FISPA便り「瑞穂の国が拓く未来社会」
人間が夢の実現に向かって挑戦する姿は美しく、人々の気分を明るくしてくれる。日本ファッション協会(馬場彰理事長)の主要事業である日本クリエイション大賞の表彰式が先週、都内のホテルで行われました。より豊かな生活文化を創造する営みを顕彰する同賞は、毎年、人間が持つ無限の能力と挑戦する心に圧倒されます。今年の受賞案件もそうでした。
2016年の大賞に輝いたのは「“次世代スーパーコンピューター”の開発で社会を変革する」㈱PEZY Computing社長の齊藤元章さん。その受賞の言葉に驚かされました。齊藤さんはこう謝意を表したのです。
「シリコンバレーで12年働き、東日本大震災が起こった2011年に日本に戻り、スーパーコンピューターとAI(人工知能)を開発しました。開発から3年。まだ、駆け出しなのに(大賞に)評価されて嬉しい。今、日本、世界、人類は転換期です。エネルギーからの解放、衣食住フリー、老いからも解放される。そんな社会が10年以内にやってくる。それを実現するのがスーパーコンピューターとAI。そうした社会は瑞穂の国が原風景の日本で創り出さないといけません」。
短いスピーチでしたが、「瑞穂の国」との言葉から、東日本大震災を機に「日本に貢献したい」とシリコンバレーから戻った齊藤さんらしい思いが伝わってきました。「老いからの解放」と言い切りましたが、それは、齊藤さんが取り組んでいる、現在よりも1000倍程度高速なAIエンジンとそれを連携させる次世代スーパーコンピューターの開発がもたらすものだと聞くと、実現可能なように思えました。
AIは、人々の生活や産業活動の隅々に入り込んできています。そうした社会に対しては、「人々の職を奪う」など否定的な予測もあります。しかし、齊藤さんの謝意から予測される社会は暗いものではなく、人々の幸せを実現する社会だと思われます。
大賞のほか、「技術革新創造賞」には「大量の水を使わず、使用済みの紙をオフィスで新たな紙にする」セイコーエプソン㈱、「食文化貢献賞」には「世界シェア7割を誇る『カニカマ製造装置』」の㈱ヤナギヤ、地域文化応援賞」には「『あきた舞妓』でまちを活性化する」㈱せん(秋田市)代表取締役の水野千夏さんが選ばれました。
毎年のことですが、今年も「人間ってイイナ」と実感できる表彰式でした。
(聖生清重)