FISPA便り「JUNのブレずに変化する経営」

 先日、一般財団法人ファッション産業人材育成機構(IFI)の繊維ファッションビジネス研究会のセミナーに行ってきました。毎回、選りすぐった講師で楽しみなセミナーです。今回は、㈱ジュン社長の佐々木進さんで、テーマは「JUN、ブレずに変化する経営、ソーシャルスタイルという原点」でした。佐々木さんの話のポイントは、ファッションビジネスの原点は、クリエーションにあるということと、変わらないために変わる、という2点でまったく、その通りだと胸にストーンと落ちるものでした。

 佐々木さんは、基本的価値観について「クリエーションありき」と話した後、①クリエーションの先にビジネスがある②経済は文化そのものである③伝統と革新④情熱と理性のバランスでは、情熱が常に先⑤消費者にとって正しいことが唯一の判断基準、だと話しました。「売れ筋追求では、市場でブレークスルーはない」との指摘は、ソーシャルスタイル(社会との関わり)を追求するライフスタイルイノベーター、JUNの本質ですが、ファッションビジネスに関わるすべての企業にも当てはまる最重要の価値でしょう。

 こうした価値観に基づいて、同社は事業ポートフォリオの入れ替えも積極的に行っています。過去15年間、同社の売上高に変化はないそうです。しかし、役割を終えたブランドを廃止する一方、例えば「スタイリッシュなひとが集う場所にしたい」という情熱からスタートした、表参道の「モントーク」のような新事業が生まれています。

 クリエーションありき、の社風を維持するための社会改革はユニークです。

3年前に本社を南青山に移転しましたが、オフィスは「自分の席がない」オープンスタイル。自分の席がないのは佐々木社長も同じ。だから、情報は共有できるし、トップの方針もブレずに現場に伝わります。「事業の承継では、起業家で精神を受け継ぐことが大事」との指摘もブレない経営の要諦でしょう。

 佐々木さんは、課題についても「トップダウンからボトムアップとのハイブリッド」などと率直に話し、最後は優れた起業家から学んでいることとして、次の4点をあげました。①発動力(発信し、自ら動く力)②事業感性③柔軟性(状況に応じて180度変わる)④対雑音性(自分の信念を貫く力)。講演時間が短く感じたセミナーでした。 

               (聖生清重)