取引改革委員会では繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行う。また、「取引の適正化」を図るために取り決めた「ガイドライン」に関する普及啓発活動の実施と諸官庁及び関連する業界団体と連携強化に努め取引の適正化を進める。

(1)「ガイドライン」普及啓発活動の実施協力

1) 関連業界団体及び産地・産元企業への「ガイドライン」の説明会
2) 団体傘下の企業への「ガイドライン」についての実施状況に関する聴き取り調査
3) 実施状況を幅広く把握する為、聴き取り調査訪問先の増加
 (団体傘下企業への訪問件数:平成28年17社→29年23社→30年23社)

(2)適正取引の推進

業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進。

 1)「歩引き」取引の全廃と手形取引の適正化に向けた活動
   関係する業界団体、及び経済産業省との連携強化に努め、「歩引き」取引の全廃に向けた具体策の立案と実施を進める。また、手形取引の適正化についての検討を行う。
 2)「基本契約書」の締結を推進する活動
 3)「発注書」の発行及び入手を推進する活動
 4)「取引相談室」の有効活用に向けての周知活動

Ⅳ.令和元年度 組織編成