FISPA便り「アパレル産業の地殻変動示す統計」
2016年のアパレル製品の国内供給量が増加していることがわかりました。一昨年来、続いている消費市場でのアパレル不振から見ると意外感は否めません。しかし、統計上のこととは言え、統計は日本のアパレル産業の実態をかなり正確に表しているように思えます。
日本繊維輸入組合が、毎年、まとめている「日本のアパレル市場と輸入品概況」2017年版によりますと、2016年のアパレル製品(布帛外衣・下着、ニット外衣・下着)の供給量は37億2361万枚で前年に比べ1.4%増加しました。国内生産は1億702万枚で前年比1.8%の減少でしたが、供給の97.3%(輸入浸透率)を占める輸入が36億2289万枚で同1.5%増加したためです。
この統計から読み取れることは、アパレル製品の不振は主として日本アパレル企業と百貨店が主戦場とする中間ゾーンに押し寄せているもので、価格訴求力のある商品や百貨店以外の流通チャネル、とりわけ急成長が続くネット販売は健闘していることを示していることではないでしょうか。言い換えれば、日本アパレル産業に起こっている地殻変動の様相が統計に表れている、と言うべきでしょう。
一方、国内生産量のうち下着を除いた外衣(アウターウエア)の生産量は6185万枚となっています。日本の人口は減少に向かっているとは言え、なお1億2000万人ですから、国民2人に1枚しか供給できないということになります。この現実をどう受け止めればよいのでしょう。少なくとも国産アパレルは希少品、いや貴重品になりつつあるようです。
日本ファッション産業協議会は、メード・イン・ジャパンのアパレル・靴下、寝具などで「純正日本製」であることを証明する「J∞QUALITY」制度を設け、その普及に努めていますが、その努力がくだんの統計に表れる日を期待したいと思います。
期待といえば、輸出です。アパレル製品の輸出量は630万枚で輸入量のわずか0.2%にすぎません。しかし、前年比では、何と9.9%伸びています。輸出増が生産増には結び付いていませんが、今後、着実に伸びてもらいたいものです。
(聖生清重)