FISPA便り「気になる日本経済の格差」

 百貨店売上高、アパレル企業や小売業の業績などのニュースに接すると、コロナ禍は、依然として続いているものの、外出制限がなくなったことで、おおむね好転しています。インバウンド(訪日外国人)需要も増加傾向をたどっています。

 コロナ禍3年。ようやく、コロナ以前の日常が戻りつつあるようです。そして、アパレル企業やセレクトショップなどの業績報道からうかがえることは、長年の課題だった「値引き販売の極小化」に各社が向かっているように思えることです。「建値販売率が向上した」といった発表が増えています。

 背景には、現代消費者は「高くても気に入った商品」を求めていることがありそうです。「安さ」はいつの時代でも有効な販売強化策です。「低価格・高品質」のブランドが、なお、成長している事実がその証明でしょう。しかし、他方では、ファッションの本質は「多様性」にあり、自分の好みにあったファッションを求める心理は不変だと思います。

 そうした状況が今後も続きそうですが、その一方では、気になることがあります。日本社会の格差です。日本は、かつて“一億総中流”と言われ、同質社会が特徴でした。ところが、“一億総中流”は、記憶の彼方に去り、格差社会に移行しているとの見方が強まっています。

 読売新聞が今年1月25日-2月28日に実施した「格差に関する世論調査」は、ちょっと衝撃的です。全国の有権者3000人を対象にした調査には2184人が回答しました(回答率73%)。

 日本の経済格差について「深刻だ」と答えた人は「ある程度」を含めて88%にのぼっています。「深刻ではない」は、わずか11%&です。具体的な格差で日本が「深刻だ」と思う項目の割合が最も多かったのは「職業や職種による格差」と「正規雇用と非正規雇用の格差」の各84%となっています。

 日本の経済格差は深刻だ、と回答した人が88%にものぼっているこの調査。どう思われるでしょう。同調査の「自分自身が不満を感じたことがある格差(複数回答)では「正規雇用と非正規雇用の格差」47%、「職業と職種による格差」42%、「都市と地方の格差」33%となっています。

 しかも、日本の経済格差が、今後どうなるかを聞いたところ「拡大する」が50%、「変わらない」が42%で「縮小する」はわずか7%です。

 足元では電気、ガス、ガソリンなどの生活インフラ価格が高騰しています。食料品も同様です。格差はさらに拡大するのでしょうか。ファッション消費は、低価格・高品質ブランドと消費者が真に欲しい思うブランドに二極化するのでしょうか。            

             (聖生清重)