FISPA便り「OPSの生みの親は過剰供給」

 小売業の歴史は、米国で起こった波がその後、日本にも押し寄せるのが常です。加えて、日本の衣料品市場は、過剰供給が常態化していることから、今後、その流れが強まる可能性が強いと思われます。ゲオホールディングスの子会社であるゲオクリアが、去る4月末に横浜市のコーナン港北インター店にオフプライスストア「ラックラッククリアランスマーケット」をオープンしたニュースを聞いて、そう思いました。

 オフプライスストア(OPS)とは、売期を逃したブランドアイテムを仕入れて、メーカー小売価格より低価格で販売する小売店で、自社の商品を販売するアウトレットストアと異なり、他社の商品を仕入れて販売するため複数のブランドを揃えているのが特徴です。

 ゲオクリアがオープンした第一号店の取扱商品は、衣料品、服飾品、キッズ衣料、リビング雑貨など。400坪を超える売場に約50000点以上。国内外のアパレルブランド、アクセサリーなど、メーカー小売価格の20-80%割引で手に入れることができるそうです。ショップのコンセプトは「宝探しのようなショッピング体験」で、ワクワク館を演出しているとのことです。

 日本ではなじみの薄いOPSですが、米国ではすでに百貨店を凌駕しているそうです。商業界オンラインの小島健輔氏のレポートによると、米国では2015年にOPS上位3社合計売上高が百貨店上位3社の売上高を上回り、2018年にはOPSの衣料・服飾雑貨市場に占める売上げシェアは百貨店の14%を引き離して17%に迫っているそうです。

 小島氏は「百貨店の各種セール、OPS、アウトレットまで含めれば、米国ではファッションブランドを正価で購入するのは少数派で大半は何らかのオフプライスで購入していると見るべきだろう」とみていますが、日本市場も似たような傾向なのではないでしょうか。

 OPSが生まれた背景にあるのが供給過剰の常態化です。日本繊維輸入組合がまとめた統計によると、2018年の衣類の国内供給量は39億2186万1000点。この衣類には、下着も含めますが、人口からみて、過剰供給は明らかでしょう。

 売期を逃した衣料品は、アウトレットショップ、ファミリーセールなどで売られるほか、中古衣料として輸出されていると言われていますが、OPSが登場したことで、今後、どう変化するのでしょう。OPSの今後の成長の鍵は過剰供給が続くか否か、にあることだけは確かですが、果たしてどうなるか、大いに注目したいと思います。                

 (聖生清重)