FISPA便り「アパレル製品輸出増の『奇策』」

  日本のアパレル企業の成長戦略の方向性は「Eコマースの拡大」と「海外市場の開拓」に収れんされるのではないでしょうか。これに加えれば「飲食業への進出」でしょうか。本業でのクリエーション力、商品力の強化は、もちろん大事ですが、成長には「Eコマース」と「海外」が重要なキーワードであることは繊維専門紙で折に触れ報じられているアパレル企業トップの方針でも伺えます。

 Eコマースはともかく、日本のアパレル製品の輸出は長年の課題です。そこで、改めて、商社業界の関連団体で長年、繊維貿易に携わってきた専門家に、日本のアパレル輸出の実態を調べてもらいました。その結果、外衣の2016年の輸出は、数量では約400万枚、金額では337億4300万円となっていることがわかりました。

 わずかなことはわかっていましたが、この数字をどう見たらよいのでしょう。ちなみに、過去10年の数字を見ると、2016年のアパレル輸出は、金額ベースでボトムだった2012年に比べて約68%も伸びています。理由は分かりませんが、健闘していると言えそうです。

 2016年6月に経済産業省が取りまとめた「アパレル・サプライチェーン研究会報告書」は、アパレル輸出についてこう指摘しています。「日本のアパレル製品が(輸出市場で)市場を確保していくためには、自社の強みを活かせるターゲット選定を行い、現地の消費者の嗜好や競争環境などの調査を行った上で戦略を立て、エージェントの選定から店舗出店や卸し先の判断、現地人材の確保などの実務を進めていく必要がある」。

 上記の数字は、この報告書の前のことですが、報告書が示す方向で動いているのでしょうか。

 そんなこんなの話をしていた時、アパレル輸出のためのビジネスマッチングや展示商談会に何度も汗をかいたくだんの専門家は、ふと、こうつぶやいたのです。「日本のアパレル輸出を増やすためには、つまるところ、輸出できる人材を育成した方が早いかも」。“奇策”でしょうか。もちろん、企業の海外展開は、日本からの輸出より、海外生産・海外販売が戦略の中心になるでしょうが…。

                              (聖生清重)