FISPA便り「服は、どこへ行った!」
先週、東京・代々木で開かれたファッションの合同展示会「ルームス」の光景は、アパレル業界会関係者には衝撃的だったのではないかと思われます。何と言っても、国立代々木競技場第一体育館を会場にした展示スペースは、アクセサリー・雑貨、地場産品、飲食などが連なっていて、アパレルブランドの出展は実に少ないものでした。まさしく「服は、どこへ行った!」の図です。
ルームス展は、元々、ファッションとデザインの合同展で、クリエーション色の強いブランドやデザイナーブランドが多く出展していました。創造性と文化性に特徴のある合同展です。アパレル製品が出展品目の中心だった往時に比べるべくもありませんし、年々、アパレル製品のウエートが低下し、雑貨・アクセサリーが増加していましたが、それにしても「アパレル製品の、この少なさは何故だ」と思わずにはいられませんでした。
目立ったのが、アクセサリー・雑貨、地場産品(工芸品・民芸品)、飲食でした。地場産品は、沖縄、北陸3県、岐阜県、東京・墨田区などが力を入れていました。沖縄は「新しい沖縄食べ物入門」と題した立派なパンフレットも作成し、マンゴープリン、黒糖コーヒー、ゴーヤーチップスなどをアピールしていました。東京・墨田区も「東京モノヅクリ商店街」のネーミングでものづくりの街、東京・墨田区を打ち出していました。このうち、「OTUTUMI」は、日本古来の風呂敷をモチーフに新しい布ラッピングに進化させたものです。生産者はカットソーでは名高い企業です。
飲食も目立ちました。一例をあげれば、約1300年の歴史を持つという三輪素麺の発祥地で165年以上、素麺を作り続けている老舗、㈱池利がグローバル市場を意識した展示で存在感を示していたのが印象的でした。こうした地場産品は、ルームス展の主催者であるH.P.フランスが展示指導・演出をしているそうですが、確かに、新しさを感じさせます。
時代の半歩先を行くのがファッションだとしたら、目下の時代の空気は「飲食」、「地場産品」に流れているのでしょうか。アパレルの少なさに衝撃を受けたその日、あるメンズ主体の若手デザイナーの個展を見てきました。しっかりした国産生地、国内縫製で個性的なメンズアパレルは、アジアを中心に売り先が広がり、業績は順調に伸びているとのことでした。
(聖生清重)