FISPA便り「年賀状あれこれ」

 新しい年も早や1カ月が過ぎようとしています。年始に届いたお年玉付き年賀状の当選番号をチェックしていて、年賀状をめぐる昨今の話題に思いをめぐらせました。「もうやめたい」と思い、実行した人が増えているようですが、その一方では、「やめなければよかった」と後悔している人も少なくないとのニュースも耳にしました。

 年賀状は、現役にとっては、仕事をスムーズに進めるうえで必要な人間関係の維持のために有効な手段でしょう。お世話になった方に新年のごあいさつをすることは自然で好ましい行為ですよね。しかし、現役を引退し、年齢をかさねてくると、年賀状を書いて、ポストに投函する作業は、「面倒だな」と思うようになるのではないでしょうか。

 筆者が現役の記者だった時から、今でもときどき酒席でご高説を拝聴している方は700枚にのぼる年賀状を出し続けています。住んでいる地区の郵便局で扱う年賀状では最高の枚数だそうです。ある時、その方に聞いたことがあります。「そのうち、何人の顔を浮かべることができますか?」。答えは「う~ん…」でした。

 そんな年賀状ですが、ネットで調べてみたら、「年賀状のやめ方」のノウハウ、文例がどっさり出ていて驚きました。失礼のないやめ方、注意する点、やめたい人へのアドバイス、懇切丁寧なサイトの数々です。

 そうなのですが、少数のようですがこんな意見もありました。「今回で年賀状はやめます」と伝えたところ、お付き合いを続けたかった友人、知人からぷっつりと連絡が途絶えてしまった、というケースです。「年賀状はやめます」が「絶交宣言」と受け取られてしまったのです。「やめ方」のサイトにはそうした失敗を回避する方法も載っていますが、つながっていたい人とのつながりまでが切れてしまっては、さびしい限りですね。

 現代年賀状事情はともかく、筆者がいただく年賀状で秀逸なものは住金物産(現・日鉄物産)の元副社長で繊維ファッションSCM推進協議会経営トップ合同会議の初代座長だった大塚隆平さんからのものです。力強く、達筆な四字熟語が他の年賀状を圧倒しています。大塚さんの年賀状には、毎年、熟慮に熟慮を重ねたと思われる創作四字熟語が記されています。今年は「令和迎春」でした。大塚さんが今という時代の空気を歴史の流れの中でどうとらえていて、その年に何を願っておられるのか、「創作四字熟語」を毎年、楽しみにしています。

 年賀状あれこれで思ったことは、年賀状を差し上げる場合の内容はもちろん、「やめ方」も、その人の人柄がにじみ出ているのではないか、ということですが、さて、いかがなものでしょう。  

               (聖生清重)