FISPA便り「PTJ展で聞いたいい話」

 日本のテキスタイル輸出は大健闘しているのですが、その事実はあまり知られていないようです。統計を見ますと、昨年1年間の日本のテキスタイル輸出額は96億ドルで、史上最高を記録しています。円高のためテキスタイルメーカーの手取り額は目減りして、好況感を実感できていないのが残念ですが、逆に言えば円高でも堂々と世界市場で存在感を発揮しているのです。 

 去る5月9、10日に東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれたテキスタイル展示商談会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」(PTJ)は、そんな日本テキスタイルの実力が目に見えるものでした。参加企業はテキスタイルメーカーを中心に、レースメーカー、染色加工業など56社とタイ5社、台湾 1社のテキスタイルメーカーでしたが、会場の雰囲気は出展者、バイヤーとも落ち着いてビジネスマッチングを行おうとしていることが感じられました。 

 専門家によりますと、展示商品も各社がそれぞれの得意技を駆使して制作したものや、過去の展示会で知り合ったメーカー同士が技術協力して開発したものなど評価できるものでした。 

 会場で、今治の渡邊パイル織物社長の渡邊利雄さんに会いました。10年近く前に初めてお目にかかりましたが、当時は展示会に出展するだけで精一杯(失礼!)のように見えました。その後、取引先の関係で大変な苦労をされたと風の便りで聞いていましたが、現在は、百貨店への直販ルートが開けるなど自販に自信を強めていました。 

 オーガニックコットンや高級インド綿の甘撚りの糸使いや、ワイン染めの製品など「誠意を込めてつくった製品」の価値が認められるようになった、と言います。

 PTJの出展費用は全額、自腹です。高付加価値のものづくり力に加えて、自分で販売するとの意欲を持った企業ばかりが出展している同展には、おそらく渡邊さんのように、自販に手応えを感じている企業ばかりが出展していたことでしょう。そうでなければ、超円高下で史上最高の輸出を行えるはずがありません。

(聖生清重)