FISPA便り「人への投資が再活性化の鍵」

 繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)の主要な役割は「悪しき取引慣行の是正」です。そのためのFISPAの組織のひとつに「取引改革委員会」(委員長・細野助博中央大学大学院教授)があり、繊維品検査、アパレル、インテリアファブリック、織物卸、合繊、長繊維織物、短繊維織物、毛織物、靴下、下着、繊維輸入・輸出、染色、撚糸、の各業界団体役員と経済産業省の担当者が参加して、諸問題を話し合っています。

 この「取引改革委員会」は、それぞれの業界の「今」について情報交換するのが慣例で、繊維ファッション業界の現状を概略的ですが知ることができます。

その委員会が去る9日に開かれ、筆者もオブザーバー参加しましたが、そこで感じたことを記したいと思います。

 まずは景況ですが、「産地の規模(事業者数、出荷高)の縮小が止まっていない」(織物業界)、「国内供給数の減少は避けられない」(ニット)、「高齢化が進み、後継者の確保が難しい」(撚糸)、「中国産染料価格が高騰してレアメタル状態になっている」(染色)など、引き続き厳しい状況にあることが報告されました。

 その一方では「アパレル企業とクリエーターの出会いを支援する事業が素材産地との協業に発展している」(日本アパレル・ファッション産業協会)、「メード・イン・ジャパンを海外に展開するための海外展出展支援事業を行っている」(日本絹人繊織物工業組合連合会)など、再活性化の取り組みも継続されています。

 そうした中で「企業も産業も基本は人なり」に加えて「人手不足時代」に対応する試みも報告されました。日本綿スフ織物工業組合連合会が、今年夏から傘下の組合員30社に呼びかけ、東京のファッション系専門学校生の会社見学、インターンを受け入れたところ、来春、3社に就職することが内定したそうです。ささやかな人数かも知れませんが、大きな希望を感じさせるトピックスだと思います。

 また、日本アパレル・ファッション産業協会は「働く人の環境を整備するため、時短・休館に向けた取り組みを食品業界と協力して推進する」方針で、すでに日本百貨店協会に協力を要請し、一部百貨店からは賛同を得ているそうです。ファッション業界の最前線で働く人の「労働環境改善」は喫緊の課題です。

 こうした報告を聞きながら、「人への投資」こそが、縮小を続ける繊維ファッション産業の再活性化の鍵なのだろうな」と思いました。   

(聖生清重)