FISPA便り「五輪エンブレムに思う」

 2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムが、藍色の市松模様をデザインしたものに決定しました。「地味すぎる」との意見もあるようですが、おおむね歓迎されているようです。江戸時代に広まった「市松模様」と日本の伝統色である藍色を使用したデザインには「江戸の粋」を引き継いだ「日本の粋」が感じられて、好ましいと思います。

 日本で初めて開かれた1964年の東京オリンピック。その時、開会式の入場行進で見た日本選手団のユニフォームをご記憶の方は多いのではないでしょうか。真紅のブレザーと真っ白なパンツが、秋天の青空に映えていました。ブレザーを手掛けたダイドーリミテッドのOBによりますと、大会の組織委員会から内示された色は「江戸紫」だったそうです。しかし、「白地に赤く」の日の丸をイメージした製品が採用されました。日本選手団の一糸乱れぬ入場行進と真紅のブレザーが、今なお、記憶に鮮明に残っているのは、当時、多感な高校3年生だった筆者だけではないでしょう。

 さて、市松模様と藍色です。今後、あちこちにエンブレムが使われ、広く露出する一方、スポンサー企業を通じて具体的な商品が登場することになるのでしょうが、ファッション業界でも、「市松模様」と「藍色」に触発されたデザインの服や柄の商品が開発されるのではないでしょうか。

 藍色と言えば、デニム、ジーンズを想起するでしょう。実際、ジーンズ業界では「ジャパンブルー」といったアピールも行われています。ジーンズだけでなく、藍色の服やインテリア製品、さらには市松模様がブームになるかも知れません。

 そんなことを想像していたら「青は藍より出でて藍より青し」とのことわざがあることを思い出しました。弟子が師匠の学識や技術を超えるという意味です。だとすれば、藍色と市松模様を使ったデザインワークでも「師匠を超える」デザインが生まれることを期待したいところです。もちろん、そうした製品は創造性に優れた「J∞QUALITY」であることが前提になることは言うまでもありません。 

                     (聖生清重)