Ⅰ.令和3年度事業活動方針

 令和2年の世界経済は新型コロナウイルスの感染拡大によって甚大な打撃を受けた。欧米では新型コロナウイルスが猛威を振るい、感染者数も死者数も大きなものとなり、ロックダウン(都市封鎖)も行われ、経済活動が大きな制約を受けた。

 令和3年に入ってからも、日本では緊急事態宣言が再発動され、欧州ではロックダウンが強化されるなど、先行きの見えないスタートになっている。ワクチンが開発され、昨年末より欧米の一部、また2月にはようやく日本でも投与が始まってきているが、まだまだ終息する気配は見受けられない。

 日本経済は新型コロナウイルスの感染症の影響で一時期大きく落ち込んだが、年末に向けて徐々に持ち直す傾向が見られていた。しかしながら緊急事態宣言の再発動で今後に関しては先行きが見えない状況となっている。そのような中で、政府はウィズコロナ、ポストコロナ時代に求められる社会構造や産業構造の転換に向け、デジタル社会の実現やグリーン社会の実現を目指すことを打ち出している。

 繊維業界では、このコロナ禍で様々な課題が浮き彫りになった。店頭では臨時休業や催事中止、外出自粛等で売り上げが大きく減少し、販売予定の商品が多量に売れ残った。その結果、過剰生産という産業構造の大きな課題が表面化し、それに伴いサプライチェーンの川上企業はさらに厳しい状況となった。また、人との接触を減らさなければならず、店頭での店舗運営や、商談方法、展示会開催方法など、今までとは違った運営方法を模索しながら様々な課題に取り組まなければならなくなった。他方、リモートワーク、リモート展示会やEC事業の強化などデジタル化が進んだ。

 一方で、このような状況の中でも、モノづくりにおいては環境への負荷が低い原材料調達や加工方法を積極的に取り入れ、SDGs(持続可能な開発目標)に基づく課題解決に向けた取り組みを強化するなど、世界の潮流となってきているサステイナビリティーへの対応はより確かなものとなってきている。

 令和3年度はこのようなことを踏まえ、引き続き「取引ガイドライン第三版」、並びに「自主行動計画」を基本に、サプライチェーンにおける安心・安全な取引を確認できる仕組みを模索し、国際的な潮流の持続可能性を見据えた、一歩進んだ「取引の適正化」事業に取り組んでいく。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

 令和3年度も経済産業省ならびに各業界団体と連携を取りながら、「ガイドライン」「自主行動計画」の普及啓発活動を推し進め、「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行を普及・定着させるための適正取引の推進と、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を実施する。

(1) 聴き取り調査の実施

例年通り、「ガイドライン」の実践・進捗状況、「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況、計画情報共有の実情、「歩引き」取引の実情、「自主行動計画」の実施状況等について調査を行う。特に今年度については、政府が取り組みを始めた「中小企業等の活力向上に関する現状・課題と今後の取組について」の中で挙げている「取引適正化に向けた支払い条件の改善」を踏まえ、重点項目として手形取引の実情については深堀して調査を行う。また、新型コロナウイルスの影響についても調査を行うと共に、平成26年から実施している産地を対象とした調査についても、引き続き実施する。

1)実施時期:令和3年5月~9月

2)内  容:・「取引ガイドライン」の実践・進捗状況 ・「歩引き」取引の有無と実情 ・手形取引・決済方法の実情 ・「自主行動計画」の進捗状況 ・CSRの取り組み状況 ・新型コロナウイルスの感染症の影響 ・産地における取引の実情

3)対象企業:経営トップ合同会議参加企業(以下参加企業という)及び 関連団体傘下会員企業

(2) アンケート調査の実施

 非参加企業に向けて「聴き取り調査」と同じような項目にて、「ガイドライン」の実践状況、「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況、「歩引き」取引の実情、「自主行動計画」の実施状況、新型コロナウイルス感染症の影響についての調査を行う。

(3) 「歩引き」取引廃止の徹底と普及啓発活動の推進

繊維産業から「歩引き」取引をなくすために引き続き下記の具体策を推し進める。

1)参加企業は企業の社会的責任を果たす意味でも、各社の仕入先、販売先に「歩引き」取 引の廃止を要請。
2)要請後も「歩引き」取引を継続している場合は、企業の社会的責任を鑑み、参加企業は自社の「歩引き」廃止の取り組みや今後の取引等についての説明と協議を進める。
3)事務局は関連する業界団体を通じ、非参加企業に対して、「ガイドライン」の普及活動とあわせて「歩引き」取引の廃止についての啓蒙活動を実施する。

(4) 「取引ガイドライン第三版」の普及活動の推進

 当協議会は平成16年の「ガイドライン第一版」作成以来、産地を含む全国各地において機会ある毎に説明会を開催してきた。 「基本契約書」の締結促進、計画情報の共有など、基本的かつ普遍的な取引上のルール等を各企業の経営層から第一線で活躍している方々まで理解して貰うことは、取引の健全化にとって極めて重要である。 会員企業はもとより、産地における企業や非会員企業に対して、「ガイドライン」の存在と浸透を如何に図るかは継続的課題であり、今後も引き続き、経済産業省並びに各業界団体との連携を図りながら普及啓発活動を推進していく。

(5) 「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」の浸透ならびにフォローアップの実施

平成29年3月、当協議会では、日本繊維産業連盟と協同で適正取引の推進を一層進めるため、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を充実すべく「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を策定、業界団体の協力を得て、浸透活動をすすめている。 令和3年度も引き続き繊維業界全体に対して「自主行動計画」の浸透をはかるための活動を行う。 特に、説明会、アンケート結果なども踏まえて、浸透が浅い地域、団体に対しては重点的に実施する。

2.「情報の共有化」事業

令和3年度は、「デジタル化への対応」として、DX、IoT、AI等をキーワードに、セミナーや勉強会を通じて不足している知見を深めると共に、新たなビジネスモデルが生まれる可能性も見据え、他の繊維業界団体とも連動して情報収集し、改めて「情報の共有化(標準化)」に関する可能性について検証を行う。

3.「TAプロジェクト」事業

 分科会活動については、引き続いて各委員会等を通じ会員企業や関連する業界団体から広く情報を収集し、サプライチェーン上に生じている新たな課題に関して適宜分科会を設置し、課題解決に取り組んでいく。

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会

事業運営委員会では協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報調査活動を実施する。

(1)令和3年度事業計画の実施状況の確認及び次年度事業計画の立案
当該年度事業活動の実施状況を確認すると共に次年度事業計画についての案を事務局並びに理事会に提案する。

(2)広報活動の実施
「メルマガ」「FISPA便り」等による協議会の活動内容及び、業界関連記事等について会員への広報活動を実施する。

(3)各種セミナーの開催
「法律相談セミナー」「事例研究セミナー」「経営トップセミナー」等の開催

(4)産地研修会の実施
繊維製品の生産現場の実情を理解し、「モノ作りの大変さ」「加工のプロセス」「情報共有の重要性」等について学ぶことを目的とした研修会を実施する。

2.取引改革委員会

取引改革委員会では繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行う。また、「取引の適正化」を図るため、諸官庁及び関連する業界団体と連携強化に努め、「ガイドライン」の普及・啓発活動を推進し、取引の適正化を進める。

(1)「ガイドライン」普及啓発活動の実施協力
   1)関連業界団体及び産地・産元企業への「ガイドライン」の説明会開催
   2)団体傘下の企業への「ガイドライン」についての実施状況に関する聴き取り調査
   3)実施状況を幅広く把握する為、聴き取り調査訪問先の拡大 (団体傘下企業への訪問件数:平成28年17社→令和2年22社)

(2)適正取引の推進
業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進。
   1)「歩引き」取引の全廃と手形取引の適正化に向けた活動 関係する業界団体、及び経済産業省との連携強化に努め、「歩引き」取引の全廃に向けた具体策の立案と実施を進める。 また、手形取引の適正化についての検討を行う。
   2)「基本契約書」の締結を推進する活動
   3)「発注書」の発行及び入手を推進する活動
  4)「取引相談室」の有効活用に向けての周知活動

Ⅳ.令和3年度組織編成