FISPA便り「技能実習での汚名の返上を」

 恥ずべきことで、その汚名はそそがなければならない、ということに尽きると思います。経済産業省製造産業局が去る23日に省内で開いた第1回「繊維産業技能実習事業協議会」は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律に基づき、技能実習生制度の適正化に向けた繊維業界への周知・徹底を図るほか、技能実習の実施状況の把握や適正な実施のための取り組みを協議する」ものですが、この問題は冒頭に流された世耕弘成経済産業相のビデオメッセージに集約されています。

 発言は、要約すると次の通りです。「外国人の技能実習は繊維業界、特に縫製業で最低賃金の不払い、違法な時間外労働など重大な法令違反が数多く指摘され、業種別で繊維業関係の不正行為は最も多い。外国人実習生を受け入れている企業のコンプライアンスはもちろん、それらの企業に発注する企業もサプライチェーン全体への配慮や、適正な単価での発注など、取引の適正化、健全化に向けて責任を持っていただく必要がある」。

 技能実習の不適切な実施の実態は、実は、繊維ファッション業界人なら耳にしたことがあるのではないでしょうか。2013年にはバングラデシュで縫製工場が5社入居していたビルが倒壊し、1133人もの死者を出し、発注していたブランド企業の責任が問われたことがあります。国内での縫製現場では、そうした悲惨な事故は起こっていませんが、人権を無視したかのような技能実習が行われているのではないか、との疑念はぬぐえないのが現実ではないでしょうか。

  同協議会には日本繊維産業連盟をはじめ繊維関係の36団体、法務省、厚生労働省、実習監理団体関係者、帽子、手袋など15の団体がオブザーバーで出席しました。服飾雑貨をも含めた繊維ファッション業界のすべての業界が出席したことになります。

  ファッションは、人々の気持ちを豊かにするものです。にもかかわらず、「技能実習で法令違反が多いのは縫製業」と名指しされるようでは困ります。というより論外です。まずは、法令違反を起こした個々の事業者が改めることはもちろんですが、発注企業も含めて業界全体で汚名をそそぎ、信頼を回復する必要があります。                         

 (聖生清重)