FISPA便り「消費増税よりコストアップが大変」

 繊維産業流通構造改革推進協議会(FISPA)の活動の中核に取引改革委員会での「悪しき取引慣行」の是正があります。不適正な「歩引き」の全廃に向けても一定の役割を果たしています。原糸、織り・編み、染色加工、アパレル、ユニフォーム、インテリアファブリック、靴下、下着、商社、検査機関など繊維パイプラインの各業界が参加した取引改革委員会では、各業界の「今」についての情報交換が慣例で、報告を聞くと繊維ファッション業界の「今」がそれなりに浮き彫りになります。

 今年度第一回の取引改革委員会では、4月の消費増税後の転嫁状況を踏まえての業況が報告されました。関心事だと思われた「消費増税の転嫁」問題ですが、事前に結んだ表示カルテルや経産省の強力な指導もあり、大きな問題が起こっている状況ではないとの報告が多くなされました。もちろん、「1,980円で売りたい、との小売店の意向がどうなるか」といった懸念も一部、表明されましたが、おおむね順調に転嫁されているようです。

 それより、問題はコストアップです。生地染め、糸染めの染色業界からは「天然ガス、電力料金の高騰に加えて、洗剤、染料、果てはトラックの輸送料金までが高騰しており、加工料金に転嫁しないと生き残れない」との悲鳴とも言える発言がありました。

 コストアップは、染色業界だけでなく、毛織物、綿織物業界からも表明されたほか、靴下業界が指摘した「円安で輸入品の単価がアップしている」状況は、アパレル業界など他の多くの業界に共通する悩みでしょう。毛紡績業界の「原毛相場、為替に注力している」との報告も同様ですが、「中国企業の投機で迷惑をこうむっている」状況もあるようです。

 気になったことは、多くの業界団体で会員数の減少に歯止めがかかっていない現実です。2013年に繊維品の輸入比率が90.0%を上回るなどで、自分たちの居場所(市場規模)が縮小するなかで、例えば、情報化も一向に進展していない現実が報告されました。

そんな中でアパレル業界が「加盟すれば、こんなにメリットがありますよ」と明記した「会員増強のパンフレット」を作成して、会員増強に取り組んでいることを、アパレル関連10団体で結成した日本ファッション産業協議会の紹介と合わせて報告しました。今後の活動を期待したいと思います。

(聖生清重)