FISPA便り「ジャンプ台にしてこその補助金」
ファッションの合同展示会「ルームス」は、クリエーション色の強い展示会として知られています。そのルームスが、去る15日から17日まで東京・代々木の代々木第一体育館で開かれました。同体育館での展示会は、2020年東京オリンピック開催で使用できないため、今回でしばしのお別れです。
だからと言うわけではありませんが、気になることを記しておきたいと思います。それは、地場産業にとっての国や自治体からの補助金のことです。せっかくの補助金を生かすかどうかは作り手の日々の販売努力にあるということです。
今回のルームスで目立ったのは、最近の傾向である「雑貨・アクセサリー」、「エシカル」と「ジバサン(地場産)」のブースでした。全体的に来場者も多く、展示会そのものには活気がありました。アパレルファッションが少ないことは、もはや驚くに値しなくなってしまいましたが…。
「衣食住」をミックスして対案する「ライフスタイル産業」が成長している現状から、雑貨・アクセサリーが、社会的関心度が高まっている「エシカル」が増えることは、まさに時代の空気を反映していると思います。「ジバサン」も同様で、和食を含めて「日本の美」「日本の技」への関心が高まっている今、それを現代化して提案しようというものですから、小売業はもとより、生産者である産地にとっても好ましい動きです。
今回のルームスでも、福島県、京都府、岐阜県、東京都墨田区などの伝統工芸品をつくっている業者が出展していました。著名デザイナーにデザインを委嘱して開発した新作もあり、各ブースは賑わっていました。新デザイン、販路開拓に悩む地場産業にとって、こうした試みは極めて重要だと思います。
しかし、ルームス展に限らず、地場産業に対して国や地方自自体が支出する補助金が「ジバサン」コーナーを支えているという現実にも目を向ける必要があると思います。地域を形成する地場産業の振興は、地方創生そのものですから、「補助金が途切れたら終わり」にならないようにしてもらいたいのです。
もとより、伝統工芸品の作り手による販路開拓、継続的な販売は容易なことではないでしょう。それでも、伝統工芸品の振興に詳しい専門家はこう言っています。「補助金を活用して出展したのを契機にネット販売を含めて販路を開拓している業者もいるが、そうではない業者もいる」。補助金を上手に活用し、後は自腹で努力する」ことこそが、「ジバサン」には求められているのではないでしょうか。
(聖生清重)