Ⅰ.令和2年度事業報告

 令和2年度は、繊維ファッション産業の適正化を目指した構造改革の推進を掲げ、改訂発行した「取引ガイドライン第三版」(以下 「ガイドライン」とする)、並びに「自主行動計画」を基本に、「取引の適正化」事業の推進を目指した。しかしながら、年初に発覚した新型コロナウイルスの感染拡大の影響で制約を受けるなかでの事業活動となった。

 今回で15回目となる「聴き取り調査」については、難しい条件のなか開始時期を遅らせ、7月から9月にかけて実施した。また、「自主行動計画」に関しては4回目のフォローアップ調査を行い、更なる周知・啓蒙活動に取り組んだ。

 一方、「ガイドライン」説明会は感染拡大の影響で1回の開催にとどまり、「情報の共有化」事業は開催を見送った。

 現在、「TAプロジェクト」の活動を基軸に、新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、繊維ファッション産業界の全体最適を目指したSCM構築を図るために注力しているところである。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

「取引の適正化」事業では、新型コロナウイルス感染拡大のため十分な普及啓発活動ができないなか、適正取引に関する「聴き取り調査」は実施した。今回の調査では「ガイドライン」の実践・進捗状況、具体的には「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況、「歩引き」取引の実情、「手形取引」の状況等について「定点観測」として調査を行った。また「自主行動計画」の進捗やCSRの取り組み状況についての調査も行い、新型コロナウイルス拡大に伴う取引への影響についても可能な範囲で調査を行った。
また、平成26年から実施している産地を対象とした「聴き取り調査」も本年で7回目となり、本年の産地における「聴き取り調査」は22社で実施した。
以下は調査結果概要である。

(1)「聴き取り調査」の実施

1)調査実施時期:令和2年7月~9月

2)調査内容:
 ①「取引ガイドライン」の実践・進捗状況
 ②「歩引き」取引の有無と実情
 ③手形取引・決済方法の実情
 ④「自主行動計画」の進捗について
 ⑤CSRの推進状況
 ⑥新型コロナウイルス感染拡大が取引にもたらした影響
 ⑦産地における取引の実情について(産地)

3)調査対象企業:

 

(2)調査結果要旨

参加企業においては「基本契約書」は概ね締結している。一方、産地企業では締結率においてばらつきが大きく、大手取引先とのみ締結している企業や昔からの信頼関係があるとの理由から締結していない企業も多い。ただし、参加企業、産地企業に拘わらず新規取引先については「基本契約書」締結を必須条件としている企業も増加している。

当協議会では「ガイドライン」の普及活動を通じて、「基本契約書」締結の重要性を最優先事項と位置づけている。「基本契約書」は契約関係の存在を証する機能があり、水掛け論的な紛争を防ぐ為には、契約関係があることならびに、その対象等の明記が必要である。参加企業では契約書締結の重要性についての理解は進んでいるが、産地企業においては、未だ十分理解されているとは言えない状況である。

「歩引き」取引については調査を進めて9年が経過した。「歩引き」取引は「代金の減額を誘発する要因になりかねない不透明で不適格な取引形態」であるとし、平成22年の「経営トップ合同会議」で「歩引き」取引の廃止を宣言し、更に平成29年3月の日本繊維産業連盟と連名で「『歩引き』取引廃止宣言及び要請のお願いについて」を経済産業省からも同趣旨の書面を添えて出状し、廃止に向けた活動を加速している。

これらの活動の結果、「歩引き」取引が今日のビジネスには相応しくない取引形態であるとの認識は徐々に各企業に浸透しつつあり、廃止に向けて具体的な活動をおこしている企業は増加している。

ただし、非参加企業の中には常習的に「歩引き」を実施している企業も多くあり、依然として根深い問題として残っている。今後も、非会員企業ならびに産地における「歩引き」廃止に向けた活動を粘り強く行っていく。

決済方法については、販売先、仕入先を問わず、現金決済の比率(「期日指定現金」を除く。以下同様)は年々高まっている。本年度は参加企業においては販売先、仕入先とも現金決済の割合が平均6割程度となっており、「手形決済」の比率は年々減少している。一方産地においても販売先、仕入先とも現金決済の比率は8割を超えている。手形のサイトについては、参加企業においては概ね60日~120日に収まり、平均90日程度であるが、一部長期サイトも残っている。電子決済(電子債権)の比率は引き続き増加している。なお、「期日指定現金」については、担保がないことなど、与信管理上の課題があるなど問題点も指摘されている。なお、下請法における手形支払は90日以内と定められており、その支払期日は遵守されている。

全体としては、下請法の枠内での違反事例は見られないものの、下請法枠外の取引においては「歩引き」や長期手形など、問題となる商慣習が多く残っている。商取引の適正化に向けてはどう是正していくかが依然として残る課題である。

 新型コロナウイルス感染症の影響について(参加企業)、主な内容は以下の通りである。
[対策]
・在宅勤務、時差通勤、交代勤務の実施 
・不要不急の出張禁止テレワーク・Web会議の実施
・消毒・マスク着用など感染予防対策の実施
[取引に関する影響]
・納期の延長や猶予などを販売先、仕入先に依頼
・顧客側の在宅勤務や休業による営業活動制約により、商談進捗への影響があった
・販売先から支払いサイト繰り延べの要望
・販売先より納品の繰り延べ、当社マージンを下げて欲しい等の要請   
[課題・意見]
・コミュニケーション不足が原因となりノウハウの継承が課題となっている    
・在宅勤務は仕事内容を見直すよい機会。生産性向上、働き方改革に活かしていきたい
・テレワークにより業務スピード、作業効率化がすすんでいる。

ただし、テレワークでは沈黙している人への勤務評価が難しい面がある 
また、産地ではほとんどの企業で売上が激減。 以下主な意見。

 ・催事や行事、展示会、即売会がなくなることによる売り上げ減少(複数)
 ・顧客への訪問が制限されることで新規商売が減少。インバウンドが無くなり定番品の受注が大幅減
 ・コロナ禍を機に自主廃業した先、もしくは廃業予定の企業が増えている
 ・下請の注文がほとんどなくなった
 ・発注キャンセルや納期猶予依頼はないが、それが仇となって販売在庫が積み上がっている
 ・防護服の受注により、持ちこたえている(複数)が、今後(10月以降)については不明
 ・個人事業主の中には持続化給付金で辛うじてつないでいるものも多く、今後が懸念される
 ・テレワークにより、交通費、場所代などの経費節約効果があった
 ・コロナ禍はビジネススタイルの見直しの切っ掛けにはなる
 ・助成金等の活用による新たな投資も検討し、コロナ以降に備えている 

2.「情報の共有化」事業

 「情報の共有化」事業については、「コネクテッド・インダストリーズ」の推進による付加価値の創出を踏まえ、IoTやビッグデータ、AI等を理解し知識を深めることを目的とした「情報化勉強会」を昨年より立ち上げ、具体的な活動を開始したが、年初から新型コロナウイルスが発生し、感染拡大防止の観点より、予定していた「情報化勉強会」の開催を見送った。

3.「TAプロジェクト」事業

(1)取引適正化推進分科会活動報告

昨年度に立ち上げた分科会では、「安心・安全な取引」をキーワードに、更なる取引の適正化を目指して、今年度も継続して議論を進めた。

1)検討課題
 「取引適正化分科会」では、適正な取引を行っている企業を第三者が認証することが出来ないか、ということから議論を開始した。そこで改めて「適正な取引」の定義について議論をし、あくまでも「取引ガイドライン」を基本に置いて進めていくことを共通の認識とすることとした。その上で、各企業がどの程度、適正に取引を行っているかを可視化するため、「取引ガイドライン チェックシート案」を作成、チェックシートに基づき自己診断を行い、その結果を点数で評価する運用方法を提案した。チェックシートの内容については、「聴き取り調査」で行っている項目を必須項目、「自主行動計画」にある項目を任意項目とした。

 次にチェックシートの運用方法について議論したが、当初から懸念した通り、それぞれ相対で行っている取引を第三者が認証することには無理があるとの指摘を受け、代わって企業自らが「ホワイト宣言」を行う案を提案した。しかしながら単に企業が宣言することだけでは世間に対する訴求が弱いという意見があり、宣言に権威付け、お墨付きが欲しいという声が上がった。そのような中、今年に入り内閣府・経済産業省・中小企業庁が働きかけを進めている「パートナーシップ構築宣言」(図2)が発表されたことを受け、業界独自の適正取引のホワイト宣言を行う目的・意義がないのではないかという意見が出た。

 最終的に運用フローA、B(図1)を示し、各企業が選択できる案を提案。
フローA 取引適正化のためのチェックシートを自己評価し改善案を策定し、SCM推進協議会が聴き取り調査で確認後、企業並びにSCM推進協議会がホワイト宣言をする
フローB 取引適正化のためのチェックシートを自己評価し改善案を策定し、SCM推進協議会が聴き取り調査で確認まではするが、ホワイト宣言は行わない

 しかしながら賛同を得ることができず、引き続き聴き取り調査の内容をブラッシュアップして行うことで、各企業がどの程度適正取引に取り組んでいるかを調査していくこととした。
この結論をもって7回にわたり行ってきた取引適正化推進分科会は終了することとした。 

図1 運用フロー案 A,B
<第7回取引適正化推進分科会資料より>
  

図2 パートナーシップ構築宣言
<第7回取引適正化推進分科会資料より>

2)活動状況

(2)ユニフォーム分科会活動報告

 今年度は「法令遵守」を継続して意識し実行していくため、適時、「取引ガイドライン」、「独占禁止法」、「下請法」、コンプライアンス等に関する研修会やセミナーを開催する予定であったが、年初から新型コロナウイルスが発生し感染拡大防止の観点より、研修会やセミナーの開催は見送り、代わって事務局員が分科会委員企業を個別に訪問、「独占禁止法等法令遵守の為の防止策」の実施状況をヒアリングし、内容を纏めたものを10月に分科会委員の各企業へフィードバックをした。
実施状況の概要は以下の通り。

1)独占禁止法等法令遵守に係わる社内ルール等の整備
2)独占禁止法等法令遵守教育の強化・充実
3)自主申告の促進

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会活動

 事業運営委員会では協議会の運営強化や令和2年度事業計画の実施状況の確認及び令和3年度事業計画の立案と広報調査活動を実施した。

 新型コロナウイルス感染拡大が長期化したことによって、「モノが全く売れない」「海外のロックダウン」「第3波の不安」など苦戦している状況が報告された。一方、ウィズコロナ、コロナ収束後を見据えての発言もあった。

(1)「事業運営委員会」開催
第1回:令和2年12月8日

(2)広報活動の実施
「FISPAニュース」24回、「FISPA便り」25回の配信を実施。協議会の活動内容及び業界関連記事等について会員への広報活動を行った。

(3)EDI標準メッセージの管理について
中小企業総合事業団・繊維ファッション情報センターが維持管理を行っていた「繊維産業EDI標準メッセージ」は、平成14年4月に当協議会に移管され、平成18年4月にRA(小売・アパレル)間の標準メッセージを改訂したが、それ以降は更新を行なわず現在に至っている。当時のEDIの環境と現在のインターネットの環境では大きく違っているため、もしこれを継続するとなると現在のインターネットに準拠させるために、すべてのプロトコルを見直すことになり、かなりの費用が発生する。また、現在この「標準メッセージ」を使用されているということはほとんど聞かないことから、維持管理を見合わせる方向で検討することとした。

2.取引改革委員会活動

繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行った。諸官庁及び業界団体の情報交換と連携強化に努め取引の適正化を進めてきた。

(1)「取引改革委員会」開催:
 第1回:令和2年7月28日 第2回:令和2年12月2日

(2)「ガイドライン」普及啓発活動及び適正取引推進活動の実施

1)取引適正化説明会実施
 本年度は新型コロナ拡大の影響のため十分な活動ができず、下記の1回に留まっている。
令和2年8月26日  チクマ・ニッケグループ (東京・WEB併用)
2)産地における聴き取り調査
業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進を行うべく、産地における聴き取り調査を実施した。
3)自主行動計画フォローアップアンケート
昨年に引き続き、関連団体傘下会員に対し自主行動計画の進捗状況についてアンケート調査を実施した。

(3)業界団体間での情報交換
 各団体が抱える課題・問題点等、現況について各団体間での意見・情報交換を行った。

 新型コロナウイルス感染症拡大による影響について、委員からは、取引上の大きな問題はないが、一部で取引価格の決定・改定に影響があったことや傘下企業の厳しい現状が報告された。

Ⅳ.活動状況一覧

 5. 令和2年度組織編成