FISPA便り「LGBTの美意識」

 4月1日付けの新聞各紙の報道によりますと、東京都渋谷区で同姓カップルを結婚に相当する関係として認め「パートナー」として証明書を発行する条例を区議会で可決、同日施行しました。全国で初めてのことだそうです。

 性的少数者の権利を保障するこのニュースを読んで、ただちに「LGBT」という文字を想起しました。「LGBT」は、レズビアン(Lesbian、女性同性愛者)のL、ゲイ(Gey、男性同性愛者)のG、バイセクシャル(Bisexual、両性愛者)のB、トランスジェンダー(Transgender、性転換者・異性装者)のTを並べたものです。

 10年以上前にこの用語を教えてくれたファッションジャーナリストによりますと、ニューヨークでは「LGBT」の人は、そうでない人よりも美意識が高いと評価されているとのことでした。当時、老齢とは言えない年で亡くなった、世界的に著名なファッションデザイナーが同性愛者だったこともあって、ファッションデザイナーにはそうした性向を持つ人が少なくないとのくだんのジャーナリストの説に妙に納得したことを覚えています。

 ファッションデザイナーは、一般人に比べて性的少数者の割合が高い、との説の真偽のほどはわかりません。単なる噂かも知れません。しかし、そうしたことを詮索するより、大事なことはLGBTと言われる人の美意識が高いということと、性的少数者の権利を認めることでしょう。

 ことは人権の問題です。多数が少数を排除するのではなく、双方が認め合うこと。それは、多くの会社が取り組んでいるジェンダーフリー(性による社会的・文化的差別をなくすこと)でも同様でしょう。

 ここまで書いて、ふと思いついたことがあります。あの織田信長も「B」だったということです。天才的かつ革命家的な武将は、女性だけでなく男性も愛でたことが知られています。

 性的少数者は、洋の東西を問わず、独特な美意識を備えているとしたら、そうした少数者を包容できる柔軟な組織こそが「美しいファッション」を創造できると言えるのではないでしょうか。            

(聖生清重)