FISPA便り「3つの『気』の元気こそ」
オンワードホールディングスの恒例の新年賀詞交歓会が去る8日、都内のホテルで開かれました。折からの暖冬で足元の景況は厳しいものの、大勢の取引先関係者が集まり新年を祝しました。その2016年。オンワードをはじめとする日本のアパレル企業は、まさしく地力が問われる年になりそうです。
主催者を代表してあいさつに立った廣内武代表取締役会長は「足元の景況は大変、厳しい。コートが売れず、防寒衣料は苦労している」と現状を率直に述べた後、「問題は、どう打開するかだが秘策はない。各部門、個人が強みを発揮することにつきる。ファッション業界では、『景気』、『天気』、『元気』の3つの『気』が大事。元気を出して頑張る」と決意を披露しました。
昨年来のアパレル業界は、日本のアパレル企業の主戦場である中間ゾーンの消費が振るわず、総じて厳しい状況が続いています。3つの気の内、景気は、中国経済の減速や北朝鮮の水爆実験による影響が懸念され、年初の株式市場が下げ続けていることが象徴しているように楽観できません。
天気は、季節商品であるアパレルにとって、その影響から免れるものではありません。「天気を(売り上げ不振の)理由にならない」は正論ですが、現実はそうではありませんし、特に今冬のような暖冬は、防寒衣料にとって大きな打撃になることは避けられません。
つまるところ、自社の強みを結集して厳しい状況に立ち向かわなければならいということでしょう。「元気の気」で厳しい時を乗り切る、との廣内会長の決意は、おそらく同業他社にとってもその通りなのではないでしょうか。
昨年、オンワードホールディングス社長に就任した保元道宣社長は「平常心を保って頑張る」、また、馬場昭典オンワード樫山社長は「心から感謝してもらえるブランドをつくる」と述べました。保元社長があえて平常心という言葉を使ったのは、この1年、激動が予想されるからにほかなりません。
3つの気の内、2つの気がアゲインストの中で賀詞交歓会を開催したことは、もうひとつの元気を体現したと言えるでしょう。馬場社長が言う「感謝されるブランド」で元気を保ち続けること。アパレル産業のリーディングカンパニーであるオンワードの2016年は、同社だけでなく、日本アパレル産業全体の地力が問われる年になりそうです。
(聖生清重)