FISPA便り「ハッピーマンディー」
いつかテレビで見たのか、新聞で読んだのかは失念してしまいましたが、「ハッピーマンディー」なる言葉に高齢化社会のイメージを重ねる癖がついています。「ハッピーマンディー」は、幸せな月曜日のことです。一度は退職した高齢者が、その後、社会に復帰して、例えば、現役時代に身に着けた技能を会社などで生かす。毎日が日曜日に飽きた人にとって、仕事に復帰した後の月曜日は待ち遠しい日というわけです。
日本メンズファッション協会(MFU、八木原保理事長)主催の事業に「MFUマイスター〈技術遺産〉」認証があります。次世代に伝承すべき高度な技術・見識を保持している「隠れた名人」をマイスターに認定することで「メード・イン・ジャパン」のものづくりを応援しようというもので、今年で3回目です。
さる4日に東京で開かれたMFUのグッドエイジャー賞に先立って行われた発表・授賞式でマイスターには、眞弓隆治(株式会社エミネントスラックス、スラックス)、前田周二(同・同)、矢島久和(フレックスジャパン株式会社、シャツ)、山口美道子(同、同)の4氏が選ばれ、認定証を授与されました。
ここでパッピーマンディーを思い出したのは授賞式に駆けつけた経済産業省繊維課長の寺村英信さんが「(繊維課長に)就任後間もないが繊維産地を見学して驚いたことは、繊維産業の現場では、経験豊かなシニアが活躍していること。趣味も持ち、魅力的な生き方をしている」と祝辞で述べたからです。
確かに、例えば、今年度のマイスター4人のうち、前田さんこそ46歳の“若さ”ですが、眞弓さんは63歳、矢島さんは85歳、山口さんは14歳でシャツ縫製の道に入り、60歳で退職したものの、22年のブランクを乗り越えて82歳で復帰した方です。
眞弓さんは「もの言わぬ ものがもの言う ものづくり」をモットーに履きやすいパンツづくり一筋の人生です。矢島さんは社内では「キャップ」と呼ばれ、今なお着やすいシャツづくりに情熱を傾けています。山口さんは「正しいミシンの使い方」を国内だけでなく、韓国、台湾、中国、インドネシアでも指導したことがあります。
シニアが活躍する繊維現場。若年層の採用難という現実も反映していると思われますが、元気なシニアの「ハッピーマンディー」人生に声援を送りたいと思います。
(聖生清重)