FISPA便り「ベトナムのビジネス環境」
過日、日本ファッション協会が日本の窓口のアジアファッション連合会(AFF)日本委員会(委員長・平井克彦東レ相談役)のセミナーが開かれました。今月24日から26日までベトナム・ハノイで開催されるAFFハノイ大会に向けての勉強会です。「ベトナム経済事情とビジネス環境」と題して日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部アジア大洋州課の小林恵介氏が現地駐在の経験を踏まえた最新動向を解説しました。
時に、TPP(環太平洋経済連携協定)の合意でTPPとの関係でどんな話が出るか、興味がありましたが、結論的には「まだ、各国の国内手続きが残っており、現時点ではTPPの影響は明確には測れない」というものでした。しかし、繊維ファッション業界では、縫製拠点として重要さを増しているベトナムの今、を知る良い機会でした。
講演によりますと、ベトナムの魅力の第1は人件費。すでに進出している商社や縫製業者は先刻ご存知の通りでしょうが、ベトナムの人件費は中国の半分で、しかも豊富な労働力がありますから、縫製拠点としては大変、魅力的です。すでに「チャイナ・プラス・ワン」としてのベトナムは、確かな地歩を築いていますが、小林さんの見立てでも、この地位は不変のようです。国内に素材がないのが弱点ですが、最近は綿織物の輸出も開始するようになりました。
一方、「生産地が消費地になる」との歴史の通説に関してですが、小売り産業売上高は、2009年から2013年の間に約2倍に成長するなど、ホーチミン、ハノイの大都市を中心に次第に消費地としての魅力を高めているようです。一人当たりGDPは、約2000ドルでインドネシアの半分、タイの3分の1ですが、ホーチミン市に限れば5000ドル弱に達しています。中間層も厚みを増しつつあるそうです。このため、イオンがベトナムでのショッピングモール建設・運営に乗り出すなど、今後、小売業への投資が増加する方向にあります。
意外(?)だったのは、ジェトロの調査によりますと、日系企業の営業利益見通しです。2014年の日系企業の営業利益見通しは、ベトナムは62・3%が黒字です。ちなみに同調査で黒字比率がトップなのはパキスタンで84・2%、最低はミャンマーの8・0%となっています。
ただし、ベトナムの難点は法令の分かりにくさ。ベトナムにおける日本商工会には進出企業約2000社のうち、実に1500社が加盟しています。法令の分かりにくさを情報交換で緩和しようとの動機が背景にあるからだそうです。
(聖生清重)