「AFFベトナム・ハノイ大会報告③TPPはベトナム発展の起爆剤

 「TPP(環太平洋経済連携協定)は、ベトナム発展の起爆剤」。AFFベトナム・ハノイ大会の合間に、東レインターナショナルベトナム・ホーチミン事務所長の山口孝明氏に「ベトナムの現状と今後の可能性」をお聞きしました。ベトナムビジネスの方向性は、ずばり「ある程度の品質の製品を長期的、安定的に生産して輸出する国」だそうです。

 山口氏はベトナム駐在が、実に15年に及ぶベトナム通。約2時間に及んだ解説と質疑は内容の濃いものでした。ベトナムの一般概要(国家、歴史と今後、魅力、経済動向、産業・貿易動向、外国投資動向、日本の投資動向、マーケットレビュー)、ポストチャイナの動向、今後のベトナムの可能性、参考資料(ベトナムにおける今後の重要なFTA/EPAの展開など)網羅的で、かつ統計を付してあり「ベトナムの今と今後」を知る上で有意義でした。以下、山口氏の解説です。

「ベトナムの魅力は①政治的・社会的に安定し、低廉で質の高い労働力を有する②ASEANと中国華南地域をつなぐ交通の要衝③9200万人の国内消費市場、にある。だからこそ、最近は第三次ベトナム投資ブームで、なかでも日本の投資が増えている。日本からの投資の特徴は、大企業のみならず中小企業の投資が急増している点にある」。

 「この背景にあるのが『レンタル工場システム』。ベトナム政府が5000㎡~3000㎡規模の工場を用意して投資を呼び込んでいる。用地買収や建屋の建設から免れることができるこのシステムを使うと進出を決断して3カ月後には操業が可能。しかも、書類には日本語フォーマットのものもあり、日本語の名刺しか持っていない中小企業でも進出している。日本の地方経済局や県、金融機関が支援していることも増加している要因だ」。

 その上で、山口氏はポストチャイナ国の動向について、CLM(カンボジア・ラオス・ミャンマー)+B(バングラデシュ)、タイ、フィリピン、インドネシアと比較して「ベトナムが優位にある」と述べました。

 興味深かったのはTPPの影響です。「TPPは、ベトナム発展の起爆剤」と見る山口氏は「縫製品の米国向け輸出は飛躍的に拡大する」と言います。現在も縫製品の最大輸出先は米国ですが、平均18%の関税が撤廃されるからです。従来、ベトナム繊維産業の弱点とされた素材不足も中国、韓国の繊維企業の進出、日本商社の投資で急速に解消に向かっているとのことです。

 「縫製では、人件費の安さだけで進出したカンボジア、バングラデシュからベトナムに回帰するケースが出るでしょう」。山口氏の予測です。

(聖生清重)