FISPA便り「TGC体験で思ったこと」

 先月29日の日経MJ紙が一面で報じていた、東京ガールズコレクション(TGC)。主見出しは「今ほしい叶える」、「究極の実演販売」。サブ見出しは「つぶやき1億回」、「動画視聴100万回」、「ネットとライブで拡散」とありました。

 ファッションショーを中心にしたファッションイベントが集中的に行われるファッションシーズン中の3月25日、東京・原宿の国立代々木競技場で開かれた東京ガールズコレクションの模様だけでなく、その人気の秘密に迫った記事でした。これを読んで、最近、ファッションビジネスの現場やファッションショーのあり方で話題を集めている「シーナウ・バイナウ」(見てすぐ買える)を先取りしたイベントであることに、改めて、気づかされました。

 実は、もう6、7年前だと記憶していますが、筆者はある業界トップのHさんと連れだって代々木競技場で開かれたTGCに行ったことがあります。当時のTGCプロジューサー、Nさんから「一度、ご覧ください」とチケットを2枚渡されたのがきっかけです。

 感想?ですか。点滅するスポットライト、モデルやアイドルがステージ上に登場するたびに大歓声があがる。今見た服はネットや店舗ですぐに買うことができる仕組みです。見渡したところ、熱気にあふれた会場で、ダークスーツ姿の大人は筆者達だけ。場違いな感じで、結局、30分ほどで会場を後にしましたが、その時の空気感はいまでも体のどこかに残っています。

 TGCのイベントは、鯖江市、京都市、北九州市などの地方でも開かれる一方、タイ、インドネシアやパリでも開かれただけでなく、2018年5月にはニューヨークの国連本部でショーが開かれるそうです。

 現代の若者は、ファッションへの興味が薄らいでいる、とはファッション消費が不振の理由として、折に触れて指摘されますが、少なくとも「カワイイ」ファッションは東京の若い女性だけでなく、地方あるいは海外でも熱烈に受け入れられていることは間違いなさそうです。

 「シーナウ・バイナウ」で先行する日本。かつて、若い女性の熱気にあてられて、短時間で会場を後にした体験を思い出しながら、かつ「TGCの成功は、消費者が参加するところにある。ITの成果でもある。これはモノ消費ではあるがコト消費そのものなのだろう」などと後講釈しつつ、とかく欧米の後追いと言われる日本のファッションビジネスでの先行事例に敬意を払いたいと思いました。                          

(聖生清重)