Ⅰ.平成30年度事業報告

 平成30年度は、繊維ファッション産業の適正化を目指した構造改革の推進を掲げ、時代に対応した取引のルールを定めてきた「取引ガイドライン」(以下 「ガイドライン」とする)を基本に、地道な取り組みである「取引の適正化」事業を推進した。

「取引ガイドライン」については、新たに「染色加工編」、「縫製業取引編」を加えるとともに、より時代に対応させるべく内容の改定を行い、「取引ガイドライン第三版」として策定した。また、2年目となった「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」については、更なる周知・啓蒙を行いながら、具体的な活動に取り組んだ。「情報の共有化」事業では、ビジネスプロトコルの標準化に向けた取り組みが進展しない中、「Connected Industries」等、新たなビジネスモデルが生まれる可能性も踏まえて、改めて今後の方向性について検証を行うこととした。

現在、「TAプロジェクト」の活動を基軸に、繊維ファッション産業界の全体最適を目指したSCM構築を図るために注力しているところである。

Ⅱ.事業活動

1.「取引の適正化」事業

 「取引の適正化」事業では、「経営トップ合同会議」参加企業(以下 参加企業)を対象とした適正取引に関する「聴き取り調査」の実施と普及啓発活動を行った。今回の調査では例年通り、「ガイドライン」の実践・進捗状況、具体的には「(売買)基本契約書」の締結状況、「発注書」の発行状況、「歩引き」取引の実情、「手形取引」の状況について「定点観測」として調査を行い、新たに「自主行動計画」の進捗状況についての調査も実施した。

 また、平成26年から実施している産地企業の「聴き取り調査」は前年同様23社で実施した。関連する団体は「日本毛織物等工業組合連合会」「日本綿スフ織物工業組合連合会」「日本靴下工業組合連合会」「日本撚糸工業組合連合会」である。

 以下は調査結果概要である。

(1)「聴き取り調査」の実施

1)調査概要

①調査実施時期:平成30年5月~9月
②調査内容:
・「取引ガイドライン」の実践・進捗状況
  a.「基本契約書」の締結 b.「発注書」の発行 c.計画情報の共有
・「歩引き」取引の有無と実情
・手形取引の実情
・「自主行動計画」の進捗状況
・産地における「基本契約書」の締結状況
③調査対象企業:

「経営トップ合同会議」参加企業(61社)
及び関連団体傘下企業(23社) 計84社

*ユニフォーム関連企業13社は上記表の業種ごとに加えている

(2)調査結果要旨

 参加企業では「基本契約書」は概ね締結している。一方、産地企業では締結率にばらつきが大きく、大手取引先とのみ締結している企業や昔からの信頼関係があるとの理由から締結していない企業も多い。ただし、参加企業、産地企業に拘わらず新規取引先については「基本契約書」締結を必須条件としている企業も増加している。

 当協議会では「ガイドライン」の普及活動を通じて、「基本契約書」締結の重要性を最優先事項と位置づけている。「基本契約書」は契約関係の存在を証する機能があり、水掛け論的な紛争を防ぐ為には、契約関係があることならびに、その対象等の明記が必要である。参加企業では契約書締結の重要性の理解は進んでおり、また産地企業においても契約書の締結率は上昇している。

 「歩引き」取引については調査を進めて7年が経過した。「歩引き」取引は「代金の減額を誘発する要因になりかねない不透明で不適格な取引形態」であるとし、平成22年の「経営トップ合同会議」で「歩引き」取引の廃止を宣言し、更に平成29年には、日本繊維産業連盟と連名で「『歩引き』取引廃止宣言及び要請のお願いについて」を経済産業省からの同趣旨の書面を添えて出状し、廃止に向けた活動を加速している。

 これらの活動の結果、「歩引き」取引が今日のビジネスには相応しくない取引形態であるとの認識は徐々に各企業に浸透しつつあり、廃止に向けて具体的な活動をおこしている企業は増加している。

 ただし、非参加企業の中には常習的に「歩引き」を実施している企業も多くあり、依然として根深い問題として残っている。今後も、非会員企業ならびに産地における「歩引き」廃止に向けた活動を粘り強く行っていく。

 決済方法については、現金決済(期日指定現金を含む)の比率がここ数年で急速に高まりつつある。ただし、現金化の流れの中では「期日指定現金」の比率も増加しており、これについては担保がないことなど、与信管理上の課題が残っている。「手形決済」は依然として残っているが、サイトの短縮化の傾向は見てとれた。電子決済(電子債権)の割合も年々増加しており、移行準備中の企業も見られる。繊維業界では下請法での手形支払は90日以内と定められており、支払期日は遵守されている。下請法対象外企業との取引では、サイトは概ね120日以内に収まっており、手形支払期日150日以上のサイトも残っているものの長期手形の比率は減少している。

 全体としては、下請法の枠内での違反事例は見られないものの、下請法枠外の取引においては「歩引き」や長期手形など、問題となる商慣習が多く残っている。商取引の適正化に向けてはどう是正していくかが依然として残る課題である。

2.情報共有化事業

「情報の共有化」事業では、業界標準への最初の取り組みとして、平成22年に「SCM統一伝票」を策定し、引き続き長年に渡りその必要性が論じられてきた「業界標準に基づくITプラットホーム」の構築と具体的な運用について取り組みを行った。標準プラットホーム構築については、各社とも総論では賛成するものの、実際に導入、運用する段階では自社の既存システムとの兼ね合いや、導入費用に対してメリットが殆ど生じない等の理由から実現できず、情報基盤の構築については平成27年に見送った経緯がある。

 またその後、経済産業省が発表した「アパレル・サプライチェーン研究会」報告書での指摘を受け、製品コードやビジネスプロトコルの標準化に向け経済産業省とも連携して取り組み、さらに今年度は副資材コンバーター等にターゲットを絞り、受発注業務を効率的に行うための書式の統一化に向け可能性を検証したが、ここでも業界内から標準化に向けた積極的な意見は聞かれず、標準化への取り組みについても見送ることとした。これらを踏まえ、当協議会では「情報の共有化」事業の今後の進め方について、具体的に再検討することとした。

3.TAプロジェクト事業

(1) ガイドライン検討分科会活動

 「取引ガイドライン第三版」の作成に向けて「ガイドライン検討分科会」を平成29年7月に立ち上げ、昨年3月まで7回の分科会を行った。

 現在の「取引ガイドライン第二版」が平成19年10月に策定されてから11年の年月が経ち、この間ビジネスモデルや商習慣も変化していること、平成28年12月に下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準が改正されたこと、「減額」「買いたたき」「不当な経済上の利益提供要請」など繰り返し見られる行為や、問題ないと認識しやすい行為、また繊維産業の特殊な事例が違反行為に追加されたことを踏まえ、「ガイドライン第二版」では触れていない内容についての議論を進めてきた。

 繊維産業におけるビジネスモデルの中には、サービスなのか業務なのかが判断しにくい事例や今までの「ガイドライン」に記載されている業務条件の一部には時代にそぐわない表記や内容もあり併せて検討を行った。

 昨年2月から進めてきた「縫製業に関するガイドライン」を策定、更には、染色加工業に関するガイドラインについて改定した内容を加え、「取引ガイドライン第三版(案)」として、平成30年11月16日に開催した第19回「経営トップ合同会議」で改定内容についての報告と説明を行い、承認を得た。

1)主な改定内容

  •  前文として、「取引ガイドライン第三版」改訂に関する考え方について記載し、この中で、「歩引き」取引は一切行ってはいけない取引であると定めた。
     また、CSR活動にも触れ、その内容については、「責任あるサプライチェーン」に関する国際的な潮流も踏まえつつ、発注企業は自社に至るまでのサプライチェーン全体における法令遵守、適正な取引条件や労働環境等の確保について十分な確認と考慮すべき社会的責任を有するものであると記した。
     発注企業は自社におけるサプライチェーンに対する責任を積極的に果たすことにより、「エシカル(論理的)」や「サステナビリティ」といった要請に対応する必要があり、各企業が国際標準に照らし合わせた活動を続けていくことが重要であるとした。
     参加企業は、サプライチェーン全体における法令遵守、適正な取引条件や労働環境の確保等について、十分な確認と考慮すべき社会的責任を果たす役割を有していると記述し、発注企業が、自社におけるサプライチェーンにおいて、人権侵害、過酷な労働環境、労働関係法令違反等技能実習の適正な実施について問題がある可能性が認められた場合には、受注者に対して問題の確実な是正を求めることや、問題解決について実施されない場合には発注の停止等の検討も考慮しなくてはならないとした。

  • 従来の「取引モデル編」と「取り決めを行う項目・内容の解説編」を一つに取りまとめ「取引モデル編・標準項目と内容の解説編」とした。
  • 「取引モデル編・標準項目と内容の解説編」では、「直接取引」と「間接取引」とを区分し、それぞれについて「計画情報項目」や「業務条件確認項目」「発注書に記載すべき項目」等の見直しを行い各標準として記載した。
  • 「業務条件確認項目」は従来の「業務条件項目」と「協議・確定すべき標準的内容」に加え内容についての説明文を加えた。
  • 知的財産権の扱いについて、「取引ガイドライン第二版」では業務条件項目として取り扱ってきたが、内容が法令の範囲であり、業務条件項目ではないと判断し、今般の改定に伴い業務条件項目からは除外している。新たに、別立てで「取引モデル編・標準項目と内容の解説編」に「4.繊維産業界における知的財産権の扱いについて」と記載した。商品取引別編の生地取引編を「生地取引・染色加工取引編」と改定した。
  • 「取引ガイドライン第二版」や新たなビジネスモデル、業務かサービスか不明で曖昧な業務、OEM取引を含む間接取引などについて検証し改定を行っている。
  • 平成21年10月の「経営トップ合同会議」で取り決められたTAG業務条件確認項目(TA-量販店)は、GMS各社が取引の適正化について課題解決に取り組んできた結果、TAプロジェクトで取り決めた内容と差異はなくなったとの判断から今回の第三版では記載から除外している。
  • ユニフォーム商品取引「個別契約書」の例を追加している。

2) 活動状況

(2)縫製業ガイドライン検討分科会活動報告

 平成19年10月に策定された「取引ガイドライン第二版」では、その必要性については十分認識しながらも、縫製業との間における取引に関する部分を作成することはできなかった。当時、一部の縫製業界関連団体に「ガイドライン」の作成について働きかけをしたが、諸事情から実現しなかった経緯がある。

 今回は、下請法の運用基準の見直しや、自主行動計画が策定されたこと等、業界内でのコンプライアンスやCSRに対する意識の高まりがある中、経済産業省からの後押しもあり、改めて縫製業界関連団体との間で縫製業との取引に関するルール作りに取り組むこととなった。具体的には縫製業界関連団体2団体と縫製工場7社の協力を得て、「縫製業ガイドライン検討分科会」を立ち上げ検討を行ない、「縫製業ガイドライン」として取りまとめ、「取引ガイドライン第三版」に記載すべく取り組みを行った。

 1) 検討課題

【検討項目】

・基本契約書に関して(縫製業に関わる特徴的な内容を記載)
・発注書に関して(特徴的な内容を記載、例えば、賃加工、有償支給等)
・計画情報項目に関して(特徴的な内容を記載、例えば、賃加工、有償支給等)
・業務条件標準項目に関して(特徴的な内容を記載)
・発注書に記載すべき項目に関して
・委託加工契約書に関して

 2) 活動状況

(3)ユニフォーム分科会

1)活動経緯及び内容

  • エンドユーザーとの取引(B to C)における「基本契約書(例)」を策定し具体的に運用するよう説明会等で周知活動を行った。
  • 「ガイドライン」の普及啓発活動として分科会参加企業や業界団体において「ガイドライン」についての説明会を実施した。また、NUC資格認定制度初級試験に「取引ガイドライン」に関する設問を取り入れた。

Ⅲ.委員会活動

1.事業運営委員会活動

事業運営委員会では協議会の運営強化や平成30年度事業計画の実施状況の確認及び平成31年度事業計画の立案と広報調査活動を実施した。

(1)「事業運営委員会」開催

第1回:平成30年6月9日  第2回:平成30年12月18日

(2)広報活動の実施

「FISPAニュース」34回、「FISPA便り」36回の配信を実施。協議会の活動内容及び業界関連記事等について会員への広報活動を行った。

(3)各種セミナー、研修会の開催

1)「法律相談セミナー」の実施
  開催日時:平成30年7月27日(金)14:00~16:00
  開催場所:TFTビル東館9階 908研修室
  演  題:「民法改正の考え方」
            緒方法律事務所 辯護士 飯野毅一氏
   
2)「事例研究セミナー」の実施
  開催日時:平成30年7月3日(火)15:00~17:00
  開催場所:TFTビル東館9階 909研修室
  演  題:「働き方改革の実現に向けて 
        ~多様性を活かすこれからの職場とは~」
                 株式会社東レ経営研究所 宮原淳二氏
   
3)「経営トップセミナー」の実施
  開催日時:平成31年3月6日(水)15:00~16:40
  開催場所:TFTビル東館9階 909研修室
  演  題:「グローバリズムの奔流の中で~日本の活路はどこにある~」
                       ジャーナリスト 上島嘉郎氏

(4)EDI標準メッセージの管理について

「TAプロジェクト繊維標準メッセージ」及び「繊維産業EDI標準メッセージ」の維持管理業務を行った。

2.取引改革委員会活動

繊維ファッション産業界の各段階間の取引上に生じている課題について調査するとともに、具体的な解決策について検討を行った。諸官庁及び業界団体の情報交換と連携強化に努め取引の適正化を進めてきた。

(1)「取引改革委員会」

 開催:第1回:平成30年6月29日 第2回:平成30年12月11日

(2)「ガイドライン」普及啓発活動及び適正取引推進活動の実施

1) 取引適正化説明会実施
関連業界団体の協力を得て、産地・産元企業に対して説明会を実施した。
10月3日 日本被服工業組合連合会 (福山ニューキャッスルホテル)
10月25日 日本輸出縫製品工業組合 (ホテル阪神大阪)
11月28日 日本撚糸工業組合連合会 (ホテルサンルート小松)
11月28日 日本アパレルソーイング工業組合連合会(朝日生命大手町ビル)

2) 産地における聴き取り調査
業界全体における取引上の不公平・不公正な取引慣行の改善及び課題解決に向けた取り組みの推進を行うべく、産地における聴き取り調査先を実施した。
  
3)自主行動計画フォローアップアンケート
昨年に引き続き、関連団体傘下会員に対し自主行動計画の進捗状況についてアンケート調査を実施した。

(3)業界団体間での情報交換

 各団体が抱える課題・問題点等、現況について各団体間での意見・情報交換を行った。

4.活動状況一覧

 

 5.平成30年度組織編成