FISPA便り「AFFベトナム・ハノイ大会報告②ファッション産業振興への意欲」
アジアファッション連合会(AFF)ベトナム・ハノイ大会を主催したベトナム。ポストチャイナの有力国として、世界の縫製産地の一角を占めています。弱点である素材産業の不足も外資が紡績・短繊維織物を中心に積極的に投資しており、素材の自給化が急速に進んでいます。そうした中で開催されたAFF年次大会。挨拶したAFFベトナム委員会のヴ・ドゥク・ザン委員長は、ベトナムのテキスタイル・アパレル産業を代表して「AFFベトナムが、今大会を主催することは大変名誉なことです」と述べました。
大会では、日本、中国、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム六ヵ国から各国1人の計6人の若手デザイナーがファッションショーで競演しました。日本からは、2013年「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門のビジネス支援デザイナーに選出され、最高位の東京都知事賞を受賞した「タブレット」の井野将之さんが参加。完成度の高いメンズファッションを披露しました。身びいきを割り引いても、日本のファッションデザインのレベルの高さを存分に発揮したと思います。
そのショー会場の入り口で目を引いたのが看板です。スポンサー企業やブランドのロゴが並んでいました。数えると30を上回っていました。飛び入りでスポンサー企業のショーが行われるという“ハプニング”もありましたが、おそらく、その企業の寄付金額は他社を圧していたのではないでしょうか。あくまでも推測ですが。それはそれとして、ショーには、ベトナム工業貿易省の女性大臣も顔を見せ、ファッション産業振興に向けた同国の意欲を体現していました。
AFFの大会は、主催国の繊維ファッション製品の展示商談会に合わせて行われるケースが多いのですが、今回も「ベトナム・ファッションファブリック&ガーメントマシナリーEXPO」に合わせて開かれました。同展には七ヵ国・地域の92社が出展していましたが、会場の中心は縫製機器が占め、ベトナムがまだ、縫製拠点の段階にあることを示していました。テキスタイルは中国企業のブースが主力でしたが、質量とも物足りなかったというのが率直な感想です。
大会の運営面でも、前回6年前のベトナム大会に比べ、格段に進歩していたように思えます。TPP(環太平洋経済連携協定)を起爆剤に経済成長を目指すベトナム。素材産業を育て、縫製品の輸出競争力を高め、同時にファッション産業を振興させる、との官民の意思を大会運営の進歩で示したと思います。
(聖生清重)