FISPA便り「グローバルには成長産業だが…」
アパレル不振が続く中、興味深い論文に出合いました。繊研新聞4月27日付にローランド・ベルガープリンシパルの福田稔氏が寄稿した「日本のアパレル産業の未来 企業の課題と進むべき道」です。
それによりますと、グローバルのアパレル市場は、2025年までに実質ベースで年平均成長率3.6%、物価変動を加味した名目成長率ベースで7.6%の成長余力があり、15年に1兆3060億ドルだった市場規模は25年に2兆7130億ドル(名目ベース)まで成長する」と見られています。
問題は、その成長を誰が享受するのか、ということです。論文は、市場変化の実態を受けて3つの勝ちパターンを提示しています。①高付加価値型②グローバルSPA型③カテゴリーキラー型がそれです。
さて、日本です。閉塞感が漂う日本市場は、今後、市場の二極化と中間価格帯の落ち込みが継続し「欧米型構造であるラグジュアリーとマスボリュームに二極化する」としています。「日本市場で大きなウエートを占めている中間価格帯では微差の消耗戦が繰り広げられ、従来型のアパレル組織は縮小均衡を迫られ、市場では元気な小規模ブランド、ショップが乱立し、裏ではITを活用してアパレルビジネスのバリューチェーンを補完するプラットフォーマーが規模を拡大する」と分析しています。
この論文を読んだ後、流通に詳しい友人とランチを共にして話を聞きました。友人の現状認識はこうでした。「日本のアパレル市場は低価格帯7割、中間価格帯2割、高価格帯1割。ルミネやパルコでも低価格ブランドの存在感が増している。海外では、激安ファッションで急成長中のロンドンのプライマークが米国市場に進出している」。
もういちど、くだんの論文ですが、最後にこう提言しています。「大局的な視点に立てば、日本はようやくファッションやライフスタイルで世界に影響を持てるステージにきた。日本への観光客が増加の一途をたどっていることからも日本文化やライフスタイルに世界の関心が向いていることがわかる。日本のアパレル企業は、国内市場の不振を嘆くのではなく、もう一度世界進出と産業界全体の成長にチャレンジするタイミングではないか」。
日本企業がチャレンジするにあたって武器となるキーワードは「J∞QUALITY」だと思うのですが、さて、どうでしょう。
(聖生清重)