FISPA便り「アパレル在庫品の行方」

 去る7月下旬に「バーバリー」が約42億円分の売れ残り商品を焼却処分したと報じられました。ファッション業界では、これまでも世界的なファストファッションやスポーツブランドが同様の問題で批判されてことがあります。

 報道以来、アパレルの余剰在庫の処分はどうなっているのだろう。季節性が高く、色、柄、サイズも多く、特に店舗数も膨大なアパレルファッション企業は、発生が避けにくい余剰在庫をどのように処分しているのか、時々、気になっていました。

  「バーバリー」の報道の際、とっさに思い出したのは「社員セール」です。余剰品は、季節の終わりに格安で社員とその家族を対象に販売していました。現役の記者だったころ、取材で訪れたアパレル企業から「社販をしているから、必要なものを買って」とすすめられたことは少なくありません。そして、その社販は売り上げが社員のボーナス原資になっていると聞いて、なるほど、うまい余剰品処分方法だなあ、と感心したことを思い出します。

  しかし、そうした社販ではすべての余剰品を処分できない企業や何よりも「ブランドイメージ」を大事にしているラグジュアリーブランドやデザイナーブランドは、不良在庫の処分に苦労しているであろうことが推測されます。一般アパレルでも社販で捌ききれない在庫は、やむなく焼却処分というケースもあるのではないでしょうか。

  在庫処分と言えば、コンビニや食品メーカーの食品ロス問題があります。コンビニで売れ残った弁当を処分する映像をTVで見た方も多いでしょう。マスコミでアフリカなどでの飢餓と先進国での食品の廃棄ロスが対照的に取り上げられることもありました。大手コンビニは余剰食品を家畜のえさにしたり、バイオガスにするなどの取り組みをHPで明らかにしていますが、食品業界全体ではなお、膨大な量が産業廃棄物として処分されているのではないでしょうか。

  さて、アパレルの余剰在庫ですが、この問題を解決する名案はあるのでしょうか。AIで需要予測を正確に行う。多分、それでも余剰は発生するのではないでしょうか。つまるところ、この問題の明快な解決策は見当たらない。だからこそ、「せめて社販で処分可能」な量に余剰在庫を極小化する生産・販売計画を立てて実行する、と言うことが何より大事なのだと思います。「言うは易く、行うは難し」とのつぶやきが聞こえてきそうですが。      

(聖生清重)