Ⅰ.平成28年度事業報告

 平成 28 年度は、時代に対応した取引のルールを定めた「取引ガイドライン」(以下 「ガイドライン」とする)を基本に、繊維ファッション産業の適正化を目指した構造改革の推進してきた。具体的には、地道な取り組みである「取引の適正化」事業の推進とこれからのグローバル経済への対応を見据えた「情報の共有化」事業の推進である。

 現在、「TA プロジェクト」の活動を基軸に、繊維ファッション産業界の全体最適を目指した SCM 構築を図るために注力しているところである。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

 「取引の適正化」事業では、適正取引に関する「聴き取り調査」の実施と普及啓発活動を実施 した。「聴き取り調査」では、例年通り、「ガイドライン」の実践・進捗状況、具体的には「(売買)基本 契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況及び計画情報共有の実情等の調査、並びに「歩引き」取引の実情、について「定点観測」として調査を行った。また、新たに「手形取引」の状況につ いての調査も行った。平成 26 年から実施している産地を対象とした調査は、対象先を更に拡大し 「日本毛織物等工業組合連合会」「日本絹人繊織物工業組合連合会」「日本綿スフ織物工 業組合連合会」傘下の産地企業合計 17 社について実施した。

(1)「聴き取り調査」の実施

1)調査概要

①調査実施時期:平成 28年5 月~8 月
②調査内容:
 ・「ガイドライン」の実践・進捗状況
 ・「歩引き」取引の有無と実情
 ・「手形取引」の状況
 ・産地における「基本契約書」の締結状況 その他
③調査対象企業:

「経営トップ合同会議」参加企業(63 社)及び関連団体傘下企業(17 社)
計 80 社(ユニフォーム関連企業 13 社は下記表の業種ごとに加えている)

 

2)調査結果要旨

 契約書締結の重要性を理解した企業が増え、結果として締結率が上がっているものと判断できる。ただし、「基本契約書」の締結内容等については、「経営トップ合同会議」参加企業と非参加企業との温度差も大きく、「ガイドライン」に対する理解と浸透の差がそのまま反映しているものと考えられる。

 特に「基本契約書」締結の条文等は、買い手側の書式に基づくものが殆どであり、提示される内容は、比較的買い手側に有利な場合が多い。そのため、当協議会では、対等な立場で取引条件を取り決めている「ガイドライン」を基本に締結することを前提としており、「基本契約書」の条文に「繊維産業流通構造改革推進協議会が取り決めた『取引ガイドライン』を順守する」の一項を加えることを推奨している。

 「歩引き」取引については調査を進めて5年が経過した。繊維産業に関わる企業では「歩引き」取引は「代金の減額を誘発する要因になりかねない」等の行為とも受け取られ、不透明で不適格な取引形態であり、今日のビジネスには相応しくない取引形態であることは十分認識している。既に、「経営トップ合同会議」参加企業は廃止に向けての具体的な行動をおこしている。一方、産地や非参加企業の中には常習的に「歩引き」を実施している企業が多く、依然として根深い問題として残っている。

 「手形取引」の実情については、決済方法が現金決済に変わりつつあるが「手形決済」は依然として多くの企業間で使用されている。下請法対象企業との手形支払は下請法で90日以内と定められており、支払期日については遵守されている。下請法対象外企業との取引では手形支払期日150日以上の決済もあった。大きな潮流としては、手形から現金化になっており、「手形決済はもはや前時代的」(テキスタイル)との意見や、電子決済の割合も増加しており、移行準備中の企業もあった。

 なお、今調査では、一部産地で販売先から手形決済を「期日指定現金」にすることを告げられ、手形から現金に移行する際、1~5%程度の高い値引きをされることがあった。この場合は「値引き」ではなく「歩引き」に該当し、「下請法」で定めるところの親事業者が行った場合には、明確に「下請法」で禁止されている「下請代金の減額」に該当し違反である。
さらに、「期日指定現金」は与信面で手形決済よりもかえって不安定な取引との指摘や電子債権の増加は「事務手続きが複雑なため、事務処理が煩雑になった」との意見もあった。

(2)「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」の策定と実施

 繊維業界は、紡績や製糸、製織・編立、染色・加工、縫製、アパレルといった長いサプライチェーンを有しており、サプライチェーン全体での取引の適正化が産業全体の競争力強化に寄与するものであり、サプライチェーンを構成する各企業がその重要性を理解し、不断に努力を行うことが求められている。

 当協議会では、日本繊維産業連盟と協同で適正取引の推進を一層進めるため、サプライチェーン全体の取引適正化に向けた活動を充実すべく、平成29年3月、「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を策定し、実施に向け活動を開始した。(参考資料1)

(3)「歩引き」取引の廃止宣言と普及啓発活動の推進

 「聴き取り調査」結果にもあるように「歩引き」取引が未だに多く存在していることを踏まえ、繊維産業から「歩引き」取引をなくすため具体的な行動を起こした。一つは、平成28年11月開催の「第17回経営トップ合同会議」で「歩引き」取引を繊維産業界全体の問題として捉え、参加企業は再度「歩引き」取引の廃止を宣言すると共に、販売先、仕入先に対して
「歩引き」取引廃止の要請を行った。
 
 また、平成29年3月には、日本繊維産業連盟と協同で「『歩引き』取引廃止宣言及び要請のお願いについて」を作成し、併せて経済産業省製造産業局長名での「繊維ファッション業界における『歩引き』取引廃止宣言へのご協力依頼について」を、全国の繊維産業事業者、約4,600社に郵送し「歩引き」取引廃止の取り組みを行った。(参考資料2)

2.情報の共有化」事業

 「情報の共有化」については「経営トップ合同会議」でも討議され、「業界標準」構築の重要性に異論はなかったものの実施されることはなかった。その事由は、各企業とも生産業務だけでなく財務、物流等自社のシステム構築が既に出来上がり、使い勝手にも慣れ、企業からすれば現在のシステムを変えてまで導入するメリットが見当たらないことや標準化に対する思いそのものも強く感じてはいなかったこと等があった。
このことは、繊維業界で過去幾度も標準化事業に挑んではきたが、未だ実現出来ていない要因として、現在でも大きな壁として立ちはだかっている。

 28年度は、再度、課題である「標準システム導入の前提ともなる製品品番コード利用」の検討を進め、将来、業界全体で製品品番に紐づけられた情報「データベース化」の運用可能性について討議をした。
また、製品品番コードの標準化に関しては、経済産業省の立ち上げた「アパレル・サプライチェーン研究会」の報告書にもその重要性が明記されており、当協議会の情報化事業として、経済産業省とも連携を行いながら標準化に向けた検討を行った。

 「SCM統一伝票」は平成22年に運用を開始して以来、伝票の採用拡大を目指してきた。しかしながら、伝票入力機器としてのドットプリンターが生産打ち切りとなりメンテナンスが出来ないこと、紙製複写の統一伝票の在庫減少と各社がペーパーレス化進めていることを踏まえ、電子化・PDF化を進め、平成29年度からの運用開始に向けて準備を行った。

3.TAプロジェクト事業

(1) ユニフォーム分科会

1)普及啓発活動の実施

 ユニフォーム分科会参加企業、レディースユニフォーム協議会(LU協)、日本ユニフォームセンター(NUC)、日本被服工業組合連合会(日被連)、百貨店法人外商部等のそれぞれが「ガイドライン」説明会を実施した。

  また、ユニフォーム分科会に百貨店法人外商部として新たに下記の企業が参加した。この結果、東西の百貨店法人外商部が一堂に会して議論を行う体制が整うこととなった。
 ・株式会社近鉄百貨店・株式会社東急百貨店・阪急百貨店ユニフォーム株式会社

2) エンドユーザーの取引における基本契約書の策定

 ユニフォーム業界ではエンドユーザーと取り交わす基本契約書の不備によるトラブルも多く、特に公開入札時におけるデザインの意匠権、サンプル費用の負担等については、エンドユーザーが示した価格の基準も曖昧なまま、意向に従わざるを得ない状況にある。

 このようなことを踏まえ、エンドユーザーとの取引(B to C)における基本契約書が必要であるとのことから、ユニフォーム業界におけるエンドユーザーとの「基本契約書(例)」を策定した。なお、策定にあたっては業界内の企業間(B to B)でも使用できることを前提としている。

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会活動

 事業運営委員会では協議会の運営強化や事業内容の検討立案と広報調査活動を実施した。

(1) 平成28年度事業計画の実施状況の確認及び平成29年度事業計画の立案

(2) 広報活動の実施
 「メルマガ」32回、「FISPA便り」35回の配信を実施。協議会の活動内容及び業界関連記事等について会員への広報活動を行った。

(3) 各種セミナーの開催

1)「経営トップセミナー」の開催
開催日時: 平成29年3月9日(木)15:00~16:40
開催場所: TFTビル東館9F
演  題: 「グローバリズムの終焉と日本の『国民経済』」
      株式会社経世論研究所 所長 三橋貴明 氏
      参加者数:59名

2)第1回「事例研究セミナー」の開催
開催日時: 平成28年7月21日(木)14:00~16:00
開催場所: TFTビル東館9F
演  題: 「最近の日本における消費スタイル変化〜2015年NRI生活者1万人アンケート調査結果から〜」
      株式会社野村総合研究所消費サービス・ヘルスケアコンサルティング部 
      上席コンサルタント日戸浩之氏
      参加者数:43名

3)第2回「事例研究セミナー」の開催
開催日時: 平成28年9月8日(木)14:00~15:30
開催場所: TFTビル東館9F
演  題: 「『生活製品課』のミッションと『アパレル・サプライチェーン研究会』報告書」
      経済産業省 製造産業局 生活製品課 課長補佐 長谷川 貴弘 氏
      参加者数:62名

2.取引改革委員会活動

 取引改革委員会では繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行った。また、「取引の適正化」を図るために取り決めた「取引ガイドライン」に関する普及啓発活動の実施と諸官庁及び関連する業界団体と連携強化に努め取引の適正化を進めてきた。

(1)「ガイドライン」普及啓発活動の実施
 「取引ガイドライン」の内容の理解が、当協議会に参加していない各産地企業では進んでいないことから、平成28年度は関連業界団体の協力を得て、積極的に産地・産元企業への説明会を開催した。主な実施先は下記の通りである。

1)日本絹人繊織物工場組合連合会・傘下の8地域(桐生、十日町、西陣、富士吉田、丹後、八王子、福井、石川)、日本綿スフ織物工業組合連合会・傘下の1地域(浜松)

2)産地における聴き取り調査対象先拡大
 業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進を行うべく、産地における聴き取り調査先を拡大した。(前年9社→17社)

(2)適正取引の推進
 業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みを行った。

IV.平成28年度活動報告一覧

PDF 平成28年度 活動報告一覧 【→PDFで閲覧する

PDF 平成28年度 収支決算報告 【→PDFで閲覧する

V. 平成28年度組織編成