Ⅰ.令和元年度事業報告

 令和元年度は、繊維ファッション産業の適正化を目指した構造改革の推進を掲げ、時代に対応した取引のルールを定めてきた「取引ガイドライン」(以下 「ガイドライン」とする)を基本に、地道な取り組みである「取引の適正化」事業を推進した。「取引ガイドライン」については、改定した「取引ガイドライン第三版」に加え、3年目となった「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を含め、更なる周知・啓蒙活動に取り組んだ。「情報の共有化」事業では、「コネクテッド・インダストリーズ」等、新たなビジネスモデルが生まれる可能性を見据えた検証を開始した。

 現在、「TAプロジェクト」の活動を基軸に、繊維ファッション産業界の全体最適を目指したSCM構築を図るために注力しているところである。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

 「取引の適正化」事業では、適正取引に関する「聴き取り調査」の実施と普及啓発活動を実施した。今回の調査では例年通り、「ガイドライン」の実践・進捗状況、具体的には「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況、「歩引き」取引の実情、「手形取引」の状況について「定点観測」として調査を行った。また新たに「自主行動計画」の進捗やCSRの取り組み状況についての調査も実施した。

 また、平成26年から実施している産地企業の「聴き取り調査」は前年比7社増の30社で実施した。関連する団体は「日本毛織物等工業組合連合会」「日本絹人繊織物工業組合連合会」「日本綿スフ織物工業組合連合会」「日本靴下工業組合連合会」であり、今年度は新たに「日本アパレルソーイング工業組合連合会」が加わった。

 以下は調査結果概要である。

(1)「聴き取り調査」の実施

1)調査概要

①調査実施時期:令和元年5月~9月
②調査内容:
・「取引ガイドライン」の実践・進捗状況
・「歩引き」取引の有無と実情
・手形取引・決済方法の実情
・「自主行動計画」の進捗状況
・CSRの取り組み状況
・産地における取引の実情

③調査対象企業:

「経営トップ合同会議」参加企業(61社)
及び関連団体傘下企業(30社)
計91社

「経営トップ合同会議」参加企業(61社)及び関連団体傘下企業(30社) 計91社

(2)調査結果要旨

 参加企業においては「基本契約書」は概ね締結している。一方、産地企業では締結率においてばらつきが大きく、大手取引先とのみ締結している企業や昔からの信頼関係があるとの理由から締結していない企業も多い。ただし、参加企業、産地企業に拘わらず新規取引先については「基本契約書」締結を必須条件としている企業も増加している。

 当協議会では「ガイドライン」の普及活動を通じて、「基本契約書」締結の重要性を最優先事項と位置づけている。「基本契約書」は契約関係の存在を証する機能があり、水掛け論的な紛争を防ぐ為には、契約関係があることならびに、その対象等の明記が必要である。参加企業では契約書締結の重要性の理解は進んでおり、また産地企業においても契約書の締結率は上昇している。

 「歩引き」取引については調査を進めて8年が経過した。「歩引き」取引は「代金の減額を誘発する要因になりかねない不透明で不適格な取引形態」であるとし、平成22年の「経営トップ合同会議」で「歩引き」取引の廃止を宣言し、更に平成29年には、日本繊維産業連盟と連名で「『歩引き』取引廃止宣言及び要請のお願いについて」を経済産業省からの同趣旨の書面を添えて出状し、廃止に向けた活動を加速している。

 これらの活動の結果、「歩引き」取引が今日のビジネスには相応しくない取引形態であるとの認識は徐々に各企業に浸透しつつあり、廃止に向けて具体的な活動をおこしている企業は増加している。

 ただし、非参加企業の中には常習的に「歩引き」を実施している企業も多くあり、依然として根深い問題として残っている。今後も、非会員企業ならびに産地における「歩引き」廃止に向けた活動を粘り強く行っていく。

 決済方法については、現金決済(期日指定現金を含む)の比率がここ数年で急速に高まりつつある。ただし、現金化の流れの中では「期日指定現金」の比率も増加しており、これについては担保がないことなど、与信管理上の課題が残っている。「手形決済」は依然として残っているが、サイトの短縮化の傾向は見てとれた。電子決済(電子債権)の割合も年々増加しており、移行準備中の企業も見られる。繊維業界では下請法での手形支払は90日以内と定められており、支払期日は遵守されている。下請法対象外企業との取引では、サイトは概ね120日以内に収まっており、手形支払期日150日以上のサイトも残っているものの長期手形の比率は減少している。

 全体としては、下請法の枠内での違反事例は見られないものの、下請法枠外の取引においては「歩引き」や長期手形など、問題となる商慣習が多く残っている。商取引の適正化に向けてはどう是正していくかが依然として残る課題である。

2.情報共有化事業

 「情報の共有化」事業については、これまでの経緯を踏まえ、その方向性について改めて再検討を行なうべく、経営トップ合同会議参加企業に対するアンケート調査を実施した。

 アンケートでは、各社におけるECビジネスの現状や課題、また、IoTの活用状況や今後の展望等について調査を行い、その結果、ECビジネスについては6割の企業が行っており、IoTについては5割の企業が活用中、または活用に向け検討中であることが分かった。

 現在、官民で提唱している「コネクテッド・インダストリーズ」の推進による付加価値の創出に対してIoT化は不可欠であり、その理解や啓発を行うことは重要であると言える。

 これらを踏まえ、「情報の共有化」事業では、IoTやビッグデータ、AI等を理解し知識を深めることを目的とした「情報化勉強会」を立ち上げ、具体的な活動を開始した。

3.TAプロジェクト事業

(1) 取引適正化推進分科会活動報告

 近年、国内の繊維ファッション業界でも大企業を中心として各企業単位でCSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みが始まっている。

 国際的には、平成25年のバングラデシュにおける「ラナ・プラザ」ビルの崩壊事故を契機に、国際的なサプライチェーンを有するアパレル企業に対し、新興国・途上国の受注企業における人権や労働環境等の問題に係る責任が問われることとなった。さらに、平成27年のG7エルマウ・サミット首脳宣言で「責任あるサプライチェーン」が掲げられ、平成29年2月、OECDにおいて、「衣類・履物セクターにおける責任あるサプライチェーンのためのDDガイダンス」が策定・公表され、「サプライチェーンの社会的責任」が国際的な潮流となった。

 国内におけるCSRに対する取り組み方については、法令遵守等、取引適正化は避けて通れない重要部分である。そのようなことから、将来的には取引適正化についての企業認証制度も視野に入れた検討が必要となってきている。
 
 このような国際的な潮流も踏まえつつ、「安心・安全な取引」を目指し、更なる取引適正化を進めるために、「取引適正化推進分科会」を平成31年4月より立ち上げ、昨年12月まで5回の分科会を行った。

1)検討課題

 分科会では、日本企業が世界的にはCSRに対する取り組みが遅れている現状を踏まえ、まずCSRの歴史的背景を確認した。繊維業界では「ラナ・プラザ」ビル崩壊後、NGO団体が日本のアパレル企業の下請工場における違法な長時間労働や罰金制度、労働環境等の問題点を指摘するなど、サプライチェーン全体の社会的責任を追及するという事象が相次いで起こり、サプライチェーンにおける「発注企業の社会的な責任」が問われるようになった。昨年には、繊維産業技能実習協議会が「繊維産業における外国人技能実習の適正な実施等のための取組」の中で「発注企業の社会的な責任」を今後取り組むべき項目として明記している。

 また、経済産業省の「未来志向型の取引慣行に向けて」(世耕プラン)を受けた取引適正化に関する取組も確認した上で、以下の内容を検討項目とした。

2)検討項目
 ・適正な取引の定義について
 ・適正な取引の評価方法について
 ・CSR調達について

 分科会では、新たに策定した「取引ガイドライン第三版」を基本に置き、あくまでもそれを踏まえた「取引適正化」を進めることとした。他方、適正な取引の評価方法に関しては、取引自体、企業同士が相対で行うものであるため、いかにして第三者が評価を下すかといった課題が残った。また、CSR調達に関しては日本アパレル・ファッション産業協会がサプライチェーンである工場に対する工場監査項目の標準化を進めており、その状況を見守ることとした。

 現在分科会では、事務局より提案した「取引ガイドライン」に準拠した「チェックシート」案とその運用フロー案について検討を行なっており、課題である評価方法を含め、継続して議論を進めている。

 

(2)ユニフォーム分科会活動報告

 ユニフォーム分科会では、業界で法令違反事例が発生したことを受けて、再発防止に向けた具体策を検討するにあたり、業界が抱えている課題や当協議会として果たすべき役割を探るべく、会員企業に対して個別にヒアリングを行った。

 すでに各企業単位ではホームページ上に違反行為の「再発防止策」を掲載し実行していることから、ヒアリングではその進捗状況を確認した上で、分科会委員の全企業において「法令遵守」を共通認識とするために、昨年7月に「ユニフォーム分科会・全体会議」を開催した。

 会議では、日本ユニフォームセンター(NUC)と当協議会の連名で作成した文書「『独占禁止法』等法令遵守の再確認について」を参加者全員で確認、承認され、分科会委員企業宛に郵送した。

 また、日本ユニフォームセンター(NUC)では、昨年9月、ホームページに「NUCからのお知らせ」としてこの文書を掲載、併せて11月には発行する会員向け情報誌「ザ・ユニフォーム」にも掲載し、周知した。

文書の概要は以下の通り。
1)協議・情報交換等に係る禁止事項
  ・価格に関する事項
・数量に関する事項
・販売先、販売地域、販売地域戦略、顧客戦略等に関する事項
・官公庁及び民間企業の発注に係わる入札・見積り合わせ等における、供給予定者や供給予定 価格その他受注意欲・戦略・政策等に関する事項
・その他独占禁止法に抵触するおそれのある事項
2)防止策の実施
3)研修・セミナーの開催

 

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会活動

事業運営委員会では協議会の運営強化や令和元年度事業計画の実施状況の確認及び令和2年度事業計画の立案と広報調査活動を実施した。

(1)「事業運営委員会」開催
 第1回:令和元年6月4日  第2回:令和元年12月3日

(2)広報活動の実施
 「FISPAニュース」39回、「FISPA便り」34回の配信を実施。協議会の活動内容及び業界関連記事等について会員への広報活動を行った

(3)各種セミナー、研修会の開催

1)「第1回事例研究セミナー」の実施
   開催日時:令和元年7月11日(水)14:00~15:40
   開催場所:TFTビル東館9階 909研修室
   演  題:「サスティナビリティ経営による持続的成長に向けて」
  ~SDGs、ESGへの取組に向けた方策~
             株式会社野村総合研究所 伊吹英子氏
   参加者数:52名

2)「第2回事例研究セミナー」の実施
開催日時:令和元年10月8日(木)15:00~16:40
開催場所:TFTビル東館9階 909研修室
演  題:「『実践編』サスティナビリティ戦略と経営・事業の統合に向けて」 
~マテリアリティ特定・戦略的ESG情報開示・統合報告の方法論~
                  株式会社野村総合研究所 伊吹英子氏
    参加者数:37名

(4) EDI標準メッセージの管理について
 「TAプロジェクト繊維標準メッセージ」及び「繊維産業EDI標準メッセージ」の維持管理業務を行った。

2.取引改革委員会活動

繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行った。諸官庁及び業界団体の情報交換と連携強化に努め取引の適正化を進めてきた。

(1)「取引改革委員会」開催:
 第1回:令和元年6月18日 第2回:令和元年12月4日

(2)「ガイドライン」普及啓発活動及び適正取引推進活動の実施

1)取引適正化説明会実施
関連業界団体の協力を得て、産地・産元企業に対して説明会を実施した。
4/10 インテリアファブリック協会第1回説明会 (東京)
5/22 インテリアファブリック協会第2回説明会 (東京)
5/23 (株)サンペックスイスト(現(株)サーヴォ) (東京)
6/24 日本寝具寝装品協会 (東京)
8/28 日本染色協会 (大阪)
9/7   三重県衣料縫製工業組合 (三重)
12/17  大阪府被服工業組合 (大阪)

2)産地における聴き取り調査
業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進を行うべく、産地における聴き取り調査を実施した。
  
3)自主行動計画フォローアップアンケート
 昨年に引き続き、関連団体傘下会員に対し自主行動計画の進捗状況についてアンケート調査を実施した。

(3)業界団体間での情報交換
 各団体が抱える課題・問題点等、現況について各団体間での意見・情報交換を行った。

4.活動状況一覧

2019活動報告

 5. 令和元年度組織編成