FISPA便り「まごはやさしい」

 前回のこのコラムで「父の日」に関係することを書いたら、早速、ある知人から反響がありました。「父の日が近付くと、毎年、高齢の父に何を贈れば喜ばれるのか、悩みます。アパレル企業が、贈られた父が喜ぶ品を売り出してくれればありがたいのに…」と。

 そんなわけで、今回は「父」の「子」の「子」、つまり、「まご」に関しての話です。「まご」と言っても、実は人間の「孫」ではなく、「まご」に健康に良い食材を当てはめたお話です。題して「まごはやさしい」。「孫」は、確かにやさしいでしょうが、「まごはやさしい」の意味は、順に「マメ・ゴマ・ワカメ(海藻)・野菜・魚・シイタケ(キノコ)・イモ」の頭文字をつないだもので、身体にやさしい食材を意味します。

 いつだったか、何かの本か新聞、あるいは雑誌のコラムで読んだのか、記憶がないのですが、手帳にメモしてありました。「父の日」がそのメモを思い出させてくれたというわけです。改めて「まごはやさしい」を見ると、誰が考えたのか、食材のバランスがとれていて、いかにも身体に良さそうです。

 食材となると、味はどうでしょう。いつかこのコラムでも書きましたが、季節を代表する味はこのようなものだそうです。「春の苦み・夏の酸味・秋の甘味・冬の辛味」。春の味と言えば、そう、山菜に代表される苦みを思い出しますし、夏は夏ミカンのようなキリッとした酸味が、秋は実りの秋にふさわしい甘い柿が、冬は寒さと相性の良い辛味が似合います。

 「まごはやさしい」食材をうまく組み合わせて、それに四季の味を一味加えて食事を豊かなものにする。食と言えば今、ユネスコ無形文化遺産登録記念の特別展「和食の天才 北大路魯山人の美」展が東京・日本橋の三井記念美術館で開催されています(6月26日まで)。美食家を自任した魯山人の言葉に「器は料理の着物」というものがあります。器が料理の味を引き立てることはその通りですね。

 ところで、四季の味ですがこれには、もう一味大事な味を加えなければいけません。四季の四味に加えて「人生の塩味」がそれです。某都知事は、今、苦みがかった塩味をかみしめているのでしょうか。凡人の筆者は「ほどほどの器にほどほどの塩味の肴を盛り、ほどほどの酒を楽しもう」と思いますが、さて、諸兄姉はどうでしょう。                   

(聖生清重)