FISPA便り「伊藤忠繊維月報55周年に思う」

 伊藤忠繊維カンパニーが発行する「繊維月報」が創刊55周年を迎えました。通算660号の4月号は「総合商社唯一の『繊維』の看板を守り 業界のリーディングカンパニーとしての使命を全う」と題した座談会を特集。専務執行役員繊維カンパニープレジデント(4月1日付けで専務執行役員CSO)の岡本均、常務執行役員東アジア総代表(同常務執行役員繊維カンパニープレジデント)の小関秀一、繊維経営企画部長(同秘書部長)の岡広史、欧州総支配人補佐経営企画担当(同繊維経営企画部長)の三浦省司の各氏が、自身のビジネス体験を踏まえて、繊維カンパニーのビジネスモデルの変遷を振り返りながら、今後の成長戦略を話し合っています。

 総合商社は、かつては繊維ビジネスを「繊維部門」、「繊維本部」といった名称の下に展開していましたが、国内繊維産業の規模縮小と繊維産業の重点が川上から川中、川下で移る中で、「ライフスタイル」などの括りの下で展開するようになりました。しかし、伊藤忠だけは、一貫して祖業である「繊維」の看板を掲げ、ビジネスモデルを転換しながら、常に進化させてきています。

 座談会は、時代の変化に合わせて進めてきたビジネスモデルの変遷を振り返り、今後の成長戦略として岡藤正広社長が手がける“岡藤戦略”とも言えるアジア有数のコングロマリットであるタイのチャロン・ポカパングループ(CPグループ)との業務提携、CPグループと中国最大のコングロマリット、CITICへの共同出資に基づく新規事業の推進をあげています。拡大する中国・アジア市場での成長戦略を加速する方向を明確に示しています。

 ところで、「繊維月報」です。筆者も40年以上前からの愛読者です。体裁は変わりましたが「時代の半歩先を考える」編集方針のもと、繊維ファッション業界のその時々のテーマを特集するほか、市場や事業のトピックスも掲載、消費者分析、さらには繊維カンパニーの人事も掲載しています。660号の歴史は日本の繊維産業の歴史そのものであるといっても過言ではないでしょう。

 創刊55周年号を手にして思うことは、1960年の創刊以前から創刊後も伊藤忠の繊維事業が激変する時代に適応して繊維事業を進化させ、「繊維月報」を発行し続けてきた事実です。継続は力なり、とは至言ですが、繊維月報を継続できるだけの収益をあげ続けてきたところに重みがあります。   

(聖生清重)