FISPA便り「AFFベトナム・ハノイ大会報告④消費国としてのベトナム」
生産国が消費国になる。この歴史の法則をベトナムも歩んでいると思いました。AFFベトナム・ハノイ大会に合わせて、ハノイ市中心部から東に5kmの新興住宅エリアであるロンビエン区に、今年10月28日にオープンした「イオンモール ロンビエン」を訪ねました。地上4階建て、延床面積12万㎡のモールは、平日の午後の時間帯でしたがそこそこの人数の来店客がのんびりと過ごしていました。
イオン、イオンモールのベトナムにおけるショッピングモールは、ロンビエン店で3店目。ハノイでは第1号店です。総合スーパー「イオン」やファッション、化粧品、雑貨などの専門店に加えて、ベトナム最大級のシネマコンプレックス、フードコート、子供向け室内遊園地などを併設した本格的な商業施設のオープン以来の来店状況は順調だそうです。
経済発展度合いでベトナムに先行する中国やタイもそうですが、繊維製品を含む工業製品の生産地は、生産によって実現した経済発展の成果として消費国としての顔も持つようになります。ベトナムの一人当たりGDPは、約2000ドルとインドネシアの半分、タイの3分の1の水準ですが、主要都市に限りますと、ホーチミン市は5000ドル弱で全国平均の2.4倍、ハノイ市は3400ドルで同1.6倍です。
日本貿易振興機構海外調査部アジア太平洋課の小林恵介氏によりますと、世帯可処分所得が5000ドル-35000ドルの中間層の比率は、1990年にはわずか0.1%に過ぎませんでしたが、2015年には37.4%に増えています。2020年には、56.0%と半数を超える世帯が中間層に仲間入りすると見られています。その一方では、統計に表れないマネーも少なくなく、実質的な購買力を押し上げているようです。
人口は9210万人。近く1億人に達す見通しです。加えて、40歳以下の人口が75.0%を占める「若い国」です。ハノイ市内にある、食品や衣料品、日用雑貨などを山のように積んで卸売りする小規模な店が集積したドンスアン市場も見学しましたが、市民生活に密着した昔ながらの市場の一方で近代的で大規模な商業施設も相次いで開設されるのでしょう。
東レインターナショナルベトナム・ホーチミン事務所長の山口孝明氏も「消費市場は発展途上にあるが、今後、経済発展に伴って大きな伸びが期待できる」と予測しています。
(聖生清重)