FISPA便り「ルームス展に見る今という時代」
ファッションの合同展示商談会のルームスが「ROOMS EXPERIENCE 35 深海」のテーマで去る7日から9日に東京・五反田のTOCで開かれました。かねて、クリエーション色が強い同展。毎回、楽しみで、今回も初日に出かけました。
かつて、展示品の中心だったファッションアパレルの出展が回を追うごとに縮小し、雑貨やアクセサリーが目立つ状況は、今回も変わりませんでした。しかし、会場を回りながら「これが、今という時代の空気なのか」といった印象を感じました。
会場入り口近くで目についたのが、左官職人の手による現代アート。額縁に入った「左官アート」は、いままで見たことのない質感と凹凸や流れるような線が美しい独特な表面感に魅せられました。商業施設や教育関連施設、個人邸も手掛けているそうですが、美術館・博物館にも似合いそうです。アートとしても楽しめ、高級内装材としても効果的だと感じました。こうしたクリエーションワークこそが、ルームスの真骨頂なのでしょう。
しかし、展示商品に目を向けると、様相が変わります。アクセサリー、雑貨の展示スペースが広く、ファッションアパレルはわずかでした。アクセサリー・雑貨の展示面積が増えているのは、ルームス展に限らず、最近のファッション系の展示商談会の傾向ですが、ルームス展がかつてクリエーション色の強いファッションアパレルが主流だった頃を思い出すと、それが時代状況なのかもしれませんが、いささか寂しい気分にさせられました。
そうした中で江戸時代から今日まで、伝統が引き継がれてきた「徳島の藍染」。天然藍で染めた糸を使用した「阿波正藍しじら織」の“ジャパン・ブルー”が目を引きました。藍の栽培から染料づくり、染め、製品づくりまで一貫して行っている「徳島の藍染」。染めの実演もしていて、印象に残りました。
さて、時代の空気です。会場の一角では、お笑い芸人のライブが行われ、多くの観客を集めていました。「お笑いライブ」には驚きましたが、その近くでは複数の占い師が陣取り、さらには、なんとマッサージの実演まであったのです。
現代アート、アクセサリー・雑貨、お笑いライブに占い。全体に「縁日」を想起させる会場のレイアウトと雰囲気、それに「エシカル」コーナー。受付で渡された冊子を見ると、今回のコンセプトは「五感共感空間」と記してありました。
キーワードで言えば、アート、雑貨、手仕事・手技、環境、祭り。それらが今という時代の空気を映しているのでしょうか。
(聖生清重)