Ⅰ.平成29年度事業活動

 日本経済はアベノミクスの減速感と世界経済を牽引してきた新興国経済の減速、米国から始まった保護主義的な流れなど海外の政治動向も不透明感が残るなど、先行きの景況感は慎重なものとなっている。また、懸念されていた米トランプ政権の外交・軍事リスクがいよいよ顕在化し始め、地政学リスクの高まりが市場、ひいては世界経済に及ぼす影響は決して軽視できない。

 このように不透明な時代の流れの中、繊維産業を取り巻く環境は依然と厳しい状況が続いているが、越境ECの台頭、消費者の本物志向の動きに対応する動きもあり、繊維産業の新しい価値創造の取り組み等の課題克服が重要である。

 流通や取引に関する慣行は、歴史的、社会的背景の中で形成されてきたものであり、その在り方については、常に見直され、より良いものへと変化していくことが求められている。そして、我が国の流通・取引慣行についても、経済活動がグローバル化し国際的な市場と変化してきていることからも、公正かつ自由な競争を促進していくことが重要である。

 平成29年度はこのようなことを踏まえ、従来通り、時代に対応した取引のルールを定めた「ガイドライン」を基本に、一つには、地道な取り組みである「取引の適正化」事業の推進、二つには、あらゆるモノがネットで繋がる「IoT」への対応を踏まえた「情報の共有化」事業を進めていく。

 本年は「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行を普及・定着させる適正取引の推進と、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を推進していくものである。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

(1) 「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」の実施

 平成29年3月に日本繊維産業連盟と協同で策定した「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」に基づき、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動及び普及啓発、さらには取組みの成果、課題等を調査し、フォローアップ活動も推し進めていく。

(2) 「歩引き」取引の廃止宣言と普及啓発活動の推進

 「歩引き」取引は、下請代金遅延防止法において「下請代金の減額」に該当する違法行為として禁止されており、今日のビジネスには相応しくない取引形態であることは周知の通りである。繊維産業界から「歩引き」取引をなくすため、平成29年3月に「『歩引き』取引廃止宣言及び要請のお願いについて」を約4,600社に対して送付した。今後はその効果性や成果等について「聴き取り調査」等を通じて調査し、引き続きこの活動を推し進めていく。

(3) 聴き取り調査の実施

 例年通り、「ガイドライン」の実践・進捗状況、「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況及び計画情報共有の実情等の調査、並びに「歩引き」取引の実情等について調査を行う。平成26年から実施している産地を対象とした調査も継続して行う。

1) 実施時期:平成29年4月~8月

2) 内容:
・「ガイドライン」に関する実践状況及び法令順守の調査
・「歩引き」取引の実態調査
・手形取引の実態調査

3) 対象企業:経営トップ合同会議参加企業及び関連団体傘下会員企業

(4) 「ガイドライン」の普及並びに「基本契約書」の締結促進活動

 「基本契約書」の締結促進、計画情報の共有など基本的かつ普遍的な取引上のルール等を現場の第一線で活躍している方々に浸透させることが極めて重要である。また、「基本契約書」の締結は、概ね進んでいるものの、産地や一部の中小企業では締結が行われていないことや「基本契約書」が買い手側からの提案で進められており、「基本契約書」の締結に関する重要性や「ガイドライン」に沿った公平公正なものであるかの検証も必要である。

 平成29年度も経済産業省ならびに各業界団体と連携を取りながら、「ガイドライン」の普及啓発活動を更に推し進めていく。

2.「情報の共有化」事業

 平成27年に経済産業省が立ち上げた「アパレル・サプライチェーン研究会」の最終報告書では、「サプライチェーンを通じた生産性の向上や価値創造を促すため、事業機会や優秀事例に関する情報共有や共有インフラ整備を行っていく」としている。更に「アパレル製品の製造工程の効率化や企業間の情報共有化を図るためには電子データ交換(EDI)システムやRFID等を製造工程に導入することが有効である」と示している。そして、「システムの基盤となっている製品品番コードやビジネスプロトコルが統一されておらず、サプライチェーン全体としてのシステムの導入が進んでいない」と報告されている。

 これを受けて、経済産業省では平成29年1月「繊維アパレルビジネスプロトコル標準化に係る勉強会」を立ち上げ、標準化に向けて検討を開始した。この中で、経済産業省が業界各企業に対するヒアリングを実施したが、標準化に対する前向きな発言は見受けられず、具体的な見通しは立たない状況である。

 このようなことから、当協議会では、上記標準化事業と連携して検討を行うこととしていた当初の計画を変更し、電子データ交換(EDI)の導入を進める際に必要とされるシステム的な標準化ではなく、「ガイドライン」に則り業界全体で適正な取引が行われることを目指した「ガイドラインに基づくビジネスプロトコルの標準化」に向けて以下の項目について検討を開始することとした。

1) 「ガイドライン」の情報化に関する内容等の再精査
2) 「ガイドライン」に基づくビジネスプロトコルの策定

 SCM統一伝票の電子化については、伝票入力機器としてのドットプリンターの生産終了、及び紙製複写式伝票の在庫減少に対応するため平成29年4月より電子化・PDF化を開始した。

3.「TAプロジェクト」事業

「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」策定を踏まえ、新たに「ガイドライン分科会」を立ち上げ、「ガイドライン」の業務条件項目、情報共有項目等の検討を進め、「取引ガイドライン第三版」の作成を行う。また、その他の課題については、必要と判断した場合には新たな分科会を立ち上げて検討を行う。

(1)「ガイドライン分科会」活動

1)ガイドラインの取り決め項目や業務条件など内容について追加・改訂
2)「ガイドライン」の具体的な普及方法や普及対象先について

(2)「情報化分科会」活動

 「ガイドライン」に基づくビジネスプロトコルの策定に向けて検討を行う。

1)「ガイドライン」の情報化に関する内容等の再精査
2)「ガイドライン」に基づくビジネスプロトコルの策定

(3)「ユニフォーム分科会」活動

1)「ガイドライン」の周知徹底及び説明会の実施
 28年度にユニフォーム業界の主要団体と「ガイドライン」の周知徹底を進めることで合意したことを踏まえ、更なる連携の強化と「ガイドライン」説明会などを通じ周知活動を推進する。

2)ユニフォームを利用するエンドユーザーとの取り組み(B to C)
 エンドユーザーとの「基本契約書(例)」の活用と啓発活動についての具体策を検討する。

3)その他業種の取り組みについての検討

III.委員会活動

1.事業運営委員会

 事業運営委員会では協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報調査活動を実施する。

(1) 平成29年度事業計画の実施状況の確認及び次年度事業計画の立案
 当該年度事業活動の実施状況を確認すると共に次年度事業計画についての案を事務局並びに理事会に提案する。

(2) 広報活動の実施
 「メルマガ」「FISPA便り」等による協議会の活動内容及び、業界関連記事等について会員への広報活動を実施する。

(3) 各種セミナーの開催
 「経営トップセミナー」「法律相談セミナー」「事例研究セミナー」等の開催

(4) 産地研修会の実施
 繊維製品の生産現場の実情、加工のプロセス、情報共有の重要等の理解を深めることを目的とした研修会を実施する。

(5) EDI標準メッセージの管理について
 「TAプロジェクト繊維標準メッセージ」及びQR推進協議会からの「繊維産業EDI標準メッセージ」の維持管理業務を実施する。

2.取引改革委員会

取引改革委員会では繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題についての調査及び具体的な解決策について検討を行う。また、「取引の適正化」を図るために「ガイドライン」に関する普及啓発活動を実施し諸官庁及び関連する業界団体と連携強化に努め取引の適正化を進める。

(1)「 ガイドライン」普及啓発活動の実施協力

1)関連業界団体及び産地・産元企業への「ガイドライン」の説明会
2)団体傘下の企業への「ガイドライン」についての実施状況に関する聴き取り調査

(2) 適正取引の推進

 業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進。

1)「歩引き」取引の全廃と手形取引の適正化に向けた活動
 関係する業界団体、及び経済産業省との連携強化に努め、「歩引き」取引の全廃に向けた具体策の立案と実施を進める。また、手形取引の適正化についての検討を行う。
2)「基本契約書」の締結を推進する活動
3)「取引相談室」の有効活用に向けての周知活動

 

PDF 平成29年度 予算書 【→PDFで閲覧する