FISPA便り「東レの未来、私たちの未来」
去る10月上旬に東京国際フォーラムで開かれた「東レ先端材料展2016」は、科学技術が人々のくらしや社会を変えるものだとの思いを強くさせるものでした。内容は、東レの最先端材料の今と今後の展開を紹介したものですが、安全、快適な生活、かつ環境負荷を抑制する技術は「『明日のくらし』を変えていく」、「『社会のかたち』を変えていく」との展示テーマが現実のものになることをわかりやすく示していて、見応えがありました。
最新鋭旅客機のコーナー。片方の主翼を付けた胴体を輪切りにした「ボーイング787」は実物大で、炭素繊維複合材料が空で活躍している事実を目の当たりにしてくれました。隣に展示されていたロケットもそうですが、炭素繊維複合材料が空から宇宙へと広がる人類の挑戦を支えていることを手で触って感じることができました。
新たに制作したコンセプトカーで、快適性・安全性を追求するとともに環境負荷低減の課題に応えたコーナーでは、くるまに試乗ができ、大勢の入場者を集めていました。また、海水の淡水化装置、南アフリカの不毛の大地で、植物由来素材を活用した緑化プロジェクトも魅力的なコーナーでした。広いスペースをとった展示コーナーは、さながらテーマパークのような気がしました
ところで、東レの祖業である繊維の衣料品分野の最先端は、どのようなものなのでしょう。その姿は、会場に入って最初のコーナーにありました。「未来を身にまとう」と題したコーナーでは、植物由来のPET繊維を使用してパリの服飾学校の学生が「近未来のライフスタイル」をイメージして製作したナポレオン様式の元首官邸女性職員の制服やナース服、サイクリングウエアなどが展示されていました。
着るだけでヒトの微細な生体信号を計測することができる機能繊維もありました。体調管理やスポーツ時のパフォーマンス強化に効果を発揮することが期待されています。このほか、日常生活でより快適性を高める機能素材を在宅介護、日用品、カジュアルウエア、住宅資材の4カテゴリーで紹介していました。
人類の歴史とともに存在してきた「繊維」。それが人間の知恵と努力で、人々の生活をより快適に、より豊かにする。「繊維」の科学技術から生まれた炭素繊維に代表される先端材料が「くらし」や「社会」を変える。東レ先端材料展は、東レの未来を見せたものですが、それは私たちの未来を可視化したものでもあったように思いました。
(聖生清重)