FISPA便り「アパレル企業とは、何か」
経済産業省は、今年度末までに「アパレル産業ビジョン」(仮称)を策定する方針で、すでに「アパレル・サプライチェーン研究会」での検討を進めています。その第1回会合で提出された資料を見ていて、気になる表がありました。気になるという表現は適切ではないかも知れませんが、要は「アパレル企業とは何か」と「内弁慶な日本アパレル」いうことに関連したものです。
表は、我が国アパレル産業の海外進出の現状と題したページに掲載されている「主要日本企業の海外進出状況」です。表の出所は、平成25年度クールジャパンの発掘・連携促進事業です。ここには、2012年度売上高の多い順に、1位から15位までの15社の国内売上高と海外売上高(推定)が記されています。ちなみに第1位はファーストリテイリングで、15位は三陽商会です。
気になったのは、この表に登場している15社の業態です。15社のうち、小売り・SPA企業が7社、いわゆるアパレル企業が7社で同数です、残りの1社はモリリンですから商社です。
しかし、良く見ると、海外売上高が実数で記されている企業は6社に過ぎません。他はNA(10%未満)が5社、NAが2社、0%が2社です。海外売上高比率が10%以上の企業はファーストリテイリング、オンワードホールディングス(HD)、ワコールHD、グンゼだけです。
日本のアパレル貿易(日本繊維輸入組合まとめ)は、2014年で輸入数量は37億7412万6000枚で輸出は502万2000枚と異常とも言える入超です。輸入浸透率は実に94.4%であることはご存知の通りです。そして、個々の企業の海外進出はご覧の通りです。メード・バイ・ジャパン(海外企画・生産による海外での販売)を含めても、日本アパレルの内弁慶ぶりが際立っています。
さて、冒頭の「気になる点」です。現代は、業態の境界がなくなっている時代ですが、この表でもアパレル企業(伝統的な卸売業)と小売業、あるいはSPA企業の境界がなくなっている実態が明らかです。加えて、同じ資料には「世界の主要18地域合計の衣料品市場規模は、2013年の110.6兆円が2020年には50%増の165.6兆円に拡大するとの予測も出ています。アパレル産業は、世界的には成長産業なのです。
拡大する世界の衣料品市場を制するのはどこか。日本企業にもその一角を占めてもらいたいものですが…。
(聖生清重)