FISPA便り「減少する服飾、増える農業」

 この数字は、暗い未来を予感させます。ファッション分野を志す若者の人数の減少傾向が止まっていないことです。昨年6月1日に配信したこのコラムで「未来からの留学生」と題して触れましたが、最新のデータではファション系専門学校の不人気ぶりがさらに際立っています。

 文部科学省の2011年度学校基本調査によりますと、同年度の専門学校在籍者の総数は57万4,152人で10年前に比べると約10%減少していますが、前年比では1.7%増で2年連続して増加しています。1991年以来、上昇していた大学進学率が初の下降に転じたことを勘案すると長引く不況の影響が表れている格好です。

 問題は、専門学校生の分野別動向です。前年比で学生数が増加した分野は、教育・社会福祉(2,972人)、医療(2,942人)、商業実務(2,462人)、衛生(2,345人)、工業(1,261人)、農業(536人)の6分野で、減少したのは文化・教養(1,729人)、服飾・家政(1,259人)の2分野となっています。

 服飾・家政、つまりファッション分野の在籍学生数のピークは1977年で8万8,740人。全分野(26万8,990人)の約33%を占めていました。分野別でトップです。ところが、その後は減少の一途をたどり、ピーク時に比べると実に7万2,579人も減少しているのです。10年前に比べ1万6,334人減少しています。半減です。

 ファション分野が減少する一方で、注目されるのは農業分野です。実数は4,926人で、統計に出ている分野別では最も少数ですが、前年比10%強の伸び(536人増)で、10年前に比べると約50%増です。農業分野は、ファッション分野がピークだった1977年には331人しか在籍していませんでした。

 農業を志す若者が増加している傾向は、国家的には好ましい傾向でしょう。人間の生存に直接、関わるのですから。それはそれとして、ファッション関係者は文字通り、ファッション産業の魅力度アップや待遇改善に着手する必要があると思います。

(聖生清重)